訴えられそうになったら転居するのは正解?~滝ガレとkizokuから学ぶ民事訴訟その1~

※滝ガレと野良連合(kizoku)の件に関して、他の記事も読みたい方はこちらのリンク先にまとめておきましたので、よろしければご覧ください

ツイッター上の有名人、滝沢ガレソ氏(以下、「滝ガレ」といいます)が、プロゲーミングチーム・野良連合の代表であるkizoku氏(以下、「kizoku」といいます)の情報を暴露した問題(真実か否かはさておき)で進展があったようです。

ついにプロバイダに対して、情報開示の請求がされたようです。

※「言われたらすぐやる」のアカウントは滝ガレの別垢。

訴訟の帰趨(とくに損害賠償金額がいくらになるか)自体にも興味はあるのですが、民事訴訟を学ぶ題材としても面白そうなので、ここでは教材としてkizoku・滝ガレ訴訟を見ていきたいと思います(なお、当事者から訴訟経過の情報開示がなかったり、あんま面白い情報の開示がなかったら第1回で終わりです。あらかじめご承知おきください)。

1.これまでの流れとこれからの流れ

(1)これまでの流れ

まずはこれまでの流れについておさらいしていきましょう。

・滝ガレがtwitter、twitch、note、youtubeを使ってkizokuの私生活上の事実や社会的評価を低下させる事実(事実=真実というわけではないので注意)を適示する(私見は滝ガレ敗訴濃厚なので記事へのリンクは貼らないです)。

・kizoku、野良連合代表を辞任。野良連合、法的措置を検討

・プロバイダから滝ガレのもとに情報開示請求が届いたとの連絡あり。

ちなみにここまでは私の予想通りです。

ほか、私の過去の見解はこちらです。

野良連合(Kizoku)が滝沢ガレンを訴えたらどっちが勝つ?法的観点からの予測

野良連合(Kizoku)が滝ガレを訴えたらどうなる?名誉毀損の損害賠償額予想

(2)これからの流れ(予想)

まとめるとこんな感じです(けっこうこのへん難しいので簡単に流れだけ把握するのがおすすめです)。

ちなみにこれは民事訴訟の流れです。捕まるか捕まらないかといったような刑事訴訟の問題はまた別にあります。

・kizoku、ツイッターやツイッチ等のコンテンツプロバイダに対して発信者情報の開示請求をして、IPやタイムスタンプなどの開示を受ける(たいてい仮処分という、裁判手続を利用しないといけません)

・開示されたIPなどの情報をもとに、アクセスプロバイダを特定。アクセスプロバイダに対して、滝ガレの住所氏名などを求めて訴訟提起(こちらは仮処分ではありません。本訴提起というものです。)←いまココ

・住所氏名などを特定したら、kizokuが滝ガレに対して名誉毀損で訴訟提起

・判決(不服があるなら控訴もありえます)もしくは和解

・kizoku勝訴の場合で、なおかつ、滝ガレが賠償金額を支払えないなら差押え

2.滝ガレ転居しようとしてる?

それでは、今回のケースの本題に入りましょう。

現在、kizokuは滝ガレの住所氏名の開示を求めているようです。

これに対して、滝ガレの配偶者とされるアカウントで、次のようなツイートがありました。

これはどういうことでしょうか?

今回の件とはまったく関係ない行動であれば当然問題などありません。

でも、もしも今回の件と関係があったらどうでしょうか?

kizokuは滝ガレの現住所の開示を求めて訴訟をしているようです。では、せっかく開示された住所からすでに転居していたとしたら

「わりぃなとっつぁん」という声や、「両津のバカはどこだ!」という声が聞こえてきそうなムーブですね。

さて、結論から行きましょう。

転居は基本的に無意味な行動なので、訴訟対策ならやめましょう

3.相手の居場所がわからなかったときはどうすべきか

相手の現住所や居所がわからなかったら訴訟提起はできません、はい終わりなんてほど日本の訴訟制度は甘くありません。

それでは、転居した相手の居場所を探す方法や対策についていくつか見ていきましょう(もちろんこれらのほかにも方法はありますので代表的なものだけ)。

ちなみに、郵便局に転送届が出されていれば、訴状などは転居先に送達してくれるので、以下は転送届を出していない場合です。

(1)職務上請求で住民票の除票を取り寄せる

他人の住民票は取得できないのが原則です。
しかし、弁護士には職務上請求という権限があります。これは訴訟の相手方の戸籍や住民票をとることができる、そういった権利です。

