社会の中で生きること
昔から私は寝るのがあまり得意ではありません。
ひんやりと冷たい布団の中に足を入れて、体全体が包まれるような感覚になっても、目だけは冴えてしまって、中々眠ることができないのです。
一人きりの夜は、いつも以上に布団が冷たく感じて、その上、孤独が一気に押し寄せてしまいそうになりました。
忙しすぎる頭の中では、ありとあらゆる不安なことを思い浮かべて、そして布団の角をキュッと握りながら体を丸めて、ただただ気絶するように明日が来ることを願いました。
周りと比べてしまう癖を悔やんだり、うまくいっていないい人生について悩んだり、時には理由もなく寂しくなって涙で枕が濡れていくのを耐えるだけの日もありました。
唯一誰もが平等に与えられているはずの一日が、ものすごく長く感じて、いつまでも終わらないようにも感じられました。
その度に夜になるのが怖くて、瞼を閉じるまでの間が果てしなく長く感じてしまうのです。
保育士としてがむしゃらに働いていた頃は、その気持ちがさらに強く、子どもたちの顔を浮かべる余裕すらありませんでした。
「どうか明日も無事に怒られずに、何事もなく過ごせますように」そう星に祈るように布団の中で何度も何度もお願いをしました。
それでも明日になれば、祈りを捧げたことなんて忘れてしまうほど忙しくて、考える暇もなくて、全ての力を使い果たしてしまうほど心をすり減らしていました。
けれども夜になるとやっぱり寝ることができずに、また同じように星に祈りを捧げて、頭を下げて、平和に過ごせることだけを願いました。
社会の中で生きることは、簡単に見えてとても難しいことばかりです。まるで命懸けの戦いに毎日挑んでいるみたいに、心も体もすり減らしながら出勤をしていた日々を、今でも忘れることはありません。
ただ私は、そんな生活が苦しくなって、そして夜の深さに飲み込まれそうになった時、ようやくその場から離れる決断をしました。
あれから数年が経ち、ようやく不安な夜は減り、布団はただ体を温めてくれる相棒として存在しています。
けれどもふとした瞬間に、あの頃の傷が痛み出して不安になってしまうこともあるのです。
あらゆる人がこの世界の中で、そしてそれぞれの社会の中で葛藤しながら生きていると思います。
深く静かな夜に不安を感じ、眠れなくなってしまうこともあるかもしれません。
けれども、その長い夜もいつかは終わりが来るということを忘れないでほしいのです。
「悲しい時は思いきり悲しんでもいいんだ」って。
「苦しい時は枕を抱えて、子どものように泣いたっていいんだ」って。
そして一つひとつ、自分の心を抱きしめてあげながら布団に入り、星に願いを込めるように目を瞑る。
そうすればいつの日か、不安も恐怖も、そして孤独も感じられない夜がきっとあなたにも訪れると思うから・・・。
そんな私もまた、同じように布団に入り、自分の気持ちと向き合って、心を抱きしめて、どんな些細な部分だとしても、「いつも頑張ってくれてありがとう」そう言い聞かせながら、ベッドに身を委ねていこうと思うのです。
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