仕事を再開したら『学びたいコト』が明確になった件。
「動けないけど社長」「話せないけど大学講師」というアイドルもひっくり返るキャッチコピーを惜し気もなく言い放っている、重度脳性麻痺でもある息子の、待ちに待った大学での講師の仕事が先週ついに再開した。
学生さんは介護福祉士を目指す日本、海外の方合わせて40名。
今までと一つ違うのは感染予防対策として、学生の皆さんと彼は一枚のビニールシートで仕切られた空間だということだ。
だが彼は「オンラインよりも100倍いい」と言う。
そんな新しい環境の中での2限目の授業で、
ある海外からの学生さんより、彼はこんな質問を頂いた。
「今勉強したいことはありますか。」
すると彼はすぐさまこう答えた。
「国語」
国語?
一瞬分からなくて、彼の目を見て
ピンときた。
「語彙数を増やしたいから?」
そうたずねると
「はい」
と答えた。
一限目の授業での彼を振り返った。
久しぶりの授業。
楽しみで笑顔が隠しきれない彼の表情。
学生さんから投げかけられるたくさんの質問に対し
時に即答し、
時にじっくり考えて言葉を紡ぐ彼。
だが授業後、
まだまだ彼の中では伝えきれていない事が沢山ある事を知った。
子供の頃から、遊びも含めた全ての経験値が圧倒的に少ない彼は、持ちあわせている言葉が少ない。
言葉とは、語彙力とは、
やっぱり経験とは切っても切り離せないモノなんだな、と痛感する。
そんな中で、
なぜか支援機器を活用せず「自分の言葉で伝える」事にめちゃくちゃ拘っている彼だったが、
いよいよもっと自分の言葉で伝えたい感情が、
溢れてきたようだった。
彼のいう国語が「語彙」や「表現力」なのであれば
ある程度経験値も積んできた彼に対して
読書はどうか、と提案してみた。
「本読む」
と彼は言った。
とりあえず、どんなジャンルが好きかも分からないし、とっかかりとして比較的読みやすい手持ちの本を選ぶべく、本棚を背伸びしたり屈んだり。
そして3冊の小説を選んでみた。
選んだ理由は彼が
・電車好きだから
・仕事好きだから
そして
・父親との素敵なストーリーだから
隙間時間に少しずつ読み進めてゆけたらと思う。
彼の『学びへの意欲』のきっかけは、
今回もやっぱり仕事だったみたいだ。
これをきっかけに、
好きな作家さんや作品の話が彼とできたらいいなー
と、実はそこも私は楽しみでもある。
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