おりべ さとこ

日々の暮らしから思うことや茶の湯のことをつづります。 日本の古くからの文化や暮らし、日…

おりべ さとこ

日々の暮らしから思うことや茶の湯のことをつづります。 日本の古くからの文化や暮らし、日本人の感性の美しさに魅了されています。 地方、町家暮らし。 表千家で茶の湯の道に入って10年。

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茶の湯で体感する「正解がない」世界

「茶道」「茶の湯」と聞くと、敷居が高くてこわいというイメージを持つ方が多い印象である。 「間違ったことをすると怒られそう」というイメージが一般的になっているのだろう。 しかし、私にとって茶の湯は「正解がない」ということを体感させてくれ、「人それぞれの解釈がある」ことを受け入れることのできる存在である。そして、それが私が茶の湯に魅了されている大きな理由である。 私は茶の湯の世界に入り10年ほどになり、表千家という流派で師事する教授のもとへ毎週稽古へ通っている。 私の稽古場に

    • 着物というコミュニケーション

      私は10年近く茶道を習っている。季節の移り変わりを感じ、日本の素晴らしい工芸に触れ、五感を刺激してくれる、私にとって大切な時間である。 お茶会に参加したり手伝ったりすることも多く、そのような時は着物で過ごしている。 初めのうちは、美容師や着付師に着付けをしていただいていたが、頻度が多くなると費用がかかってしまうことや荷物が多く移動にも時間がかかってしまうことなどを踏まえ、毎回依頼するのは難しいと思うようになった。 必要に迫られて自分で着付けをすることになったが、着付けの本や

      • 自宅でのお茶のもてなし

        和室がある築90年の町家に暮らしている。 引っ越しをしてから徐々に茶道具を集め、お茶を点てて飲むことができるくらいは揃ってきた。 同僚に茶の湯の話をすると「茶道って怖い。けれども、少しだけ興味がある」と声をかけてくれた。 たしかに、いきなり稽古場を探すのはハードルが高い世界である。カルチャーセンターなどの空間では味気ない体験に思われる可能性もある。 そこで、立派な茶室があるわけではないが、自宅に招き茶を差し上げた。 何度か友人を招いてお茶を点ててはいたが、道具を一式用い

        • 友人との再会を野点をして楽しむ

          表千家の家元での講習でご一緒した友人。1週間の苦労した日々を共にした仲間は特有の絆のようなものがある。そんな彼女たちが、わざわざ遠方から私のいる地まで遊びに来てくれた。大変嬉しいことであり、ご縁を大切にしたい。 大きな目的は、野点を楽しむこと。 茶室ではなく屋外で抹茶を飲むことを野点と言い、私は近所の公園や山で楽しんでいる。その話をすると「野点ってどうやってやるの?一緒にやってみよう」となり、この会が開かれる運びとなった。 おおげさなことではなく、お湯を入れた水筒、抹茶の

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        茶の湯で体感する「正解がない」世界

          丁寧な暮らしという幻想

          「丁寧な暮らし」と聞いて、みなさんはどんなことをイメージするだろうか。 出汁からとった味噌汁や何品もの手料理が小皿に並ぶ食卓。早朝に起きてヨガの後、窓辺で豆から挽いたコーヒーを片手に読書の時間。高級そうな家具と観葉植物や花で彩られるリビングルーム。 このようなライフスタイルに憧れつつも、時間とお金に余裕のある人たちのみができることだろうと思う人も多いのではないだろうか。 そして、どこか自分の今の生活との乖離を感じて、現状への満たされない気持ちを高めてしまう。 私もその一人

          丁寧な暮らしという幻想

          わたしが考える「地方の豊かさ」とは

          「自然豊かな環境で家族と一緒にのんびり過ごせます」 地方移住のうたい文句では、こんな表現を全国各地でよく聞く。 わたしは地方に住んでいて、地方の魅力を日々実感している。そんな私が移住者向けにアピールするとしたら「自分が必要な情報を自分でつかみ取り、土地の味わい深さを堪能し、 五感を刺激する日々を過ごせます」といったところか。 コロナ禍を経て地方移住の動きがみられるかと思ったが、東京一極集中の流れは相変わらずである。2023年は名古屋圏、大阪圏の大都市圏さえも転出者が転入者を

          わたしが考える「地方の豊かさ」とは

          【表千家同門会】同門 令和6年5月号

          千家十職  塗師 中村宗哲[二] 当代十三代による千家十職としての思いを語る。 「千家の職家として肝に命じているのは、私自身の作品ではなく、お家元のお道具をつくらせていただいているということに尽きます」 「お家元のご意向に叶う道具を、つくり手の感性を通して表現するにはどうすればよいかをとことんまで考え、常に自分を一歩引いて見る客観性が大切であると思っております」 千家十職は、作家であり職人でもある職家なのだと理解することができ、それは非常に複雑な立場のように思う。 代々続

          【表千家同門会】同門 令和6年5月号

          はじめての掛軸

          床のある町家に引越し半年が過ぎ、 ようやく床に掛軸をお迎えすることができた。 ネットや小道具屋を物色していたが、用途や予算に合うものを探すのは思いの外難しく、時間をかけて気になるものを見つけた。 掛軸は 宗旦筆 瓢箪画賛  『瓢箪の達磨に成るもどふりなり 芦の葉に乗る程の身なれば』 である。 瓢箪を達磨に見立てている。達磨というのは、禅宗の祖である中国の達磨大師である。 達磨大師には、一片の芦葉に乗ってインドから中国に渡ったという伝説があり、インドから中国にやってきた達

