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Charles Smith ロングインタビュー 3

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↑このラジオの文字起こししました。どんどん話が飛んでいくよー。


2022年10月9日

インタビュアー (以下 I ):今年のヴィンテージがどんな感じか、今、何が行われているかを少し話してもらえますか?

チャールズ(以下C):今年のオレゴン・ワシントン、たぶんアイダホも120年で最も気温の低い春で、一番早い夏の訪れだった。そして8月9月も今まで見た事がないくらい順調で本当にびっくりするほどだったんだ。そして今現在は通常よりも3週間も遅れている。ご存じのように、PNW地域では最終的に3週間遅くなると、12月に入ってしまうからそれはありえないんだ。

実際、今収穫は始まったばかりだ。これはかなり遅いはじまりだ。通常ならもうロゼは1から2週間前には終了しているはずだからね。

そして今日は少ロットのピノノワールを収穫した。自社ブドウではなく契約パートナーである、ブラウン・ファミリーのエンシャント・レイクスAVAの南、フレンチマンヒルズの畑のブドウだ。だから今はやっと収穫が始まったばかりなんだよ。

ピノノワール

ピノノワールの試飲
(C)キミ達はこのピノノワールをワイナリーの人間以外でテイスティングする最初の人たちのひとりだよ。

では、ゴールデン・ウエストヴィンヤードについて話そう。
ちなみに、今試飲しているサブスタンスPNは1か月前にボトリングしたばかりのものだ。まだ正式にリリースされているのものではないよ。

僕らのシャルドネは各評論家からとても良いスコアを評価が高い。僕らの畑は北緯47度にあり、大陸性気候、生育期間中の積算温度は、わずかに1度しかフランスのGEVREYと変らない。そして同じように50%が石灰石土壌にある。この場所はピノノワールにとって最適な地であると言うたくさんの証拠がここにあったんだ。もちろん大陸性気候と言うのもブルゴーニュと同じだ。

ただ、僕らの造っているのはブルゴーニュワインじゃない、ワシントンワインだ。とはいえ、比べられるのはどこだ?

1960年代にオレゴンでピノノワールを造り始めた時に、多くの人が、クレイジーだと言ったね。でも今では多くのワイナリーが、素晴らしいオレゴンスタイルピノノワールを造っている。僕らはそのほんの少し北にあるだけだ。

70年代の話に戻ると、ワシントンでは、寒くて雨が多くて、乾燥していて皆がリースリングを造っていると思われていた。それがどこであろうと、オレゴンでも、ワシントンでもカリフォルニアでもピノノワールなんて作れるはずがないと思われていたんだ。

(C)だが違う!ここで出来るさ。カナダのブリティッシュコロンビアじゃないんだ。47度線上にあり、ブルゴーニュと同じ線上にあるし、他にもたくさんの理由がある。

僕らは、7つのブロックを造り、大きなシングルヴィンヤードでサステイナブル栽培、野生酵母、100%樽発酵、澱の上で熟成、その後休ませてボトルに詰めるだけだ。これが本物のワインだよ。76もの添加物を入れてる他のワインとは違うんだ。ワインとは中身はブドウだけでそれを休ませてボトルに詰めるだけのものだと思わないかい?
何が敬神に次ぐ美徳であるのかはわからないけど、純粋さがそうなんじゃないのか?

( I )あなたの畑がワシントンで唯一のピノノワールだよね?

(C)違います。ただ今しっかりと実在しているのは、うちの畑だけだと思う。小さな良いワイナリーがピノノワールを造っているけど、どこが成功しているのかはよくわからない。けど、

コロンビア・ゴージュのワシントン側ではシンクラインのジェームス&ポピーや、Analemmanのステーヴンもとてもいいワインを造ってる。あとはレイク・シャラーンでもほんの少しだけピノノワールを作ってる。
僕らが彼らと圧倒的に違うのは、僕らは7ブロック、500エーカー(202ha)の広大な広さで育てている。

これをグラスに入れると、ピノノワールの香りと味がして、シルキーでたったの17.99ドルなんだ。ありえないよ。アメリカ中どこを探しても、ブドウしか使っていないこの価格のピノノワールは存在しない。僕は自分の全てをかけて働いてこのワインを造っている。だから誰かが一生懸命働いて、稼いだお金でこのワインを購入してくれて、その対価として受け取った誰かのお金を無駄にする事なく使ってまた良いワインを造りたい。これが僕らの仕事への献身なんだ。

ブドウ畝は7x4フィート(2.13x1.22m)1エーカーあたり5tの収穫量という少なさだ。これで18ドルのピノノワールなら誰もが手に入れたがるハズだよ。

( I )収穫は手摘み?マシン?

(C)マシン収穫だ。今のマシンは本当に素晴らしいんだ!

