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わたあめ踏まれちゃった。
まえがき
(投稿時には私が睾丸摘出術をしてから6日ほど経過していますが、以降の本文は私が手術をする数日前に、色々と限界なメンタルで書いたものです。少しの誤字脱字訂正とともに公開します)
睾丸摘出術に際し、私の性自認について考え直しました。
考えているうちに、よくわからなくなってしまいました。
私って、なに。
わかりません。
わかりませんし、疲れました。
空に、わたあめが浮かんでいます。
誰かのざらめが溶けて浮かぶもの。
見て、私のわたあめもそこにある。
でも。
君はわたあめを見たことがなくて。
触れたこともなくて。
味わうことすらない。
きっと、これからも。
君がそれを雲と呼ぶなら、ずっと。
性自認「プレイヤー」
まず、私の性自認について、このような説明はいかがでしょうか。
性別をまず男女二元論的に捉え、一本の線を横に引き、一方の端っこを『男性ポイント10』、もう片方の端っこを『女性ポイント10』として、それぞれの真ん中を「ポイント0の中性」とします。
私の中の体感として、私の中に、『男性ポイント5の私』『女性ポイント5の私』がいて、更には、『これらを俯瞰して出し入れするポイント0中性の私』が居ます。
男性と女性の性自認をカードゲームの手札に見立てて、好きな時に意識的に出している感覚です。
一方の手札を外部に向けて出している間も、手の内にはもう片方の手札が残っていて機能しています。
「手札を操る冷静な私」がいて性自認をコントロールしているんだ。
そんな確信を胸に言語化し、あるときこれを言葉に出して他人に説明する機会に恵まれました。
しかし他人に上のような理屈を喋る時、猛烈な違和感に襲われます。
「これは『理屈』すぎる」
「これは『固形』すぎる」
私が性別について意識するとき、大抵は情熱的だし制御不能でした。
男性ポイント5の手札を切ろうとしてるのに、男性ポイントが2しか出力されなくて、あるいは9や10も男性を感じてしまって困惑するような場面が何度もありました。
制御が可能なように錯覚していたのは、真ん中にいるのが「性自認の手札を使うプレイヤーの私」ではなく「自分事を他人事のように感じることで心を守ろうとした防衛機制の私」だったからかもしれません。
私に『理屈』と『固形』を語らせたものの正体を探っていきます。
フルイド?
制御できないならジェンダーフルイド?
それを名乗って心が落ち着く可能性は高かったです。
私の語りはいかにもフルイドだ。
けれど、それは違うんだという気持ちがこみ上げてきました。
確かに揺れ動いてはいるけど、同時にちょっぴりコントロールもできている。
フルイドを名乗ってしまった途端に、私の中の「コントロールできているはず」という虚栄心を手放すことになりそうで怖い。
それは性別ではあるけど、男や女という言葉以外の説明が必要だ。
犬や猫、消火栓の所在を示す標識、ロボットや恐竜、青空、雲、わたあめ、桜、桜の木の下の泥、春夏秋冬や花鳥風月、雨やみぞれや雪や吹雪、私の性自認を語るのに何が適切だろう。
これら男女以外あらゆる事象や品物が男女と平等に並べられている世界がよかったのに。
もしもそんな世界だったなら、私は「桜」と「女」の二択で気持ちよく悩めたと思う。
けれどトランスヘイターが「なら僕は猫ちゃん自認で〜す」と嘲笑し、アライがそれに「猫自認などありはしない」「猫相応の生活実態を積め」と怒るたび、私は口を開くことができなくなっていきました。
なんなんでしょうね、これ。
性別はどこまでも自由だと思いますし、私はそのように感じていますが、それはヘイターからもアライからも賛同を得られない孤独な道でした。
わたあめのようにふわふわしたお話でしたね。
私をぎゅっと握って「お前はもっと『固形』になれ、ざらめのように固くなれ。さもなくば苦労するぞ」という正しいアドバイスを出したくなりましたか?
私はこのわたあめをふわふわのまま楽しみたいんです。
だから、心を守るために名乗らせてください。
「私はノンバイナリー当事者です」
お前はざらめだ。
思い出します。
私は、可愛くなりたい。
可愛くなりたいだけなのに。
「可愛くなりたい」と呟けば、歪んだやまびこが「パス度を上げたいのなら」と、正しい顔をして優しく親切にしてくれました。
私の「可愛くなりたい」は峠の闇に溶けてなくなっちゃったみたいで、今も探しているんですが見つかりません。
探しているんですよ。
「つまりパス度を上げたいんですよね? それなら……」
違う。
「私は女性ホルモンを打っていて」
「MtFの方ってことで合ってますか」
違う。
いや……これは私の自己紹介の言葉が悪かったと思うけど……。
もう私のわたあめはぐちゃぐちゃに踏まれていて、よくわからないんです。
灰色の空を泳いで砂利まじりの雲を必死にかき集めているだけで一日が終わって、すごい徒労です。
みんながキラキラのざらめの星空で揺るぎなく飾っているのに、私の手には泥が握られている気分でした。
「私は今、MtFと自信を持って答えられる状態にありますが、移行初期は自信がなくてノンバイナリーを自認していたんですよ」
黙れ。
「私の場合、睾丸摘出から一気に移行が進みましたね…」
黙れったら。
数日後に睾丸を摘出します。
私は、MtFですか?
わたあめがいい。
わたあめです。
ふわふわしたものをふわふわしたまま受け止めたいだけのことが、こんなにも遠い。
ざらめでないのは、子供でしょうか。
この世界はバイナリージェンダーと「大人」「確信」の言い換えが成立し、ノンバイナリーと「子供」「迷い」の言い換えが成立するかのように振る舞います。
私は私を把握するのに少し時間が掛かっているだけで、ノンバイナリーであることについては何も迷ってなんかいない。
はぁ……。
手術、頑張ってきます。
あなたに認めてもらうためではなく、自分を認められるようになるためでもなく、つまりそれは……………。
眠くなってきました。
おやすみなさい。
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