アンセムの聴こえない場所(新作8首)
八月の熱に刺される通勤路もう産まないと決めた体が
祈ります、あなたの余暇の充実を。人は記憶でできているから
解像度低い言葉を投げつけて終わらせたいと願う夕暮れ
義実家の庭を歩めば陽は射してきゅうりの花がぽたぽた落ちる
アンセムの聴こえぬ部屋に逃げこんできりりと引いたリップスティック
明日終わる恋だとしても花束をくれるあなたと眠りたかった
まろびつつ走れば月夜 幸福の絶対量は決まっていない
県境で反復横跳びするひとにあなたがかけるうららかな声
生きているうちに第二歌集を出すために使わせていただきます。