          はじめての掛軸

          仕事第一主義になっている社会

          世界的に見ても、日本人は働きすぎとよく言われている。長時間労働からの過労死問題も深刻であり、近年では「Karoushi」と世界的に取り上げられているほどである。 例にもれず私も長時間労働に悩まされた一人である。数カ月前に過労からの精神疾患と診断され、1か月休職をしていた。働きはじめて10年近くであるが、こんなにまとまって仕事をしなかったことが無く、この1か月は私にとって思考も身体も変わるきっかけをくれた貴重な時期となった。 元来、私は仕事大好き人間ではないし、興味はあるが完

          仕事第一主義になっている社会

          茶の湯体験での着物

          お茶の先生がお知り合いの方々をお茶室に招かれ、お茶をふるまう体験会のお手伝いをしてきました。 お茶に馴染みのない方が多かったので、ゆったりとした気持ちでお茶を楽しんでもらいたいと思って、お点前をさせていただきました。 少しの緊張感も茶の湯ならではの楽しみですが、初めての場合は緊張しすぎて楽しむ余裕がなくなってしまうことは避けたいです。 先生があたたかく丁寧にお話をされ、皆さんお茶室のしつらえやお道具を楽しんでいらっしゃいました。 お点前をした私に対しても、ひとりひとり「美

          茶の湯体験での着物

          お茶の稽古は着物で

          茶道の稽古に、お気に入りの着物を着ました。 着物で稽古をすると、身が引き締まり、美しい所作ができるよう自然と気を配ります。 【着物】 紬・袷・大花柄 【帯】 織・名古屋帯 きものには「染め」と「織り」があり、「染め」がフォーマル、「織り」がカジュアルとされています。 そして、「染め」にも手描き友禅、型染め、ぼかし染めなど、「織り」にも紬、木綿、御召、麻などのいろいろな種類があります。 また、帯も「染め」と「織り」があり、着物と逆で、「織り」がフォーマル、「染め」がカジュ

          お茶の稽古は着物で

          お茶会参加後はお礼の手紙を

          手紙を書くことが仰々しく感じるほど、書く機会が少なくなってしまった。 小学生の時は、ともだちと手紙のやり取りをすることが大好きだったのに。 お茶の世界では、手紙を書くことが重んじられている。 お茶会への案内、茶会に参加したお礼、依頼やお詫びなど、いろいろな場面で手紙を書く。 正直、慣れないうちは、手紙のフォーマット、季節の言葉を検索して、ほとんど真似して書くだけで精一杯だった。 何事も慣れとはこのことで、何回も節目ごとに書くことで、徐々に自分の言葉を込めれるようになってい

          お茶会参加後はお礼の手紙を

          新年初稽古の着物

          社中の初稽古では、赤さび色の色無地に白黒の大花柄の帯を合わせました。祖母から譲り受けた着物で、初めて袖を通しました。 茶道をはじめて年数が経ち、着物を着る機会が増えている割には、全く上達しない着付け。少し時間ができたので、やっと知り合いの着付け講師の方にご指導をいただくことができました。 初稽古の前の2日間、みっちりご指導をいただき、なんとか着れるようになりました。 1つ1つの動作を無駄がないようにすることが大切であることを教えていただきました。ひもの結び方や左右どちらの

          新年初稽古の着物

          茶室の第一の道具・掛物

          茶室の床の間には、掛物がかけられている。茶室に入るとまず掛物の前に行き、一礼をして拝見をする。他の道具も拝見をするが、お辞儀をするのは唯一掛物だけである。 千利休のわび茶の思想を伝える『南方録』という古書にも、客も亭主も共に茶の湯を極めようとする者にとって、なくてはならない物であると伝えられている。 亭主の気持ちを表現することができる茶室の最上位である床の間に掛けられ、師匠が弟子に向かって教え諭しているように、客にも亭主にも共に茶の湯の教えを示している。 これが他の道具

          茶室の第一の道具・掛物

          千利休 美意識の体現者

          千利休、わび茶を大成させた人物として有名であるが、茶の道に入る人は皆、彼の美を追究する精神性に大きく影響を受けるのではないだろうか。少なくとも私は、自分なりの美意識を深く追い求める生き方に、非常に惹かれていった。 1522年に大坂・堺の魚問屋に生まれ、堺の豪商である武野紹鴎に茶の湯を学び、わび茶を大成させる。織田信長や豊臣秀吉の茶頭として仕え、特に秀吉には茶頭の筆頭として仕え、世に「天下一の茶の湯者」と称されたが、1591年に秀吉の命により自刃。 利休の美意識 利休の時

          千利休 美意識の体現者

          私と茶の湯

          社会人になって久しい30代の私だが、茶の湯との出会いは大学時代に遡る。離れた時期もあるが、今はすっかり茶の湯に魅了され、これからさらに探究していきたい。 大学に入学し、どんなサークル、部活に入ろうかと胸を躍らせていた入学当初。いろいろなサークル・部活に顔を出している中、茶道部の体験会に参加した際の「日本文化ってなんかいいなあ」との感覚から、入部を決めた。 今思うと、畳の部室、わいわいしていない奥ゆかしい部員たち、なんだか落ち着いた空間に惹かれたのだろう。「なんとなく心地いい