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【ロードレース】クラシックの女王。雨のパリ〜ルーベ2021

10月3日に、パリ〜ルーベ (Paris - Roubaix)という、自転車ロードレースのワンデークラシックが行われました。

1896年から行われており、ワンデークラシックレースの中でもとりわけ古い歴史があるパリ〜ルーベ (Paris - Roubaix)。最も格式あるレース「モニュメント」の一つであり、「クラシックの女王」と呼ばれています。

歴史に残るであろう、とても面白いレースでしたので、ご紹介したいと思います。よろしくお願いいたします。

石畳を走る

パリ〜ルーベは、フランスの首都パリから80km北に位置するコンピエーニュをスタートして、ベルギー国境に近いルーベまで北上する全長257kmのレースです。

コース図はこちらです。

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画像は公式サイトより引用しました

コース上にある、赤いラインとグレーの丸印はすべて「パヴェ」と呼ばれる、握りこぶし大の石が敷き詰められた石畳のコースです。

パヴェは全部で30箇所あり、それぞれの石畳の荒れ具合や距離などをふまえ、五つまでの星の数でその過酷さが表されています。三つ星、四つ星…レストランみたいです。

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石畳のコースは、総距離にすると50km近くもあります。通常のロードレースに比べてパヴェ区間が長いのが、パリ〜ルーベの大きな特徴です。

そして、レースの最後はルーベの街中にあるヴェロドロームを1周半してゴールとなります。

別名「北の地獄」👿

選手たちが使用するロードバイクのタイヤの幅は、25mm〜28mmが主流です。タイヤが路面に接地する面積は、さらに狭くなります。

みなさん、この細いタイヤが石畳の溝にはまったら、どうなると思いますか。

そう、段差でタイヤがパンクしたり、バランスを崩して転倒したりします。最悪の場合、怪我をしたり自転車が壊れたりして、レースから脱落することになります。

そんな超、超、難しいコースを、選手たちは駆け引きをしながら、ものすごいスピードで走り抜けるのです!

パヴェの段差は強烈な振動となり選手を苦しめ、パンクや落車を発生させます。

パリ~ルーベは、そのあまりの過酷さに「北の地獄」という異名があるほどです。さらに、例年4月中旬の日曜日に開催されることから「地獄の日曜日」とも呼ばれたりします…。

パワフルな選手が集まる、クラシックレース

この大会で必要なのは、パヴェを軽やかに走るテクニックと、257キロを力強く走り抜けるパワーと独走力、機材トラブルや落車に巻き込まれずに走る勇気、そして選手同士の駆け引きと、運。

通常のロードレースに比べ、体もがっしりと大きく、よりパワフルな選手たちが出場します。そして毎回ドラマチックな展開を見せてくれる、自転車ファンにとって大注目のレースのひとつなんです!! 

おっとっと、ついつい力が入ってしまいました(笑)

注目選手

そして、注目はこちらの選手です。

マチュー・ファン・デル・プール選手(Mathieu Van der Poel、オランダ、アルペシン・フェニックス)

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写真は東京オリンピック公式サイトより引用

ワウト・ファン・アールト選手(Wout van Aert、ベルギー、チーム・ユンボ・ビスマ)

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写真は東京オリンピック公式サイトより引用

そうです。東京オリンピックにも出場した2選手です!

マチュー・ファン・デル・プール選手は、東京オリンピックの男子クロスカントリ―(マウンテンバイク)で激しい落車をし、残念ながらリタイア。腰を痛めてしまったとのことでしたが、このパリ〜ルーベ (Paris - Roubaix)に初出場となりました。

悪路に強く、独走力もある2人。さあ、どうなるのでしょうか。

雨、泥、転倒の連続。サバイバルレース

出走選手は194人。2年半ぶりに開催された大会は、雨のレースとなりました。どうやら、雨の中でのスタートは20年ぶりだそうです。確かにこれまで見たレースはパヴェは乾燥していて、土煙が舞っていました。

濡れた路面はつるりと滑りやすく、難易度がさらに上がります。そのため、レース開始から選手の転倒が相次ぎ、パヴェが始まる前からサバイバルレースの様相になりました。

深い水たまりに突っ込む先導のバイクと選手と、チームカー。車は故障しないのでしょうか…


道には大きな水たまり。過酷なレースコンディションの中、選手たちはアタック(逃げ)を何度も仕掛け、ライバルをふるいにかけます。後輪をスリップさせながらもバランスを取りながら走る選手たちには、見ているこちらもヒヤヒヤして、思わず「うわっ」と声が出ます。

その後もパンクや転倒が相次ぎ(先導のバイクがスリップして転倒する場面も)、集団は分裂したり合流したりしながら、ゴールへと向かっていきます。


混沌としたレースの中、残り約50km付近から独走に持ち込んだのは、ジャンニ・モスコン選手(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)。後方を走る10数人の集団から、1分20秒ほどリードを保ち走り続けます。

このまま逃げ切りかと思われましたが、残り30kmでなんと痛恨のパンク。その後、自転車を交換してレースに復帰しましたが、タイヤの空気圧が路面に合っていなかったのかスリップして転倒し、リードを失ってしまいました。

レースは最終盤。集団から飛び出したのは、
ソンニ・コルブレッリ選手(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
22歳のフロリアン・フェルメルシュ選手(ベルギー、ロット・スーダル)
そして、注目のマチュー・ファン・デル・プール選手(オランダ、アルペシン・フェニックス)。

表彰台はこの3人に絞られて、残り1㎞。最後のヴェロドロームでのスプリント勝負となりました。

ハラハラ、どきどき…


そして先頭でゴールしたのはソンニ・コルブレッリ選手。6時間にわたる257kmのサバイバルレースは、歴史に残る名勝負となりました。

👿悲喜こもごも👿

まさに「北の地獄」となったパリ~ルーベ。出走は194人、そのうち完走できたのは95人でした。

最後に、印象的な写真をいくつかご紹介します。選手の様子が、大会の過酷さを物語っています。

初出場ながら2位と大健闘したフロリアン・フェルメルシュ選手と、その後ろで自転車を持ち上げている、優勝したコルブレッリ選手。ふたりの涙は対照的でした。


あまりの悪路に、チームカーもまさかのコースアウト…💦 


見れば見るほど痛い😖


レース後、シャワーを浴びる選手たち


大ベテランのフィリップ・ジルベール選手は素敵な笑顔でした。


3位のマチュー・ファン・デル・プール選手(写真右)は表彰台で浮かない表情。


おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。思いのほか長文になりました。

格式高いレースにかける選手たちの想いや意気込みを感じて、胸が熱くなりました。

「勝つのはただ一人」自転車ロードレースは残酷であり、とても美しいです。


ハイライト動画です。



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