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トランスメディックス(TMDX)

どうも、おらうです!
トランスメディックス(TMDX)について調べてみました。
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それではどうぞ!


概要

トランスメディックス(TransMedics Group Inc. )は、臓器移植治療に革新をもたらす医療技術企業であり、特に末期の心臓、肺、肝臓の機能不全患者を対象としています。
同社の主力製品「Organ Care System(OCS)」は、臓器を体外で生理学的な状態に保ちながら、移植までの保存、評価、最適化を行う技術を提供します。
従来の冷蔵保存技術では酸素供給ができず、臓器に損傷を与える可能性がありましたが、OCSは温かい血液で臓器を循環させることで、臓器の質を保ちつつ、移植前の評価が可能になりました。
また、同社は「National OCS Program (NOP)」を通じて、米国内の移植センター向けに一貫した臓器輸送と臨床サポートを提供し、臓器の使用率と臨床結果の改善に努めています。
最近では、輸送サービスを自社の航空機で提供するなど、独自の物流ネットワークの構築も進めています。

主力製品「OCS」

臓器移植の現状

2023年のアメリカにおける臓器提供と移植は、全体で46,000件以上の移植が行われ、前年と比較して8.7%の増加しました。
特に、16,000人以上の亡くなったドナーから臓器が提供され、これにより多数の移植が実現しています。
また、6,900件以上の生体ドナーによる移植も行われており、特に腎臓と肝臓の移植が主流です​。
一方で、現在も10万3000人以上が臓器移植を待っており、1日に17人が臓器提供を待つ間に亡くなっているという現実もあります。

また、図のように提供された臓器が効率的に活用されていない課題も残ります。

  • 全体の提供者数(Total Deceased Donors in 2023):
    16,336人 (内訳:DCD Donors 5,894人 / DBD Donors 10,442人)

  • 実際の移植件数:
    肺(Lung):

    2,996件 (内訳:DCD Donors 2,688件 / DBD Donors 308件)
    心臓(Heart):
    4,039件 (内訳:DCD Donors 3,437件 / DBD Donors 602件)
    肝臓(Liver):
    9,546件 (内訳:DCD Donors 7,851件 / DBD Donors 1,695件)

DCD Donors:心停止後のドナー
DBD Donors:脳死後のドナー


企業概要

  • 会社名: TransMedics Group Inc.

  • 設立年:1998年

  • 本社所在地: マサチューセッツ州、アメリカ

  • 業界: 医療機器

  • CEO: Dr. Waleed H. Hassanein

  • 従業員数: 584名

  • ミッション: 臓器移植の質とアクセス性を向上させ、患者の生命を救う。

  • 目指すビジョン: 革新的な臓器保存技術により、移植医療の標準を変革し、より多くの臓器を移植可能にする。

Transmedics 本社

創業について

背景

TransMedicsは、臓器移植のための新しい保存技術の必要性から生まれました。
従来の冷蔵保存技術では、臓器が酸素供給を受けられないため損傷しやすく、移植後の合併症を引き起こすリスクが高いという問題がありました。
これを解決するために、温かい血液を循環させながら臓器を保存・評価する技術が求められ、1998年にWaleed H. Hassanein博士によって設立されました。
彼のビジョンは、移植医療に革新をもたらし、より多くの患者に移植を提供することでした。

創業者

Waleed H. Hassanein
Waleed H. Hassanein博士は、TransMedicsの創業者であり、現在もCEOを務めています。
彼は医師であり、心臓移植を専門とする背景を持っています。
彼は、臓器保存技術の限界を感じ、より良い臓器保存法を提供するためにTransMedicsを設立しました。
博士の技術革新により、OCSは世界で初めて複数の臓器に対応する移植保存システムとして、FDAの承認を受けています。

Waleed H. Hassanein

沿革

  • 1998年:
    Waleed H. Hassanein博士により、TransMedics Group Inc.が設立され、臓器移植保存技術の開発に着手。

  • 2006年:
    Organ Care System (OCS) Lungのプロトタイプが開発され、最初の臨床試験が開始。

  • 2011年:
    OCS Heartが開発され、初の臨床試験に成功。

  • 2015年:
    OCS Liverの開発を完了し、初の臨床試験に進む。
    これにより、同社は複数臓器対応の保存システムを提供できるようになる。

  • 2018年:
    OCS LungがFDAの承認を取得し、米国内で商業化が開始される。
    これにより、臓器移植保存の新たな基準が確立される。

  • 2019年:
    OCS HeartがFDAから承認を受け、商業化が進む。

  • 2022年:
    National OCS Program (NOP)が正式に開始され、臓器移植の物流ネットワークが強化される。

  • 2024年:
    OCS技術の商業収益が過去最高を記録し、全臓器の移植件数が大幅に増加。


企業の独自性

  • 多臓器対応の唯一のプラットフォーム:
    TransMedicsは、心臓、肺、肝臓の保存が可能な唯一の臓器保存技術「Organ Care System (OCS)」を提供します。
    複数の臓器に対応することで、移植機会を大幅に増加させる技術力を持ちます。

