見出し画像

商品貨幣論15  ―”有効需要の原理”には「信用創造」が重要―

富(価値)の移動が
A供給側→B需要側
だと、BはAに逆らえなくなる。

B需要側がA供給側に成り代わろうとしても
それはB需要側の一部がA供給側になり、残りのB需要側を貧困層として十分に富を供給しないという結果になる(共産主義)。
前回はこのA供給側とB需要側の主従関係(A>B)が古典派経済学からマルクス経済学に至るまでの共通項であったため、経済学をどう駆使しようと、経世済民が達成されないことを説明しました。

では、逆説的に考えて
A供給側とB需要側の関係が
主従(A>B)ではなく、

対等のものとして均衡してさえいれば(A=B)
経世済民が達成される可能性があるのではないでしょうか?

果たして、

Bが需要側の立場のままで
Aに富(価値)を供給することを要請させることはできないでしょうか?

ここで重要になるのは

「借金(信用創造)の活用」です。

(↑よかったら読んでね)

もちろん、この場合の「借金」は「無から貨幣を発行する『信用創造』」を意味します。
どこか別のストックからという意味での「借金」とは違うものですのでご注意ください。

まず、
Bが借金(信用創造)を作ります。
そしてそこで生まれた価値(名目値・貨幣)を使って、BはAから富(実質値・小麦)を得ます。

それをしばらく続けていると、面白いことが起きます。
AにとってはBの借金することで発生した価値が重要になるわけです。

結果、AはBの信用創造した価値(貨幣)を手に入れるためにはBの借金を解消させたくない、寧ろ借金をもっと増やして欲しい、

と思うようになります。
AはBが破産して貨幣が支払われなくなるのは困るわけです。
同時に、Bが借金を返済して貨幣が消えてなくなるのも困るわけです。

AにとってはBが「借金を『維持してもらう』」ことこそが一番大切なことになるわけです。

その結果、Bが破産または借金を返済するのを防ぎ、いつまでも借金をするように維持するために、Bの借金を肩代わりする存在が現れるわけです。
それはA供給側(政府・日銀)となるわけです。

皮肉なことに、AはBの借金から生まれた貨幣を得るために、結果的にBの借金を肩代わりするハメになるわけです。

この状態が
A供給側>B需要側
逆転現象を生じさせます。

1.
  A供給側→B需要側
という富の移動があるために
  A供給側>B需要側
という力が関係が宿命づけられていた経済学に

2.
信用創造
によって
  A供給側←B需要側(貨幣の価値の流れ)
を生み出すことで
  A供給側<B需要側
の逆転する力を生み出したわけです。

1.の条件と2.の条件が合わさって、

  A供給側=B需要側

という均衡が発生したわけなのです。

この借金、というものは金本位制時代の物質的貨幣では、金貨で利子をつけて返済を求められる恐ろしいものでもありました。

しかし現在、金本位制的な物質的貨幣は既に過去のものであり、負債によって無から生まれる信用創造による「概念的貨幣」に切り替わっています

この、
物質的貨幣から概念的貨幣へと切り替わる

貨幣論的大転換

と、これまでの供給側からの一方的な供給ではなく、需要者側から供給側に供給を要請するという

経済学的大転倒。

これを引き起こしたのが、

ジョン・メイナード・ケインズのケインズ経済学

であり、
この基本となる原理を

有効需要の原理

と言います。

そして、この知見が経済学上に登場した瞬間、初めて

マクロ経済学

という「新しい別分野の経済学」が誕生したわけなのです。
同時にこれまでの既存経済学、ある意味「有効供給の原理」ともいうべき分野は「ミクロ経済学」と呼ばれ、経済学の根底の枠を大きく変えてしまったのです。

これを

ケインズ革命

と言いますが、とりあえずケインズについては別の機会に語るとして

次回から「商品貨幣論」についてのまとめに入らせていただきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?