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Charles Smith ロングインタビュー 2

前の記事はこちらです。

↑このインタビューの文字起こしをしました。

2020年10月9日

ヴィオニエ

インタビュアー(以下 I ): 今グラスにはKのヴィオニエ・アート・デン・ホードが注がれている

( I )もう一つ質問なんだけど、チャールズがワインを造った最初の年は、カスタムクラッシュ用の醸造施設はあったの?それとも誰かと仲良くなって使わせてもらったの?

チャールズ(以下C): その頃は、カスタムクラッシュなんてなかったよ。ワラワラヴィントナーズのGordy Venneri と Myles Andersonが貸してくれた。ワインを作り始める少し前、僕はワシントン州西部のBainbridge Islandに小さなワインショップを持ってたんだ。僕も生計を立てないといけないからね。その頃から仕入れのために、愛車のシボレー・アストロ・ヴァンに乗ってワラワラに通ってたんだ。そこでレオネッティやウッドワードキャニオン、ワラワラヴィントナーズのワインを買ってまた店に戻って販売してた。だから、僕はワイン生産者になる前に彼らのお客だったんだよ。僕がワインを造りたいと言ったときは、喜んで場所を貸してくれた。

ヴィオニエ・アート・デン・ホー

(C)ヴィオニエ。これはヤキマヴァレーのヴィオニエだ。玄武岩土壌、コンクリートと樽の両方で発酵。凝縮したピュアなヴィオニエだ。

なんでヴィオニエを造ったかというと、シラーからワイン造りを始めた当時の僕は赤ワインしか造ってなかった。何か白ワインを造りたいと思った時に、同じローヌ品種のヴィオニエを選んだんだ。その頃のワシントンにはルーサンヌやマルサンヌがなかったし、その頃の僕には失敗は許されなかった。ヴィオニエといえば、コンドリューの品種でとてもチャーミングなブドウだ。ワシントンではよく育った。

( I )これ、シラーとの混醸もしてる?

(C)してるよ。ワラワラのパワーラインヴィンヤードからビューティフルというワインを造っている。3%ヴィオニエだ。僕のローヌワインはすべて全房発酵。
ボルドーは全ては全粒発酵で、ブレンディングはしていない。もし素晴らしいブドウが同じ日に複数の畑から収穫できたなら、混醸するようにしている。たとえば、シラーカベルネも作っているけど、30%の全房シラーをタンクの底に入れて、上から全粒のカベルネを入れる。そして発酵させるんだ。

( I )全部で6つのブランドがあるんでしたっけ?

(C) K vintners, B Leighton, Substance(inc. vineyard collection), Sixto, Vino, Golden West.

( I )Pop-upはまだあるの?

(C)いや、今ちょっと停止中。実はふたつの新ブランドを同時に発表したんだよ。2020年の春に(笑)

自分達ではとても美味しいものが出来たと思っていたのだけど、何か問題が起こった時にマーケットに出て話を聞くという事が出来なかったんだ。だから、ちゃんと街の声が聴け、僕らの声がマーケットに届くようになった時にやり直そうと言う事になったんだ。

( I )Pop upはシャルドネ100%だし、すごく美味しそうなワインに思えたけどね。

(C)本当に良いワインなんだよ。シングルヴィンヤード、サステイナブル栽培のブドウで野生酵母使用、澱の上で熟成。

( I )この王冠というアイデアもとても良いと思う。今スグに飲みたくなるというコンセプトはわかりやすくていいよね。最初に見た時はペットナットかと思ったよ。このワインは本当に素晴らしいし、コロナのタイミングが悪かっただけだね。

ポップアップ売り切れ中

シャルドネ

( I )次はSIXTO

(C)ヴィオニエについて何も質問してないじゃないか?

( I )このヴィオニエは素晴らしいよ、中盤の酸味が素晴らしい。カリフォルニアでヴィオニエを造った時、しっかりとブドウが熟していないと、香水の様な香りがでるけれど、このワインは香りが強すぎる事もないし、過熟している感も出ていない。

(C)僕、個人的にはこのワインの2008年ヴィンテージを飲んでいる。リリースしてすぐにバランスが取れているワインがもちろん好きだが、深みもあり、バックボーンがしっかりしていて、時がたつにつれてそれが表れてくるワインが好きなんだ。

