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「〇〇の良さを知って欲しい」は引っ込めて、ユーザーのことを考えたクリエティブを。

「電気海月のインシデント」はありがたいことにクラウドファンディングでもたくさんの人に支援いただきました。2018年の公開からこの1年半で、計13箇所で上映。アジアフォーカス・福岡国際映画祭にも出品させてもらったし、予想していたよりもはるかにたくさんの人たちに見てもらっているなーと感じます。
ハッカー×探偵×アウトローなんてニッチなテーマだけど、多くの方に広まってくれたことはかなか誇ってもいいかなと(笑)。

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だけどもし「もっとハッカーが増えて欲しい!」とか「ハッカーの面白さを知って欲しい!」とかを作品中で前面に押し出していたとしたら、ここまでいろんな人が味方してくれることはなかったのかな、とも思っていて。

映画のプロデュースをはじめるにあたって、決めていたことがあります。それは、「とにかく“どエンタメ”にする!」ってこと。
『ヒカルの碁』とかってやっぱりすごいですよね。あれはたしかに碁をテーマにした漫画なんだけど、「碁の面白さを伝える漫画」じゃなくて、純粋に少年漫画のストーリーとしてめちゃくちゃ面白い。だから読み手の方が気になって、勝手にどんどん読みすすめちゃう。そして結果的に囲碁をやる人が増えたわけです。「囲碁普及協会」、みたいなのが頑張ってもあんなに広まることは無かったでしょう(笑)
電クラも、そういう感じにしたかったんです。テーマも裏テーマもメッセージも作り手側にはたしかにあるんだけど、それを前面に出すってことは絶対にしたくなかった。
たとえば今回、作品の舞台は全編福岡です。だけどラーメンとか福岡タワーとかをこれ見よがしに映しちゃうと、もう致命的にダッッサいわけで(笑)。
そういうことをするんじゃなくて、徹底的に、見る人にとってメリットがあるようなものにしたかった。

社会を変えよう!って言ってる人とかいわゆるソーシャル系とかの人って、自分たちが良い!って思ってる価値観や正義を一方的に世の中へ向けて押し出しちゃいがちなんですよね。
気持ちはめちゃくちゃわかるんですけど、デザインとかクリエイティブに携わる人はそれをやっちゃダメです。たとえば地域活性のイベントひとつにしても、「地域の良さを知って欲しい!」って一方的に押し付けるだけでは、単なるエゴでしかないんですよね。
作者が多くを語るんじゃなくて、作者以上に熱を入れて語ってくれるファンが出てくるように仕掛けていかなきゃいけないな、と常々思っています。「広げる」じゃなくて「勝手に広がっていく」っていう感じ。

さて、次はどんな映画を作ろうかな。
「ゾンビvsハッカー」とかにしようかな。(映画作りは疲れたんで多分やらないです(笑))


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オレンジの人/近藤 悟
ロックバンドXanaduを解散後、大学の先輩でもあるメンバーの1人古林と共に起業。
子どもプログラミング教室ITeens Lab(アイティーンズラボ)を立ち上げ2020年現在14教室を運営中。
2017年にはITキッズフェスティバルEXA KIDSを立ち上げ、2018年2019年と開催。述べ約5000人が参加。
2018年にはハッカー映画『電気海月のインシデント』のプロデューサーに就任し、2019年5月に横浜・福岡のイオンシネマにて上映。福岡ではロングラン上映になるなど好評となった。
通称「オレンジの人」

(聞き手・編集:Keiko Ota)


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