社内の「知的確信犯」を探し出せ

ポールバビアク、ロバート・D・ヘア=著 真喜志 順子=訳 

ファーストプレス:出版

社会のカメレオン

 サイコパスの人数からすると、私たちは1日に少なくとも1人のサイコパスに遭遇している可能性がある。だが彼らは本性を隠してしまうので正体を見破るのは難しい。主に3つの技術を使って、彼らは隠れている。

1、相手の心理を読み解く能力

 他人の心理を読み取ろうとする意欲が旺盛で、その能力が高く、相手の好き嫌い、目的、要求、欠点、弱みを短時間で見抜く。そしてそうした「つぼ」を突く。

2、優れた話術

 たいていの人が感じる社会的な遠慮をすることなく会話に飛び込んでくるので、実際以上に話上手に見えてしまう(空気をあえて読んでいない)。会話に中身がなく、誠意が感じられなくても、自信と迫力に満ちた話ぶり--専門用語、決まり文句、美辞麗句--でそれを補う。

 相手を感化するには何を、どんなふうに言えばいいのかを心得ている。

3、印象操作

 1と2のテクニックをもってすれば、状況や作戦に応じて表向きの人格を如何様(いかよう)にも変えることができる。付き合う相手によって仮面を次々に付け替え、変身を繰り返す。そして、狙いをつけたターゲットに好かれるように振る舞う。

 サイコパスはナルシストの目には、注目を集めたいという願望を満たしてくれる人のように映り、心配性の人の目には安らぎを与えてくれる存在に映る。多くの人にとって、サイコパスは一緒にいて愉快な存在で、自分の弱みや性格に付け込んでいると疑う人は少ないだろう。


 他人を操るアプローチ

1、評価段階

 相手が自分の要求をどの程度満たせるのか(利用価値)を見極め、相手の精神的な長所と短所、ガードの固さを見抜く。

2、操作段階

 慎重に練り上げたメッセージを使って、その相手(すでに犠牲者候補)を操る一方で、相手の反応を絶えずうかがいながら、支配関係を作り、それを維持しようとする。そして、相手の資産を流用する。

 サイコパスは瞬時に嘘をにつけ、無神経かつ計算されており、相手を傷つける可能性も十分にある。また失敗の責任を回避する能力が極めて高い。他人を公然と非難することで自分の良いイメージを補強しつつ、敵対する人物を貶める情報も広めるという二重の目的を達成する。

3、放棄段階

 この時点で、サイコパスはそのゲームに飽きてしまい、散々振り回されて困惑する相手をあっさり見捨てる。

企業社会に潜むサイコパス

 企業はサイコパスにとって、ワンランク高いターゲットの一つ。

 特徴として、企業の短期、中長期ビジョンにほとんど興味を示さない。

 経歴詐称をしている可能性。面接時にも。

サイコパスが他人をうまく操る3つの条件

1、相手と一対一の関係を確立する。

2、両者の関係を内密にする。

3、規範を逸脱した行動が上層部の目に触れないようにする。(サイコパスが上司の場合は、自分より上に直接相談されることを嫌い、分断して管理する)

起業家精神

 変化の時代に対応するべく、成功する人の条件として真っ先にあげられるのは、起業家精神をもち、変化も変化がもたらす難局や好機も楽しめる人だ。多くの企業がこうした人材を求めている。

 だが、おおかたの予想とは異なり、起業家が全て自分の会社を興すわけではない。実際多くの起業家タイプの人間は、大企業、とりわけ彼らの要求に応えて便宜を図ってくれる企業で能力を発揮している。起業家タイプの人間が求めているのは、資金が手に入り、新しい刺激的な事柄に挑戦する機会が次々に訪れること、個人的な成功を認められること、失敗に対して意見をもらうこと、そして何よりも、自由に行動できることだ。

