織原 一然(かずしか)_マクロ経済学考察ノート

政治経済の特にマクロ経済学について語ります。 自学自習ですがぜひお読みいただければ幸いです。

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最近の記事

道徳世界での「不倫」とは 経済学論考 9

前回までの経済学論考では、倫理と道徳を分割整理してみました。 倫理は「神の理」なので、本来「完璧」なはずが、そこに不完全な人間の意識が混ざることで、「動きのある倫理」、「倫理の道徳化」が起こります。 一方で、 道徳は不完全な人間の意識から発生し、その「動きのある道徳」から「完璧性」を見出そうとして「道徳の倫理化」が起こる、というお話をしました。 特に西洋は一神教的倫理がベースにあり、東洋は道徳がベースにあるわけですが、東洋の日本は倫理よりも道徳の方が強い国柄、民族性を持

    • 現代税論.2 垂直的・水平的公平

      私の好きなSF小説「銀河英雄伝説」で、主人公の一人がこう述べるシーンがあります。 為政者の言葉としてSF小説ながら大変に示唆に富む名台詞です。 さて、では、「公平な税制度」とは何でしょうか? 税制における公平の理論には、垂直的公平と水平的公平の2種類があります。 ■垂直的公平による徴税 垂直的公平という言葉は、何を垂直的と評し、何を公平と言っているのかが少し分かり難いです。 「何を垂直的と評しているか?」というと、これは「対象者の経済的貧富の格差」を縦軸で「垂直」と表

      • 現代税論.1 信用創造を前提とした税

        消費税はこの日本において、実に重い足跡を残す悪税として未来永劫語り継いで欲しいものです。 ■「税は財源ではない」ということは「信用創造」から明らか 税を語る上で大前提としなければならないのは、現代は「税は財源ではない」という事実です。その事実は「信用創造」で理解できます。 上の図解は「信用創造で貨幣が創造され、徴税で貨幣が消滅する過程を示した図解」です。 ・シーソーの右側で民間に貨幣+10兆円を発生させるためには、左側の政府に-10兆円の赤字を積み上げなければならな

        • ベーシックインカムは極めて怪しい.11―国内的CPインフレと国外的CPインフレ―

          ■国外的CPインフレ さて、なぜカナダ人は「最低所得保証(BI)」を得ても退職しなかったのでしょうか? 前回言った通り、「いつ止めるか分からない社会実験なのに、退職するはずがないでしょう」というのが、常識的な考えですが、それ以外にも理由があります。 それはカナダと、そしてイランの事例を比較することで分かります。 以前、私は 「BIは当初はディマンドプルインフレになるが、直ぐにコストプッシュインフレ(CPインフレ)をもたらす」 ことを書きました。 上記の記事に書かれている

        マガジン

        • マガジン「経済学論考」
          9本
        • マガジン「現代税論」
          1本
        • マガジン「ベーシックインカムは極めて怪しい」
          9本
        • 内生変数と外生変数について
          6本
        • 豆知識
          9本
        • マガジン「格差と社会福祉」
          4本

        記事

          ベーシックインカムは極めて怪しい.10―カナダの不正確な事例―

          ■カナダの「最低所得保障」をBIと定義します さて、前回の負の所得税(NIT)の話から続きですが…。 BIENはこのように述べています。 自動翻訳で読み難いので、箇条書きに要約してみます(また、翻訳では「保証」と訳されるため「保障」に修正します)。 イランでは偶然にBIのような制度が導入された 1970年代に米国とカナダで行われた「最低所得保障」と「負の所得税(NIT)」の実験では、「社会的に有益な成果」が示され、「雇用からの離脱」はほとんどなかった カナダの実験の

          ベーシックインカムは極めて怪しい.10―カナダの不正確な事例―

          道徳は元来動的である―倫理と道徳3― 経済学論考 8

          ■以前記述した道徳の解説 以前書いた記事における、私の理解は下記の通りです。 前回書いた 「〇倫理」の記述と明確に違うのが分かりますね。 比較すると「道徳」には「行動」が必要であるのが分かります。 一方で、倫理は「神の理想の設計図」なのに対して、道徳は「行動してみないと分からない」という不確実性が内在するのです。 つまり、神(少なくとも一神教的絶対神)は存在しないのです。 神がいない代わりに、「道徳」は「動的」なのです。 ■源泉となる「(動的)道徳」 さて、前回の

          道徳は元来動的である―倫理と道徳3― 経済学論考 8

          倫理は元来静的である―倫理と道徳2― 経済学論考 7

          ■倫理と道徳はこのような図解での関係なのではないか? 閃いた想念のまま、下記の図解を作ってしまいました。 お陰で三連休は大変充実していました。 これは倫理と道徳の思想における関係性を私独自で解釈した図解です。 既に何度か更新してXにも上げておりますが、今のところ上記が最新となります。 今後も更新すると思いますのでお気を付けください。 以前私は「倫理」と「道徳」を明確に分割して比較してみました。 図解はこの話の続きとなります。先ず左の倫理の分野だけを解説したいと思いま

          倫理は元来静的である―倫理と道徳2― 経済学論考 7

          積極財政を主張するなら、夫婦別姓は選択的だろうと絶対に反対すべきである― 経済学論考 6

          ■経済とは保守思想からしか生まれない 常々、「保守思想でなくては経済を語れない」と言ってきましたが、今や 「保守思想以外経済を語ってはならない」 「保守以外の経済は全て偽物だ」 とすら思います。 保守思想以外の理論において理財を得ることができる、というのは、ミクロ経済的商品貨幣論に基づく活動を行い、国の保持してきた特性を崩壊させ、既得権益を売り払う ―レントシーキング― 竹中平蔵のような活動のことを指します。 「レントシーキング」とは、財界側が政界と癒着し、政治家に法制度

