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金の鯉のぼり



5月の連休になると、毎年必ず母の実家へ遊びに行きました。

母の家は農家なので、お天気の良い日に親戚中が集まり、一日がかりで田植えをします。わたしたち子どもは大人たちの作業の横で虫採りをしたり、裸足になってどろんこ遊びをしていたのを覚えています。


いつもと同じように父の運転する車で、緑のあふれる里山を抜け、細い田んぼ道を通って祖父母の家へ向かいました。

窓の外を眺めていると、中学校の近くのお屋敷に目が止まりました。

そこには立派な鯉のぼりが立っていました。


太い柱にくくりつけられた鯉のぼりは、どこの家に飾ってあるものより大きいものでした。

何色もの鯉のぼり。ピンク、オレンジ、緑、赤、青、黒。

そして、いちばん上には金色。


金色の鯉のぼりがありました。

とてもとても、大きくてきれいでした。

ゆうゆうと、風になびいていました。



大人になって、金の鯉のぼりを目にすることはなくなりました。どこの町へ行っても、あの大きくてきれいな金の鯉のぼりは見当たりません。

子どもの頃の記憶はあいまいで、勝手な思い込みをしてしまったのかもしれません。


この時期になると、主人の運転する車の中から、ぼんやり金色の鯉のぼりを探してしまうのです。

またどこかで会えるといいな。





















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