見せかけの起業家

 ”起業家のふりをしたサイコパス”は変化に興奮を覚える。常にスリルを求めているので、多くのことが起こる状況に惹かれる。

 筋金入りの掟破りであるサイコパスは、自由な行動が許される社風になじみやすい。彼らは混乱した状況下の企業によく見られる、規則や方針を重視せず、自由な形式の意思決定がますます必要とされる傾向をうまく利用する。

 日和見主義者であるサイコパスは、傍目からはそれとわからないやり口で他人を利用する。特に、リーダーや管理職になって権力を行使し、人や資金を動かす機会に恵まれ、仕事の細部に首を突っ込む必要がなく、平均以上の給料をもらえることは魅力的だ。

サイコパスはリーダーシップをとるのがうまい?

 リーダーシップをとることはサイコパスの得意技に見えるかも知れない。しかし実際には持ち前の詐欺のテクニックに加えてかなりの才能とスキル、ノウハウが必要になる。だが、昨日の成功法則が今日では変わっている変化の時代が功を奏して、良いリーダーシップと悪いリーダーシップの違いが曖昧になり、エセ起業家のサイコパスは自分の行動が評価されて処置されないうちに、昇進と異動でスイスイと社内を泳ぎ回る。

 そうした印象操作によって、起業家タイプのリーダーを求める企業にとって、サイコパスはいかにも将来のリーダー候補に相応しく見えるので、ついつい雇ってしまう。

リーダーシップと誤解されやすいサイコパスの特性

 サイコパスの特徴を企業のリーダーとしての資質と取り違えてしまうのは、サイコパスが、上層部の求めるマネジメント能力をもっていると振る舞えるからだ。現に、サイコパスの魅力的な物腰や大仰な話ぶりは”カリスマ的リーダー”や”自信家”の特徴と思われがち。

 したがって、次のような場合に要注意

●前途有望な新入社員がリーダーの資質を上手くアピールできるノウハウや特性を持っている

●「仮面」が企業の理想の人材像と完全に一致する

(ここでの仮面は、私的インナーパーソナリティ、公的ペルソナ、属性人格の3つ)

●「理想のリーダー」というタイトルのサイコパスのドラマが見事に演じられる

危険信号の兆候

 ただし、サイコパスは目上の人間の前では以下の態度を控える。そのため次の昇進まで長いこと放置される可能性がある。

チームを組めない

共有できない

 サイコパスは一部のナルシストやマキャベリアンと同様、資源を共有しようとは考えない。他の社員は自分より格下で、企業の資源を求める資格がないと思っている。

 また、情報を独り占めしようとする理由は実にわかりやすい。他人が失敗すれば、自分の手柄が目立ちやすくなるからだ。以下の言葉は要注意!

「彼らにはどうせ理解できない」

「この部署を混乱させないためには、彼女に情報を流さないほうがいい。パニックを起こしてかえって大事になってしまう」

相手によって態度を変える

本当のことを言わない

謙虚になれない

自分の非を認めない

何をしでかすかわからない

冷静になれない

好戦的な態度を改められない

対策

1、サイコパスについての知識を得る

2、安易にサイコパスのレッテルを貼らない

 心理学的診断に必要な訓練を受け、その資格を持っていない限り、他人に対して安易にそのレッテルを貼ってはいけない。実際にはその人物にサイコパスとおぼしき特徴や行動が多く見られることを認識すればそれで十分。安易に精神分析しようとしたり、その人を変えようとしたりするのは勝ち目のないゲームになる。

3、汝自身を知る

4、サイコパスにとっての利用価値を知る

5、自分の「つぼ」と「弱み」を知る

6、サイコパスが他人を操る手法を理解する

7、誘惑を退ける

8、絆を結ばない

9、サイコパスのゲームに加わらない

10、自信喪失と自己否定を乗り越える

11、虐待されたら、直ちに助けを求める

12、客観的に状況を分析する

13、羞恥心を乗り越える

14、怒りをコントロールする








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