見出し画像

決別、覚悟

6/2、木曜日、晴れ。

私のこころはもう少し薄暗い目覚めであったが、お天道様はそんなこと知らん顔で見下ろしていた。

本日は、名古屋で新卒採用の最終面接があったのだ。

あまり深く考えずに応募していて、ここもどこかで私を落とすのだろう、などと考えながら、いつの間にか最終面接だった。

正直、ここに入りたいのかわからない。そもそも社会に出るのがイヤなんだ。

御託をならべ、自己弁護を重ね、それらしく組織に身を置くことを避けてきた私は、面接開始から90分ほど経ち、机上に差し出された内定通知書を複雑な思いで眺めていた。

…この人たちはいい人だ。自分のことをよく見てくれている。客観的な評価を下していて、いいところも悪いところも伝えてくれたうえで、「一緒に働きたい」といってくれている。

なのになんで、余計もやもやしてる。  


学生生活をのんびり過ごしていた京都と決別し、モラトリアムに手を振って、「社会」に放りだされる。責任の生じる「仕事」が待っている。


…行かないと。



なんだか今まで曖昧に、考えているようで考えないように、「やり過ごしてきた」「社会」が、ぱっくりと口を開いて待っている。

人が良く、こんな自分のことを受け入れてくれるWEB広告系企業のメンバーたちは、私にはやく「覚悟」を差し出せと言っている。



新幹線はあっという間に着いた。

京都に到着したという機械的なアナウンスは、なぜかひどく私の感情に訴えかける。

…カバンに荷物を押し込み、急いでホームに降り立つ。

地下鉄に乗り換え、最寄り駅に着いた。

何故だ。私はもう泣きそうだ。

改札を行き交うサラリーマン、チャラい兄ちゃん、イチャつくカップル。

ホームから地上に出るまでの無機質な階段。



ただ、過ごしていただけの京都なのに、決別が脳裏をよぎり、覚悟を強いられたとき、愛が込み上げてくる。


なんて都合のいいヤツ。


景色を見ながら、なるべく見ないように、住んでいるアパートの前まで走った。

植え込みの前に座り込んでこれを書いている私は、また自己嫌悪で薄暗いこころを持て余している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?