【小説】私を見くびるな
「恋人の携帯電話は絶対に見てはいけない」
恋愛に無縁な頃から知っていたのに、私は酔っ払って眠るタカシの指で指紋認証を突破していた。
結婚を匂わせるとすぐに話題を逸らし、定期的にLINEをやりとりしている相手を教えてくれないタカシの責任だ。真っ暗な部屋でタカシの待ち受け画面の幾何学模様と、整列したアプリを眺める。今ならまだ「何も知らない」状態に引き返せると思いつつ、そうやって気持ちを誤魔化してきた私に知る権利を下さい!と言わんばかりにLINEを起動すると、即座に「mio」とい