野良連合(Kizoku)が滝ガレを訴えたらどうなる?名誉毀損の損害賠償額予想

※滝ガレと野良連合(kizoku)の件に関して、他の記事も読みたい方はこちらのリンク先にまとめておきましたので、よろしければご覧ください

先日、滝沢ガレンさん(以下、「滝ガレ」といいます。)が、野良連合代表のKizokuさん(以下、「kizoku」といいます。)に対して様々な疑惑を投げかけました。
kizokuは、滝ガレに対して、法的措置を警告しており、これから滝ガレの住所氏名を特定し、名誉毀損・プライバシー侵害として訴訟提起することが予測されます。
法的にも興味深いところですので、この記事では、滝ガレが支払わなければいけない賠償額について予想していきます。

1.日本における名誉毀損訴訟の現状

まず、従来、日本では、名誉毀損訴訟・プライバシー侵害訴訟における慰謝料の額は低額で固定されてきました。
こういった慰謝料低額化の原因は、報道機関への萎縮効果を避けるためという点や日本社会が名誉やプライバシーといった人格的価値を軽視してきた点などにあります。
滝ガレは、配信中に100万円程度は覚悟していると言っていました(ただ、せいぜいその程度だという侮りも感じます)。これは日本の名誉毀損訴訟における過去の判例を踏まえると正しい認識です。
しかしながらこういった慰謝料の低額固定化傾向に対しては、近時様々な問題提起がされています。

そのため、近時では、プロ野球選手への名誉毀損に対して1000万円の損害賠償を認める判決や女子アナウンサーへの名誉毀損に対して500万円の損害賠償を認める判決など、100万円程度というグランドラインを大きく超える判決が出るようになりました。
ただ、これらの高額化事例は主に週刊誌によるものです。
ネット上での名誉毀損はいまだ100万円程度というラインをなかなか越えられない状況にあるようです。

今回のkizoku(野良連合)・滝ガレ事件で個人的に注目しているのは、この100万円というグランドラインをネットでの名誉毀損でも大きく超えることができるのではないかという点にあります。

2.司法研修所の発表した基準

このような名誉毀損の慰謝料低額固定化には裁判官からも疑問視されており、司法研修所の平成13年度損害賠償実務研究会が、名誉毀損の慰謝料算定表を発表しました(判例タイムズ1070号4頁)。

慰謝料算定表では以下のように加点減点をしていきます。算定表では、1点あたり10万円として計算します。

ちなみにもっと詳しく知りたい方は判例タイムズ1070号をご購入ください。

【加害者側の事情】

・加害行為の動機・目的の悪質性の程度
①故意:+10
②極悪質:+8
③悪意:+6
④その他:+3

・加害行為の悪質性の程度
①不適切表現:+8
②顔写真掲載:+10
③個人攻撃的表現:+10

・加害行為の真実性の欠如の程度
①完全欠如:+10
②欠如:+8

・加害行為の相当性の欠如の程度
①公共利益あり:-6
②公益目的あり:-6

・配布の方法と範囲
①TV・ネット:+10
②全国紙・スポーツ紙:+9
③週刊誌:+8
④単行本:+7

・配布によって加害者が得た利益
①極大:+10
②大:+8
③小:+4

【被害者側の事情】

・被害者の社会的地位

①職業
タレント等:+10
国会議員・弁護士等:+8
その他:+5

②経歴
公人:8
個人:+8
法人:+6

・社会的評価の低下

①大:+10
②中:+7
③小:+5

・営業上の不利益

①大:+10
②中:+7
③小:+5

・社会生活上の不利益

①大:+10
②中:+7
③小:+5

・配布後の加害者の態度

①良:-6
②不良:+3

3.滝ガレの損害賠償金額予想

以上を考慮し、名誉毀損で滝ガレの完全敗訴前提(プライバシー侵害のみであれば20万円程度でしょうか)で算定すると、100万円程度のグランドラインを超えて500万円もありうるのではないかと予想します。

また、以下のような事情を考慮すると、グランドラインのはるか向こうの新世界、1000万円まで目指せるのではないでしょうか。

・配布手段はツイッター、ツイッチ、youtube、noteとメディアミックスをして様々な層に配布されるように趣向を凝らしており、従来のネット上での名誉毀損とは一線を画している

・このような配布行為の結果、滝ガレのツイッターのフォロワーは約3万人増加した

・kizokuの代理人弁護士が配信停止を求めたものの、それを無視するどころか、配信で晒し上げた

・kizokuは野良連合の代表として各種メディアにも出て、日本で開催されたレインボーシックスシージの世界大会でも挨拶をするほどだったが、名誉毀損を機に表舞台には一切出れなくなり、スポンサー契約も解除、チームも解散の危機に瀕した(予想です、いまのところスポンサー契約解除の事実などはありません)

・滝ガレは配信で、損害賠償額をせいぜい100万円程度などと侮っている。せいぜい100万円程度であれば名誉毀損をしても問題ないという認識であり、規範意識の鈍麻が甚だしく、これは司法に対する挑戦とも言える

・滝ガレは、訴訟になった後も訴訟経過を配信し、訴訟まで利用して利益を得ている(予想。当然ですが、まだ裁判にもなってないので現在このような事実はありません)

4.ポイントは今後の滝ガレの対応とkizoku側の弁護士の有能さ

滝ガレが今後どういった対応をとるかによっても損害賠償金額は左右されますが、おそらく滝ガレの配信スタイルからすると、ここでビビってひくということはないでしょう(だからこそ彼は人気を得ています)。

あとは、kizoku側の代理人弁護士の腕次第でしょう。

これだけの材料を揃えられた以上、100万円程度のグランドラインは突破したいですし、優秀な弁護士であれば1000万円の新世界にいける可能性もあります(とくに給与云々の所で負けると賠償額も一気に下がります)。

あまり優秀と言えない弁護士であれば、グランドラインどころかイーストブルー(30万円程度)でおさまる可能性があります。

弁護士の腕が試される案件ですが、ネットでの名誉毀損の損害賠償額について一線を超える可能性もあり、大いに注目していきたい事件です。

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