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僕のメジャースプーンを読んで(自分で決めることが苦手な方におすすめ)

単純に面白かった。

他人の行動を制限できる能力を持つ少年が、偶然、その能力を使ってしまう。それを知った母親から危険な能力と言われ、使用を禁止されていた。
しかし、2年後、仲良くしている女の子が理不尽な目に遭い心を閉ざしてしまう。少年は、一週間後にその原因となった青年に会う機会を得る。禁止していた力を使いたいと少年は考えた。母親は、使って欲しくなかったけれど、同じ力を持つ先生(母親の叔父)のもとで、この力を勉強させることにした。さて、少年は、この力を青年に使うのか、使うとしたらどう使うのか、そして、青年と少女はどうなるのか。といった物語です。

 強制的に他人の行動を制限するということはどういうことか、理不尽な出来事に対してどう対処していくべきかといったことを、徐々に学んでいく少年の姿や感情の変化が見事に描かれており、グッと引きこまれました。先生は、少年に力の使い方や使った結果の予測を説明するだけで、どうするべきかは教えません。少年が自分で答えを出す手助けをするだけです。大人でも答えを出すのが難しい問題に対して、少年は悩み考えながら答えを出していきます。
 
少年の青年に対する思いは何なのか
「復讐」「報復」「正義感」それとも「意地」・・・。
少年の少女に対する思いは何なのか
「愛情」「友情」「同情」または「自己満足」・・・。

 読んで良かったと思った本です。理不尽な出来事の原因となった相手に対して、「完全忘却であるべき」「非情になって報復するべき」「相手の人生を背負う覚悟で復讐するべき」といった、いろいろな考え方が示される場面に、特に引き込まれました。少年の力は同じ人に一回しか使えないという設定も、この物語を深くするための重要な要素で合ったのだなと、読んだ後に理解しました。

 決まった正解のない問題に対して、どのようにアプローチし、どのように考えていくかを学ばしてくれる本です。答えを出すのは結局、自分であると再認識しました。正解のない問題を自分で考えることが苦手と感じている人にお薦めです。
作者:辻村深月 出版社:講談社 タイトル:僕のメジャースプーン
8/12 読了