          積極財政を主張するなら、夫婦別姓は選択的だろうと絶対に反対すべきである― 経済学論考 6

          ベーシックインカムは極めて怪しい.9―負の所得税(NIT)―

          ・・・さて・・・ 勘の鋭い人は上を読めばもう分かると思います。 負の所得税(NIT)はBIではありません。 今回の記事で言いたいのはただそれだけです。 「負の所得税(negative income tax)」とはざっくり言いますと、富裕層は課税対象だが、貧困層は課税されずに逆に政府から給付金を受け取る、という「まっとうな累進的税制度」であると共に「貧困層への給付金制度」です。 ではこれをBIの5つの特徴「定期的」「現金給付 」「個人向け」「普遍的」「無条件」に当てはまる

          ベーシックインカムは極めて怪しい.9―負の所得税(NIT)―

          国債の運用と創造 経済学論考 5

          ■一般理解の時点で間違えている とあるサイトで上記のように書かれていたのですが、これは間違いです。 この間違いは「国債に対する一般的理解」から発生しています。 国債を発行し 労働市場でその国債を購入してもらい 労働市場で手に入れた購入資金を用いて政府は貨幣発行をする これが恐らく国債の一般的な理解ですが、実はこれは「間違い」なのです。 何が間違えているのでしょうか? ■貨幣を発行する前に、貨幣を集める…? 上記の1.~3.は ・10兆円の貨幣を発行するために

          ベーシックインカムは極めて怪しい.8 ―BIの実験とは?.1―

          ■ナミビアとインドの件 まだ言いたいことは尽きません。 BIENのいうBIは本当におかしいです。 上記はつまり「BIの社会実験は行われたか?」ということに対して「その事例」を答えているわけですが、まず、ナミビアのBIについて調べてみました。 こちらナミビアのBIの実験について書かれたサイトですが、「BIの実験を標榜しつつBIではない」ことがきちんと書かれています。 2年間という期間限定。住んでいる場所が限定され、60歳以下という条件もあります。これは定期的(永続的)

          ベーシックインカムは極めて怪しい.8 ―BIの実験とは?.1―

          ベーシックインカムは極めて怪しい.7 ―移民にも実質支給されるBI―

          こちらの「ベーシックインカムに関するよくある質問」にはインフレについての話以外に、「おいおいおい」と思わず突っ込みを入れざるを得ない話が更にあります。 つまり、外国人であろうと、一定の期間居住すればBIを受け取れる資格を得ることができるわけです。 更に、「雇用インセンティブとなるため、この国にやってくる人は誰でも、現在よりもさらに経済に貢献する可能性が高くなるだろう。」 というのは「労働力として『移民は良いこと』」という、これが前提になっているわけです。 これは無茶苦茶で

          ベーシックインカムは極めて怪しい.7 ―移民にも実質支給されるBI―

          何に対しての内外なのか?―内生変数と外生変数6―

          久々にこちらのマガジンの更新になります。 考えをまとめるのに1年以上かかりました。 余りにも久々すぎるので少し振り返りをします。 ■内生変数と外生変数の振り返り 内生変数とは、モデル(市場)の中で生まれる内生的パワーのことであり、それを数値化したものです。パンが発酵するような内部から膨れ上がるパワーですね。 それが貨幣である場合は「内生的貨幣供給論」と言い、そしてそれを引き起こす社会的な理論は「有効需要の原理」。貨幣発行理論は「市場内部で行われる信用創造」と、こうなるわ

          何に対しての内外なのか?―内生変数と外生変数6―

          ベーシックインカムは極めて怪しい.6 ―BIENが歪めるBIの定義―

          ■BIENの質問と回答から見える問題点 現在、BIにおける情報発信サイトはこちらになりますが、 こちらの「ベーシックインカムに関するよくある質問」にはインフレについて噴飯物な回答がなされています。 ■BIではインフレは発生しない!? 実は私は、BI推進派の人たちと議論をしたとき、「BIではインフレは発生しない!」と言われたことがあります。 正直、全国民に給付金を一律に行うのにインフレが起きないというのは、何を言われたのか一瞬唖然としました。 これはポストケインズ派経

          ベーシックインカムは極めて怪しい.6 ―BIENが歪めるBIの定義―

          ベーシックインカムは極めて怪しい.5―BIによるコストプッシュインフレ―

          ■BIによって引き起こされるインフレ さて、前回の記事でこのように書きました。 前記事の4.5.に出てきた上記の割り箸の値上がり、このインフレは コストプッシュインフレ(CPインフレ)でしょうか? ディマンドプルインフレ(DPインフレ)でしょうか? これまで私は何度もこのインフレの種類の違いに対し言及しておりましたし、その解決方法が違うことと同時に、貧困層への対処療法においてはCP・DPインフレ共に同じ対処方法であることも書いてきました。 CPインフレは購買力が下がり

          ベーシックインカムは極めて怪しい.5―BIによるコストプッシュインフレ―

          ベーシックインカムは極めて怪しい.4―格差是正とは何か?お箸の例え―

          ■経済政策とは格差是正のこと 経済政策とは、貧しさ故に死者が増えないことを企図した政策のことなので、基本、貧困層対策に主眼が置かれますし、その対策は貧困層と富裕層の経済的(金銭的・福祉的)格差是正こそが経済政策、と呼ばれるものになります。 逆説的に、格差を是正しない金銭的・福祉的政策や、格差を拡大するような政策は経済政策ではない、ということになります。 経済政策を謳って、実際には格差を是正しない偽物の経済政策のなんと多いことか、と実に嘆かわしいのがこの日本の現状です。 言

          ベーシックインカムは極めて怪しい.4―格差是正とは何か?お箸の例え―