見出し画像

〜理不尽な突破力はミラン最大の武器に〜ラファエル・レオン

ロッソネロの攻撃の核に

 昨季、長い低迷期を乗り越えて11季ぶりのセリエA優勝を成し遂げたACミラン。フロントによる若手育成路線への変更が身を結び、多くの若手選手が成長、スクデット獲得に繋がった。そんな現在のミランの顔とも言える選手の1人がラファエル・レオンである。突出した身体能力を持ち、圧倒的な加速力で相手を抜き去るドリブルと相手のタックルをモノともしないフィジカルを武器にミランの左サイドに君臨。昨季はチームトップタイの11ゴールをマークするなど大活躍を見せてリーグの年間最優秀選手にも選出された。今のミランにとっては欠かすことのできない攻撃の核であり、今季も変わらぬ存在感でチームを牽引している。

期待を集める才能

リールで才能の片鱗を見せつける

 ポルトガル出身のレオンは母国の名門スポルティングCPでそのキャリアをスタート。クリスティアーノ・ロナウドやルイス・ナニなど多くのウインガーをビッグクラブへと羽ばたかせてきた同クラブですぐに才能の片鱗を見せつけていく。17-18シーズンにトップチームデビューを果たすと強豪ポルトとの一戦で元スペイン代表の名手イケル・カシージャスを相手に初ゴールを記録した。スポルティングでスターダムを駆け上がっていくかに思われたが、同シーズン終盤、スポルティングサポーターが選手やスタッフを襲撃するという事件が発生。多くの主力選手が退団を決意し、レオンも他クラブへの移籍を希望した。

 2018年夏に5大リーグの一つであるフランス・リーグアンのリールへと移籍。リールではその才能を如何なく発揮し、リーグ戦24試合に出場。4試合連続ゴールを含む8ゴールを記録した。当時10代だったのにもかかわらず、リーグアンで活躍したレオンに対してパリ・サンジェルマンのエースであるキリアン・エンバペを彷彿とさせるとして「ポルトガルのエンバペ」と呼ばれるようになり、将来的なビッグクラブへの移籍が期待された。

伸び悩んだ2シーズンを乗り越えて覚醒へ

ミラン加入3年目の昨季、遂に才能が覚醒

 2019年の夏。その才能にいち早く惚れ込んだのがミランであり、イタリア屈指の名門へと加入することになった。レオンに対してミランは3000万ユーロもの移籍金を投じており、当時財政の健全化を図っていたことを考えると高額な投資となった。初年度はリーグ戦31試合出場とコンスタントに出場機会を与えられたが、好不調の波が激しく6ゴール止まり。シーズン途中にズラタン・イブラヒモピッチが加入し、アンテ・レビッチを本領を発揮し始めるとベンチに回る機会が増えた。翌シーズンもその傾向は変わらず、怪我がちのイブラヒモビッチに変わって最前線で起用されることが多かったものの、強引すぎるドリブル突破によるボールロストや守備意識の低さが指摘され、指揮官のステファノ・ピオーリからの信頼は決して厚いものではなかった。チームは2位で8季ぶりのCL出場権を勝ち取ったが、レオンが未完の大器であることは昨季から変わらなかった。

 転機となったのは21-22シーズンだ。開幕から左サイドのレギュラーに定着すると得意のドリブルで相手を翻弄したかと思えば前線からの守備意識も改善。チームの勝利を優先するプレーが目立つようになり、伸び悩んだ過去2シーズンの姿はまるでなかった。左サイドの定位置をレビッチから完全に奪いとり、最前線に入った新加入のオリヴィエ・ジルーや同じ左サイドで縦関係を築いた快速サイドバックのテオ・エルナンデスとの連携も冴え渡り、リーグ屈指の攻撃陣を形成した。

 レオンが攻撃陣を牽引し、新加入のマイク・メニャンやフィカヨ・トモリらを中心とした堅守を武器に勝ち点を積み重ねていったミランはナポリや王者インテルと激しい優勝争いを繰り広げた。ナポリの失速によりシーズン終盤はインテルとの一騎打ちとなったが、緊迫した優勝争いの中で輝きを放ったのがレオンだ。フィオレンティーナ戦やアタランタ戦での先制ゴール、優勝をかけた最終節のサッスオーロ戦では圧巻の3アシストを記録。最終的に11ゴール10アシストとチームトップの結果を残し、11季ぶりのスクデット獲得に大きく貢献。セリエA最高の選手となり、眠っていた才能は遂に覚醒の時を迎えた。

今夏の去就に注目集まる

ミランで更なる活躍を期待したいが…

 迎えた今季もここまでリーグ戦でチームトップの8ゴールを記録。ワールドカップ後に調子を落とした時期もあったが、相手を置き去りにするドリブル突破は今季も健在。リーグではナポリに独走を許している状況だが、昨季はグループリーグで敗退したCLでは11季ぶりのベスト8進出に貢献した。市場価値が1億ユーロを超えるなど世界屈指のアタッカーとなったレオンの契約は来夏まで。契約延長交渉は難航しており、このまま延長されない場合は移籍金が得られる今夏のタイミングで移籍する可能性が高い。マンチェスター・シティやチェルシーなどプレミアのビッグクラブが獲得に乗り出しているが、彼の選択はどのようなものとなるのだろうか。まずは残りのシーズン欧州での戦いを残すロッソネロのエースとしてミランをどこまで導いてくれるのか、その行方に注目したい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?