― 「ところかまわずナスかじり」第九十五話  ある人類学者からの警告 ―

人類学者:「あ、新人さん?そうですか。そりゃ大変だぁ。まぁ慣れるまで多少の時間はかかりますけれども、まぁ大丈夫ですよ。私みたいなインテリでもやっぱり最初はいろいろ大変でしたから。あなた、大学はどちらです?え?ああ、行ってない?中学も途中でやめた?・・・ああ、そうですかぁ。・・・ふぅ~ん、そうですかぁ。

 ああ、申し遅れました、私は人類学者でしてね。あなたが知ってるかどうか知りませんが、私は東京大学という大学を出ておりましてね。あ、そうです?知ってます?いやいや、大したことはありませんよ!はっはっは。
 今、世界の大学ランキングで三十六位くらいじゃないかな?まだ三十五校も上がありますから、世界は広い!はっはっは。

 まぁ私は特別な勉強なんてしなくても入れちゃいましてね。はっはっは。
 ほら、よく言うじゃないですか、『朝起きれたら合格』って。
 まぁ、それと一緒でね。遅刻さえしなければまず合格は間違いない、とは思ってましたけどね。はっはっは。
 それでもまぁ、首席で卒業するってのは多少大変ではありましたねぇ。
 学者の道を選んだのも、まぁ、たまたまと言いますかねぇ。医者や弁護士になっても良かったんですがね。はっはっは。

 まぁ、ここであなたに会ったのも何かの縁、あなたが何をやってここに来たのかは知らないですけども、実は私もまぁ、あまり大きな声では言えないんですが、そのぉ、CIAに協力した、ということでですな。ふふふ。
 これ、内緒ですぞ。

 まぁでも実際、考えてごらんなさい。
 人類ってのは誕生して五百万年!
 生物の誕生からは三十八億年経っとるし、地球の誕生からは四十五億年が経っとる!
 宇宙の誕生なんてのは、あなた、百三十八億年前ですぞ!はっはっは。それらに比べると、こんなとこで数年暮らすぐらいなんでもない、なんでもない!歴史をね、俯瞰すると、それこそ一瞬ですよ、一瞬!はっはっは。

 一番大切なことはね、真摯に自分と向き合っていくこと。しっかり反省し、次回はうまくやること!これにつきますよ。応援してますよぉ、ま、できるだけがんばってくださいね!はっはっは。」

雑居房の他の受刑者:「おい、田中さん、アイツ、また始まったよ。えっらそうに。ホント、うぜーよ。盗撮で捕まったくせに・・・」

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