( I )SIXTOの名前の意味は何かあるのかい?以前に聞いた時は、SIXTOは古い畑のブドウを使っていると覚えているけど。

(C)いくつかの意味がこのブランドにはある。
昔、ワシントンにはシャトーサンミシェルという大きなワイナリーがあった。(もちろん今でもある)シャトーサンミシェルがなければ、ワシントンのワイン産業は無かったし、尊敬しているよ。
初期には彼らは色々なところに、色々な品種を植樹した、いくつかは、その土地と品種の相性が全く合わなかったし、いくつかは非常に良くあったんだ。そして大きな会社だから、莫大な量のワインが必要になる。するとブドウが年をとって収穫量が少なくなると、サンミシェルでは使い道がなくなるんだ。
僕らはそういう畑の素晴らしさを良く知っていたから、樹齢60年以上の素晴らしいテロワールをもつ違うキャラクター3つの畑に行って‘再生と復活’させたんだ。SIXTOのコルクにはこの‘再生と復活’という言葉が書いてある。
SIXTOはラテン語では6番目のと言う意味で、僕の6つ目のブランドでもある。そしてもう一つの意味は、僕の娘のシャーロットを当時の妻が妊娠しているときに、「シュガーマン・奇跡に愛された男」というミュージシャンのシクスト・ロドリゲスのドキュメンタリー映画を見たんだ。彼は一時行方不明になっていたが、また発見された。そして彼はずっと素晴らしいミュージシャンだった。彼の‘再生と復活’の物語だ。このSIXTOというブドウ畑も、ずっと素晴らしい畑ではあったが、一度は見放され、そして、‘再生と復活’された。これは情熱のプロジェクトなんだ。
僕のワインプロジェクトはどのブランドをとっても、お金儲けのために簡単に考えられたものではない。どれも存在するべき価値のあるもので、そうでなければ、なくなっている。こんな話は誰でも口にする事は出来るし、僕の事を選ばなくてもよい。それは君たちの判断だ。僕はこういう生き方を選んだ人間だ。

僕は52のシングルヴィンヤード・ワインを造っている。これはつまり僕は誰よりも先に朝起きて、誰よりも遅く眠りに就く、そして寝ている間に明日何をするか考えている。これが僕だ。

( I )52??それはすごいね。
これらのブドウ畑は60年以上も前にサンミシェルによって植えられ、ワラワラの歴史と共にあった。あなた達はさまざまな場所に触れているでしょう?あなた達以外にこんな感じでワシントン産業の歴史を記録している人達っている?

(C)僕はいつも自分だけのレースを走っているので、他の人がどんな事をしているのかを気にしたことは無い。もっと大胆な事を言えば、ワシントン州で僕らと同じような事をしてるワイナリーは他にはないと思事これは僕らがやると決めた事だ。

しかも、僕らと同じような生産量でこれを実行をしてる人たちは存在しないはずだ。

シクスト(お問い合わせください)

例えば、サブスタンスは、常にブラック・フルーツのキャラクターを持ち、100%野生酵母で発酵。サステイナブル栽培で、化学肥料・薬品は全く使用していない。オーガニック製品のみ使用。これを30万ケースというスケールで行っている人たちを僕は自分たち以外は知らない。僕らはアメリカワインの中でも非常にユニークだと思う。他の人たちのやり方が悪いとは言わないが、僕たちは僕たちのやり方が正しいと思っている。
僕たちのワインの中にはブドウ以外何も入っていないし、それを容器に入れて休ませて、マーケットに安全に届かせるためにほんの少しの酸化防止剤を加えている。ボトリング後のSO2量は18ppmでこれは非常に少ない量だ。僕らの還元的なワイン造りでは澱は非常に重要となるので、澱引きはしない。ワインは酸素に触れる事もないから、酸化を防ぐ事が出来、酸化防止剤を加知る必要がないんだ。

僕らは自分たちの歴史をつくりながら、アメリカの商業的なワインの歴史を書き換えているんだと思う。偉そうな事を言うつもりがないけど、これは事実だと思うんだ。

( I )いや、その通りだと思うよ。単品のワイン、サブスタンス・カベルネだけで30万ケース。50州だろ?

(C)そうだ、国内50州と37の国、このワインはどこでも手に入れる事が出来るんだ。

( I )SIXTOに戻って、次は、もっと売りにくいワイン オーク無のシャルドネについて聞いていこう。
え?これノン・オークじゃないの?新樽がないだけ?

(C)このシャルドネは、50%コンクリート、50%樽発酵、25%新樽だ。

( I )確かにオークの香りはあるよね。でももちろん、スーパー・オーキーでは全くない。

(C)MLF100%。緊張感があり、テロワールがある。モクシーヴィンヤードは石灰岩土壌で樹齢64年 モクシーはヤキマヴァレーの最北端にあり、この畑以外は周りにヴィンヤードはない。19エーカー(約7.6ヘクタール)シャルドネだけが植わっている。

( I )サンミシェルが植えた畑だよね。

(C)その通りだ。歴史的な事は良くわからないけど、このブドウを育てている人は知っている。この辺りは、昔モクシー・ヴァレーと呼ばれていたんだ。このモクシーと言う響きがカッコいいと思ってので、モクシーヴィンヤードと名付けた。僕らがこの畑を所有しているわけではない。僕らがやりたい事は、歴史を創ったブドウを各地に広めて行く事だ。新しい畑は自分たちで植えていくが、一方で同じような事をしたいと考えている生産者と一緒に活動していきたいとも思っているんだ。

パート3に続きます


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