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A014 ~演習で学ぶ有機反応機構解説~

疑問点などありましたら、どしどしコメントください!
一緒に学んでいきましょう。 

それでは、『演習で学ぶ有機反応機構一大学院入試から最先端まで』の解説部分を見ながら、『電子はマイナスからプラスに動く』の考え方に基づき、反応機構の流れを見ていき ましょう。 

A014 ではアルデヒド基をニトリル基へ変換しています。 

まず、この反応系の中で最も求電子的な化学種と最も求核的な化学種を探していきましょう
求電子的な化学種としては、この系内に存在するのはアルデヒドのみですので迷うことは ないですね。
求核的な化学種としては水酸化ナトリウムが目を引きますが、 これはヒドロキシルアミン塩酸塩から塩酸を除去するために消費されるため、 この系中に存在する求核的な化学種はヒドロキシルアミンのみとなります。 

純粋なヒドロキシルアミンは不安定な物質であるため、通常はこの問題のように塩酸塩として扱い系中で塩基によって塩酸を除去することで反応に用います。 

ヒドロキ ルアミンの反応性について考えると、ヒドロキシルアミン中には2つの反応点が存在します。
アミノ基とヒドロキシ基ですね。
より求核的な官能基はどちらでしょうか。
もちろんアミノ基です。

ですので、ヒドロキシルアミン中で最も求核性の高いアミノ基とアルデヒド基がイミンを形成するところから反応は始まります
イミン形成については、ストレッカーアミノ酸合成 (A011) のところで解説しているのでご参照ください。 

ヒドロキシルアミンとカルボニル基のイミン形成によって生じた化学種はオキシムと呼ばれます。
オキシムの中でもアルデヒド基とヒドロキシルアミンから生じたものはアルドキシムと呼ばれ、 本問題で取り上げられている無水酢酸を用いたニトリル基への変換が最も代表的な反応です。

では、その部分を見ていきましょう。
オキシムにおいて最も求核性の高い部位はヒドロキシ基です。
(ヒドロキシルアミンの時は最も求核性が高かったアミノ基は、オキシム形成に伴って求核性を失っています。) 

そのヒドロキシ基が無水酢酸に求核攻撃することで、オキシム (特にここではアルドキシム) がアセチル化されます。
アセチル化されたアルドキシムを見てみると、求電子的なプロトン (C=N結合では窒素の電気陰性度の方が高く、炭素原子は電子不足となっているため、それに直結するプロトンも 電子不足となっている。) と求核的な酸素原子 (エステルのカルボニル酸素はもう一つの酸素原子からの電子押し込み により電子豊富) がちょうど反応しやすいところにあります。

『六員環遷移状態』 この言葉は覚えておいて損はありません。
六員環遷移状態とは、その言葉の通り、六員環状の反応遷移状態を指します。
六員環遷移状態を経る反応は、反応点同士が非常に反応しやすい距離間にあり、反応が進行しやすくなることが知られています。
アセチル化アルドキシムからニトリル基への変換は、まさにこの六員環遷移状態を経ています。 

求核的な酸素原子から求電子的なプロトンへ電子が流れ込んでいく中で、酢酸が脱離し、 ニトリル基が完成します。

~重要ポイント~

オキシムにおいて最も求核性の高い部位はヒドロキシ基。
六員環遷移状態を経る反応は、反応点同士が非常に反応しやすい距離間にあり、反応が進行しやすい。

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