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2011年Jリーグ 勇気をくれた岡本達也選手のゴール


サッカーの忘れられないシーン。

それは2011年4月23日、J2リーグ水戸ホーリーホック対徳島ヴォルティス戦での、岡本達也選手のゴールだ。


茨城県出身のわたしは、Jリーグのチーム水戸ホーリーホックを15年以上応援している。時間のある限りスタジアムへ足を運び、このチームを見続けてきた。

2011年、東日本大震災。

茨城県は地震、津波のほか、原発事故の影響も大きく受けた。そして、茨城県北部にある実家も被災した。

当時、まだ結婚する前。運転をしないわたしには、栃木から実家へと帰る交通手段がなく、続く余震に、原発問題…もどかしい日々を過ごしていた。そして、1ヶ月経って鉄道が復旧し、ようやく両親と会えたばかりだった。

Jリーグも中断となっていたが、2011年4月23日、リーグ戦が再開された。リーグ再開初戦をホームで迎える被災地クラブは、水戸ホーリーホックだけ。

わたしはケーズデンキスタジアムへと向かった。


到着し、会場を少し歩いた。スタジアムは地震によりメインスタンドの一部が損壊し、改修工事中だった。大きな足場が組まれ、この日の観客席はバックスタンドとゴール裏のみ。

観客はまばらで、いつものような明るい雰囲気はなく、ひっそりとしていた。

皆、リーグ再開がうれしい反面、こんな状況のなかサッカーを楽しんでいいのかという、とまどいのようなものを感じた。それはとても異様な雰囲気で、わたしも正直、ここに来てよかったのか、と思ったくらいだ。

ガラガラのスタンド。知っている顔も見当たらない。元気にしているのだろうか…。レインコートを着て、応援団から少し離れた芝生席で、ひとり観戦した。


冷たい雨が降るなか、黙祷があり、試合が始まった。

選手たちからは「絶対に勝つ」という強い気持ちが伝わってくる。しかし、前半早々に徳島ヴォルティスに先制されて、1対0。試合は終始徳島ペースで、前半が終わった。

後半に入っても流れは変わらないままだったが、徐々に水戸ホーリーホックのシュートが増え、観客の声援も大きくなる。

がんばれ、がんばれ!! チームの苦しい時間帯が、今の、暗く、重苦しい現状と重なる。いろんな思いをのせて、選手への拍手と歓声が響き始める。選手たちもまた、果敢にゴールに向かっていた。

そして、水戸の攻撃。

61分、徳島のボールを奪った水戸が速攻をしかける。

右サイドを突破した選手が斜め前に蹴り上げたクロスボールに、中央にいた岡本達也選手が反応した。相手ディフェンダーと競り合いながら、前へと走り込み、ジャンプと同時にヘディングシュート。

放たれたボールは丸い軌道を帯びて、キーパーの手のひらをかすめてゆく。ズサっとゴールネットを揺らした。

ゴーーーーーーーール!!

鮮やかな同点弾だった。スタジアムは割れんばかりの大歓声。

岡本選手は両手を上げながら、真っ先にゴール裏のサポーターへ向かい、全速力で走ってくる。

「わあーーーー!」

足元にあった荷物をそのままに、わたしも応援団の方へと走りだす。

声とともに、感情が昂ぶってぶわっと涙がこみあげてくる。そして、泣きながら叫んだ。

「ありがとう、ありがとーう!!」

うれしいよりも、感謝の気持ちが大きかった。悲しい。苦しい。けれど、この状況を共に乗り越えていこう。想いが伝わってくるシュートだった。

目の前には、応援団と固い握手をする岡本選手。周りにいたサポーターたちも、みんな顔をぐしゃぐしゃにしていた。

ひとつのゴールによって、鬱屈とした空気と心が解き放たれた。喜び、涙、いろんな感情が混じり、スタジアムはまるでJ1へ昇格を決めたような盛り上がりだった。

その後、ロスタイムに追加点を上げて、水戸ホーリーホックが逆転勝利した。試合後には冷たい雨も止み、空にはうっすらと晴れ間が見えていた。


サッカーの試合を見て、一度だけ声を上げて泣いた。

わたしにとって、サッカーの忘れられないシーンと聞かれれば、間違いなくこのゴール。岡本達也選手のゴールは、震災により被災された方々、傷ついた方々、水戸の街、そしてこのチームに関わるすべての人たちに、勇気と希望を与えてくれた。共に前へ進もうと背中を押してくれた。

あれから10年。今もなお、思い出すたびに目頭が熱くなるのだ。


共に進もう一歩ずつ! みんな笑顔!

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2011年4月23日。試合後の選手たち。※写真は水戸ホーリーホック公式ホームページより引用しました


2011年4月23日
2011 Jリーグ ディビジョン2 第8節
水戸ホーリーホック 2-1 徳島ヴォルティス
ケーズデンキスタジアム水戸 入場者数 1,273人
天候 曇時々雨 気温 17.1℃ 湿度 93%
水戸ホーリーホック
監督: 柱谷哲二
GK: 1本間幸司
DF: 2岡田佑樹、5加藤広樹、20塩谷司、3保﨑淳(72分 18鶴野太貴)
MF: 7小池純輝、6西岡謙太、24ロメロ・フランク(65分 8村田翔)、22小幡純平
FW: 10遠藤敬佑、13岡本達也(83分 11常盤聡)
得点: 岡本達也(61分)、常盤聡(90+4分)
警告: 保﨑淳(50分)
控え: 23小野博信、4尾本敬、18鶴野太貴、8村田翔、15島田祐輝、28小澤司、11 常盤聡
徳島ヴォルティス
監督: 美濃部直彦
GK: 21オ・スンフン
DF: 22島村毅、4エリゼウ、2三木隆司、6西嶋弘之
MF: 27ディビッドソン純マーカス、14濱田武、17衛藤裕(82分 19杉本恵太)
FW: 10島田裕介(89分 25平島崇)、13柿谷曜一朗、18佐藤晃大(71分 7徳重隆明)
得点: 島田裕介(12分)
警告: 島田裕介(45+2分)、エリゼウ(53分)
控え: 1上野秀章、3輪湖直樹、25平島崇、15六車拓也、8倉貫一毅、19杉本恵太、7徳重隆明


参照 
J.League Date Site


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