  • 独自の臓器輸送ネットワーク:
    National OCS Program (NOP)では、同社が所有する航空機による臓器輸送を行い、移植センターに迅速かつ安全に臓器を届ける。
    これにより、従来の輸送サービスに比べて臓器の状態を維持しやすくなり、夜間移植の件数を大幅に減少させることができる。

  • FDA承認と臨床エビデンス:
    OCSは複数の臓器に対応する唯一のFDA承認済み技術であり、臨床試験によってその有効性と安全性が実証されている。

  • 持続的な成長と革新:
    同社は2024年にもさらなる成長戦略を掲げ、次世代の臓器保存技術を開発中​。


事業セグメント

Organ Care System (OCS)

OCSは、移植臓器を体外で温かい状態に保ちながら、酸素や栄養を供給し、移植前に臓器の機能を評価・最適化する技術です。
現在、3種の臓器に対応しています。


  • Heart(心臓)
    OCS Heartは、移植を待つ心臓を体外で維持し、心機能を評価できるシステムです。
    移植までの時間が長くなっても、心臓を生きた状態で保つことで、移植後の心機能を保ち、合併症のリスクを低減します。

  • Lung(肺)
    OCS Lungは、移植前の肺を温かい状態で保存し、機能を維持しながら評価するシステムです。
    これにより、従来の冷蔵保存と比較して、臓器損傷を防ぎ、移植成功率を向上させます。
    さらに、利用可能な臓器の範囲を広げ、移植待機リストにある患者の命を救うことに貢献しています。

  • Liver(肝臓)
    OCS Liverは、肝臓の保存と最適化を行うシステムで、胆汁の分泌を維持しながら肝臓の状態をチェックします。
    これにより、肝臓移植の成功率が上がり、移植に適さなかった臓器も利用可能になります。

Organ Care System (OCS)
2023年のHeart(心臓)、Lung(肺)、Liver(肝臓)の移植実績は前年比130%増


National OCS Program (NOP)

NOPは、OCS技術を活用し、TransMedicsが提供する臓器保存と輸送の包括的なサービスです。
自社航空機を用いた輸送と臨床サポートを提供し、移植の効率化と成功率向上を目指しています​。
以下が特徴となります。

  • 臓器の保存と輸送
    NOPは、Organ Care System (OCS)を用いて、臓器を温かい状態で保存し、移植センターに安全かつ迅速に輸送するプログラムです。これにより、冷蔵保存に比べて臓器の質が維持され、移植の成功率が向上します​。
    NOPでは、自社の専用航空機を使用して、米国内の移植センター間で臓器を輸送します。
    この航空輸送ネットワークは24時間365日稼働しており、迅速かつ効率的な臓器輸送を可能にしています。
    これにより、移植までの時間を短縮し、夜間の手術も減少させています​。

  • 臨床サポートとトレーニング
    輸送サービスにとどまらず、移植センター向けに臨床サポートやトレーニングも提供しています。
    TransMedicsの臨床スタッフが、OCSの操作方法や臓器の適切な取り扱い方法を医療チームに指導し、臨床成績の向上に貢献しています。

  • 臓器保存技術の標準化
    TransMedicsの技術と臨床サポートにより、臓器移植のプロセス全体を標準化し、臨床結果の安定性と移植成功率を向上させることを目指しています。
    これにより、臓器提供と移植のプロセス全体が効率化され、より多くの患者に迅速な治療が提供されます​。

  • 移植の拡大
    従来は使用できなかった臓器(特にDCD臓器)を利用可能にし、移植件数を大幅に増加させています。
    これにより、移植待機リストにある患者に対する治療の選択肢が拡大し、臓器移植の需要に応えることができます​。

  • コスト効率の向上
    NOPは、移植にかかる固定費を削減し、各移植センターが必要とする臓器保存と輸送のリソースを最適化します。
    これにより、医療機関にとってコストパフォーマンスの高いサービスを提供し、医療経済の改善に寄与します。

NOPの自社専用機 現在17機を保有。
16ヶ所に拠点を持ち、NOPの対応範囲を拡げています。
NOPの導入によって臨床結果が改善されたこと移植片機能不全(PGD)の発生率は減少傾向にあります。
Severe PGD-LV(重度の移植片機能不全)/ Moderate PGD-LV(中等度の移植片機能不全)

ターゲット顧客

TransMedicsのターゲット顧客は、臓器移植手術を行う主要な病院や医療センターです。
特に、米国や欧州の大規模な移植センターが中心で、移植件数が多い病院や研究機関が含まれます。
また、国際的にも移植技術の標準化を目指しており、世界中の医療機関に向けて製品を提供しています。
さらに、末期臓器不全に苦しむ患者やその家族も重要な対象となり、彼らにとっては生命を左右する革新的な技術です。


顧客にとっての価値や投資対効果 (ROI)

OCSは、従来の冷蔵保存法に比べて大幅に移植成功率を向上させ、臓器移植待機リストにいる患者に対する価値を高めています。
医療機関にとっては、移植成功率の向上による医療コストの削減が期待でき、患者の回復率向上による長期的な医療費の削減が可能です。
また、同社の物流ネットワークを利用することで、臓器の輸送にかかる時間とコストを効率化し、医療機関の運営コスト削減に貢献します。