( I )いやいや、マシンだからって言い訳しなくていいんだよ。最新の機械収穫は本当に素晴らしいと私たちはわかっているから。でも聞いてる人たちにとっては、マシンであると知る事で、この価格が出来る事が理解できるんだ。最近の手摘み収穫はありえないくらい高額だからね。

(C)とにかく、僕は普通の人たちが、普通の価格で化学まみれじゃなく、‘美味しいワイン’を簡単に手に入れる事が可能だ。というのが重要だと思うんだ。

私達のように毎日ワインを飲む人間にとってこれは重要だと思だよ。50ドルのワインなんて飲めないよ。

( I )17ドルなら、、もしかしたら一日2本開ける事が出来る日もあるかもね。

( I )ちょっと、畑についてもう少し話そう。いつ植えた?クローンは?

(C)2016年植樹。ポマール、777、115、2A、自根だ。
とにかく、、、めっちゃいいだろ?

ワイン好きにとっても、このワインのコスパはスゴイと思うし、造る方もあらゆる事が出来ると言うの素晴らしい事なんだ。ちなみに通常はボトリングしてすぐのワインを誰かにテイスティングなんてさせないよ。このワインは12月1日にリリースされる。あと1か月もしたら市場にこのワインが溢れる事になるんだ。

サブスタンス ピノノワール

ラッキーな事にこの「元素周期表」の様なラベルのサブスタンスはカベルネが大成功した。消費者はこのラベルを見れば、これはコスパの良い美味しいワインだと認識してくれる。そして今度は同じデザインのピノノワールで挑戦する。

色んなレストランでグラスでも提供される事になる。

今、このピノはボトリングされたばかりだから、後はどんどん複雑味がでてまろやかになり、ますます香りが高くなる。

( I )僕らや一般人がレストランでワインリストを見て「良いワイン」を飲もうと思ったら、大体は小さい生産者の造るメーリングリストを待たないと飲めない様な特別なワイン選ぶ必要がある。でもこのワインは、全国で見つける事が出来るようになる。実際にレストランでこのワインがグラスで販売されているのを見れば、他の全てのワインの常識を壊すことになるよ。

(C)ありがとう!そんな風に言ってくれるのを本当に感謝するよ。
僕自身にも100ケース程しか造らず、99点や100点を常にとっているワイン、たとえばロイヤル・シティー・シラーの様なワインがある。これは140ドルだ。そんなに簡単に買えるようなものじゃない。でもこれは、皆のワインじゃない。普通の人はポケットに140ドルは入ってないしね。
皆、「良いワイン」が飲みたいんだ、美味しいワインを飲む権利があるんだ。

もしワインメーカーが小ロットで素晴らしいワインをつくる才能と誠実さとワイン醸造チームを持っているのならば、その規模をただ大きくして沢山の素晴らしいワインを造る事が出来るはずだと僕は信じている。それが僕の仕事だ。

僕は幸運だった。5000ドル借金して車ひとつでワインをつくった。

( I )その車はもう、残っていないよね?

(C)実は、5年前に、うちのスタッフが僕の誕生日プレゼントに当時の車がどこかにあるか、探してくれてけど、なかったんだ・・

最初の6年間、僕は全部ひとりでやっていた。経理の仕事は嫌だったけどね。とにかく、ワインを造ると、愛車にワインを詰めるだけ積んで売りに歩くんだ。カスケード山脈をぼろ車で、ワインをたくさん積んで越えるのは怖かったよ。最初にたどりつくのはWest Seattle Wine Cellarsでそこで15ケースくらい荷を下ろして、そこからK vintnersを売り歩くんだ。週末になるとまたワイナリーにもどってテイスティング・ルームを開ける。
時間はかかったけど、色んな人、ワインを知らない人、家族連れ、カップル、たくさんの人々と話をした。人々が好きなのはサッカーだったり、アメフトだったり、旅行だったり、ワインは好きな事の4番目くらいにリストされてたかもしれない。それでもいいんだ。
皆にめちゃめちゃ美味しい15ドルのワインを知る権利があった。僕はそんなワインを造りたかったし、造れると思ってた。なぜって、ワシントン州はそれが出来る場所なんだ。長い冬があるから、病害の心配もない、土地も広い、テロワールもある。そして水がある。ワシントンには良いブドウが育つんだ。

( I )そう、ワラワラではそれに驚かされたんだ。皆ワシントン州ワラワラは乾燥した土地で干ばつの町だと言う。でも見て!水が豊富にある!庭に茂みがあるし、なんだったら裏庭に小川が流れている1分に60ガロン(227L)湧き出すっていうんだよ!水だらけじゃないかこの町は!

(C)僕らの9000エーカー(3642ha)のピノノワールの畑の真ん中には、専用の井戸がある。僕らはその中でオーガニック栽培をしているんだ。隣人の畑には水がないのでドライ・ファーミングをしてる。ブドウだけじゃなくリンゴ園や小麦畑もだ。もしも水が無くなった時のことを考えないとダメだからね。僕らの畑にはブドウ以外何もない。3600haの真ん中の井戸水は実際には1.6㎞離れたコロンビアリバーの水で満たされてるんだ。もしも僕がブドウだったら絶対この畑で育ちたいよ。ワシントン州の暮らしはいいんだよ。


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