宿泊業へ就職するということ
特にコロナ明け、宿泊業に就く若い人が減っているという話をよく耳にする。帝国データバンクによると、旅館・ホテル業における正社員・非正社員の人手不足割合は以下だそう。
数字から見ても大きな宿では(小さな宿でもだが)いかに人手を確保するかが喫緊の課題なんだと思う。私は前職と合算すると、16年ほど宿泊業に就いているが、確かに長時間労働であったり、夜間早朝の仕事が多かったりと特有の課題はある。それを横において置くことはできないので、そちらの課題解決は必要だけれども、人手不足解消には同時に宿泊業を "やりがいのある仕事" として創造してゆく必要があると思う。
ただ泊まるだけの場所ではない
自分が1166バックパッカーズを開業した際、宿をやりたいわけではなかった。当時は漠然と、人が必要としている情報が往来するような場所を持ちたかった。観光案内所というのも視野にはあったがマネタイズが難しく、行き着いたところが、観光案内もできる、情報発信もできる、人の集まる場所にもなる、そしてキャッシュポイントもあるゲストハウスだった。
若い世代と話をするなかで
1166バックパッカーズという場所がらというのもあるかもしれないが、ここに来る若い世代と話していると、まちづくりやコミュニティ、有休不動産の活用、ライティングなどに興味を持っている人が多い。宿泊施設を、単に宿泊インフラとしての場所と考えてしまうと、そういった個々の興味から切り離されてしまうが、実際は決してそうではない。
私が宿でできること、宿がその土地に対してできること
私自身も現場に出ない時間にこうして情報を発信し、まち歩きの案内人をし、地図やオリジナルグッズをデザインし、地元企業と最近の観光客の動向について語り、建築やまちづくりに関わる論文を書いている学生さんたちの聞き取り調査に応じる。それは、全て1166バックパッカーズが入り口になっている。
以前、ゲストハウスのことを「とまり木がなければ鳥もとまらない」と言ってくださった方がいたが、宿があることでひとが街に来る。街での滞在時間が長くなる。宿がローカル文化の輪郭をはっきりさせ、街を活性化させる。宿はそんなキープレースになれる。それは宿の大小に関わらない。ただ、宿の持つコンセプトによりけりだと思う。そもそも宿のコンセプトが "宿泊のインフラ" であれば自分の関わりで変えてゆくことはなかなか試練も多いだろうけれど、宿のコンセプトがもっと広く考えられているとすれば、そしてその舞台に自分自身のアイデアを掛け合わすことができれば、やれることは無限だ。これから社会に出るひとにとって、宿泊業の魅力が伝わればよいな、と思っています。
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