ビジネスモデル

  • 臓器移植技術の革新を軸に構築されており、臓器保存と最適化を実現するOrgan Care System (OCS)を提供しています。

  • OCSは唯一の多臓器対応システムであり、FDAの承認を取得しており、冷蔵保存に代わる画期的技術として移植可能な臓器数を大幅に増加させています。

  • 主な収益源は、OCSとその一部として提供される消耗品の販売(パフォーマンスセットやソリューション)となり、各臓器ごとに一回限りの使用が前提となります。

  • National OCS Program (NOP)を通じた専用航空機による臓器輸送サービスと臨床サポートにより、迅速な臓器輸送と保存を実現しています。

  • 複数の収益チャネル(消耗品販売と輸送サービス)を確保し、持続的で安定したビジネスモデルを展開しています。


成長戦略

短期目標 (Near-term Goals)

  • TMDXの航空および物流の拡大:
    臓器輸送を強化し、より効率的な移植プロセスをサポート。

  • OCS Heart 温体灌流の臨床プログラム:
    OCS Heartの温灌流を用いた臨床試験を実施し、さらなる利用促進を目指す。

  • OCS Lung 臨床プログラム:
    市場浸透を加速させるためのOCS Lungの臨床試験を推進。

  • OCS Heart 冷酸素灌流の臨床プログラム:
    新たなFDA臨床適応をサポートするための冷灌流の臨床プログラムを実施。

長期目標 (Long-term Goals)

  • NOP OUS (国際展開):
    National OCS Programをアメリカ国外にも展開し、グローバルな移植件数の増加を目指す。

  • OUS Reimbursement (国際的な償還制度の確立):
    アメリカ国外での医療費償還制度を確立し、持続可能な収益基盤を構築。

  • 次世代OCSの開発:
    より革新的で高度な臓器保存技術を提供する次世代OCSの開発を進める。

TransMedicsの成長戦略

ESGへの取り組み

2023年に、ESGレポートを発表し、企業活動が環境や社会に与える影響を最小限に抑えるための取り組みを強化しました。
特に、臓器移植における倫理的責任や、患者の福祉に対する貢献が社会的責任として重要視されています。
さらに、医療従事者への教育とトレーニングプログラムを通じて、安全で質の高い医療提供を実現しています。
また、同社は高いガバナンス基準を維持し、透明性のある経営を行っています​。


競合他社

  • Paragonix Technologies
    Paragonixは、心臓や肺などの臓器を冷蔵保存するための技術を提供しています。
    TransMedicsのOCSが臓器を温かい状態で保存できる点とは異なり、Paragonixは従来の冷蔵保存技術を改良したシステムを提供しており、特に短距離輸送に強みがあります。

  • XVIVO Perfusion
    XVIVOは、肺移植技術に特化したスウェーデンの企業で、臓器の温かい保存技術を提供しています。
    TransMedicsと同様に臓器を体外で生理学的な状態で保存できる技術を持っています。

  • OrganOx
    OrganOxは、イギリスに本拠を構え、肝臓を温かい状態で保存する技術を提供しています。
    肝臓移植のための保存技術において、TransMedicsと同様の温保存技術を持っています。


業績

売上高

2024年第2四半期:1億1430万ドル(前年同期比 117.8%増)
2023年通期:2億4160万ドル(前年比 258.4%増)

売上総利益(率)

2024年第2四半期:6926万ドル (売上総利益率 61%)
2023年度通期:1億5410万ドル (売上総利益率 63.8%)

営業利益(率)

2024年第2四半期:1250万ドル (営業利益率 10.9%)
2023年度通期:50万ドル (営業利益率 0.2%)

純利益(率)

2024年第2四半期:1219万ドル (純利益率 10.7%)
2023年度通期:マイナス2500万ドル


現在の株価(2024/9/22現在)

過去1年のチャート

株価は年初来から109%増となっています。


まとめ

  • 革新的な臓器保存技術:
    TransMedicsは、心臓、肺、肝臓の臓器保存に特化した「Organ Care System (OCS)」を提供し、移植まで臓器を最適化します。
    臓器を温かい状態で保存できる技術で、従来の冷蔵保存技術に比べて移植の成功率が向上します。

  • National OCS Program (NOP):
    TransMedicsは専用の航空機と臨床サポートを通じて、迅速で安全な臓器輸送を提供しています。
    移植の効率を高め、夜間移植の削減にも貢献しています。

  • 持続可能なビジネスモデル:
    OCSと消耗品(パフォーマンスセットやソリューション)の販売を基に複数の収益チャネルを構築し、臓器保存技術の提供に加えて臓器輸送サービスも収益源となっています。

  • 競合優位性:
    TransMedicsは、唯一の多臓器対応の温灌流システムを提供し、FDAの承認を受けており、臨床試験に基づいた信頼性で競合企業に優位性を持っています。

  • 顧客への価値:
    OCS技術により、移植成功率が大幅に向上し、医療機関にとっても長期的なコスト削減に貢献しています。


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