kizokuの代理人弁護士は、まずは滝ガレの転居前の旧住所をもとに、市区町村に対して職務上請求をかけ、滝ガレの住民票の除票を請求します。

住民票の除票には転居先も載っていますので、これで特定可能となります。

(2)親族照会をする

弁護士は、前述のとおり職務上請求ができますので戸籍謄本を取り寄せることも可能です。

つまりは滝ガレの親族もわかります。

そこで、戸籍をもとに親族を把握し、あまり情報は言いすぎない程度にしたうえで、滝ガレの両親や兄弟姉妹に対して滝ガレの現住所をたずねることが考えられます。

ただ、この親族照会は離婚などの場合は必要なのですが、通常の民事訴訟ではここまで必要ないと考えられているので、これはやらずに(3)に進むことも考えられます。

(3)公示送達

さて、それでは、滝ガレが郵便局へ転送届も出さず、住民票もうつさず、親や兄弟にさえ内緒にして(もしくはこの問題に巻き込んで言わせないようにする)転居した場合はどうでしょうか。

このような場合には、公示送達という方法がとれます。
公示送達というのは、簡単にいうと、「滝ガレさんへ。あなた訴えられたので訴状を受け取りにきてください。第1回期日は何月何日です」という張り紙を、裁判所の掲示板に張り付けることです。

この張り紙を滝ガレが見ようが見まいがまったく関係ありません。

調べてもまったく現在の居場所がわからない人というのは存在しますし、その人は裁判から逃れられるわけではありません。逃げ得は許されないのです。

しかも、公示送達がされたかどうかは被告である滝ガレには普通わかりません。

なので、公示送達がされるようなケースでは、被告欠席の上で裁判が行われるのが一般的です。

裁判は互いの主張を戦わせるものなので、欠席したら当然、裁判官は被告の言い分なんて聞いてくれず、原告の言い分だけきいて判決を出します。

公示送達がされればkizokuの全面勝訴判決となるでしょうから賠償額も多額になるでしょう。

4.訴訟から逃げるのは恥の上に不利になるだけだから役に立たない

以上のとおり、訴訟対策で転居をするのは無駄です。

むしろ現住所をわからなくすればするほど、公示送達の可能性が高まり、kizoku有利の判決となります。

5.強制執行について(おまけ)

さて、このように訴訟の場面では逃げるのは損にしかなりません。

これに対して訴訟の後の強制執行の場面ではある程度有効となります。

日本の強制執行制度では、財産を持っていない人からの回収は困難です。
そのため、無職でなんの財産も持っていない人が無敵の人扱いされるわけです。

こういった人に対しても(半分嫌がらせですが)動産執行をかけるということができます(漫画やアニメなどで見るような、家に立ち入って、差し押さえられるものに差押えの赤札貼ってくのを想像してください)。

この動産執行はさすがに現住所がわからないと不可能なので、完全に行方をくらましてしまえば動産執行から逃げることは可能でしょう。

ただ、完全に行方をくらますということは、今後、一生にわたって住民票の移転もせず、不動産なども持たずに生きていくことを意味します。

もうなにもない、完全に人生が詰んでしまっている方や反社会的勢力の方であればそれで問題ないでしょうけど、きちんと働いている(と思われる)滝ガレがこのようなことをやるのはかなりデメリットが大きいです(kizokuとすると滝ガレを決して許すことはできないでしょうから、判決をとったら探偵を使ってでも現住所と勤務先を突き止めて給与差押えをくらわすのではないかと予測されます)。

というわけで、無敵の人でもない限り、提訴されたら戦うしかありません。

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