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奥様、ふたたびベリーショートになる。

髪を切り、一年ぶりにベリーショートにした。

もともと癖毛で、髪の量も多い。髪を伸ばすと手入れが面倒になるので、もう15年くらいショートヘアでいる。
最近、広いおでこがさらに広くなり、白髪が全体の40%くらいになってきた。今月末には44歳。そんなものかな、と思う。

前回、美容室では髪の長さを変えずに、量を減らしてもらっただけ。案の定2ヶ月半が経ち、わたしの髪は自由気ままに主張してきた。

伸びた横の髪は耳にかけ、広がるのを抑えるしかない。そして、赤茶色に褪せた髪の根元からは、きらりとひかる白髪がにょきにょきと生えてきた。金髪の伸びかけを「プリン」なんて言うけれど、わたしの髪は「チョコマーブル」みたいだ。

忙しさを理由に、まだ大丈夫、まだ大丈夫と、ほったらかしにしていたら、おしゃれに厳しい主人から「頭がおしりマンみたいになってるよ」。

ドクタースランプに出てくる黄緑色の丸いキャラクターみたいだ、と笑う。

おしりだなんて、失礼だよなあと思いつつ、鏡を見る。


たしかに、おしりマンだった。
つむじから両脇に、お椀がふたつ乗っているのかと思うほど、こんもりとふくらんでいる。くっと笑いが込み上げ、わたしはすぐに美容室の予約をした。

「ずいぶん伸びましたね。」
椅子に座るなり、美容師さんに言われた。「うふふ、そうですねえ。」話し下手なわたしは、いつもぶっきらぼうだ。
「今日はどうされますか?」「もう、短く切っちゃってください。耳も、ぜんぶ見えてかまいません。」「かしこまりました。すっきりさせちゃいましょう。」「お願いします。」

何というアバウトさ。
店長さんとはまだ半年ほどのお付き合いだが、同世代でなんとなく馬が合うし、あれこれ言わなくても、かっこよくしてくれる。だから、いつもおまかせ。

ただ悲しいことに、数年前からカラーリングをすると皮膚がかぶれるようになった。耳のまわりには発疹ができて、頭皮は痛がゆくてたまらない。それにめがねのフレームに当たる箇所は、ただれてしまう。皮膚科では「染料に反応しているみたいだから、カラーはやめた方がいいですね。」と言われた。

正直、髪の40%を占める白髪を染められないのは、なかなかつらいものだ。今の仕事をしていなかったら、金髪にも、ピンクにもしたいくらいなのに。

そのため今は、アレルギー反応が出ないヘアマニキュアをしている。カラーリングに比べて白髪が目立ちやすいけれど、染めないままにしておくよりずっといい。そして今回は、少し青みがかった黒い色にしてもらった。



ボサノバの流れる店内には、店長さんとわたしだけ。小学生のお子さんのワクチン接種券が届いたようで、接種させるかどうか奥さんと意見が分かれているそう。難しいねえと顔を見合わせ、たわいのない話をしながら、時間が過ぎていく。

店長さんの手により、髪はどんどん短く、軽くなっていく。ふぁさ、ふぁさと、梳いた髪が床へすべり落ちてゆく。メガネを外していて、ぼんやりとしか見えない。

カットを終え、ふたたびお湯で流し、乾かしてもらう。そして「お疲れさまでした。」メガネを渡され、鏡を見る。


おしりが、なくなっていた。


わたしは「おお、すっきりしました! ありがとうございます。」こんもりとしていた頭は、しゅっと小さくなり、とても軽い。前髪も短く、おでこはほぼ全開。いいね。首まわりは少しスースーするけれど、指通りもサラサラだ。

ベリーショートにすると、数日間は外へ出るのに少し勇気がいる。もともとラフな服装なので、遠くから見れば男の子にしか見えない。デパートのトイレでは、驚かれたらどうしようと少し身構える。

でも、まわりは誰も気にしていないものだ。力が抜けて、やがて自分も気にならなくなる。

短くなった髪は、洗うのが楽。そしてお手入れも楽。ドライヤーをぐわーっとかけると、数分で乾くのだ。はー、らくちんらくちん。


髪型を変えると、似合いそうな服も、着たい服も変わる。

さてと。この春は、何を着ようか。
たいしてお出かけする用事も、おしゃれする予定もない。だけどちょっとだけ、わくわくする。


濡れた髪。ツンとさせてみる

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