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体育授業プラン〈シュートボール〉

●もっとも基本的なボールゲームプラン

 低学年からたのしめるような,「ボールゲームの初めの一歩」的なゲームって,どんなものでしょう?
 ぼくがたどりついたその答えがは,〈シュートボール〉です。ぼくは,『たのしい授業』で紹介されているルール通りではやっていないのですが,基本的なやり方は同じで実施しているので,名前もそのまま〈シュートボール〉という名称でやっています。
 高学年でも十分たのしめますし,ルールが単純なのに,ボールゲームの醍醐味をちゃんと味わうことができるので,とにかくオススメのゲームです。

 もとの出典は,『たのしい授業プラン 体育』(仮説社)の,小俣三佳子さんの記事「〈シュートボール〉が好きです―低学年のおすすめボールゲーム」をごらんください!

●やり方とルール

 ポートボール台に大きいサイズのコーンをひとつ置きます。これにボールを当て,落とすことができたら1点が入る,という単純なルールのゲームです。

コーンの設置の仕方

 ぼくは,体育館にあるバスケットボールの円を使っているのですが,その真ん中にポートボール台を設置し,その上にコーンを置きます。
 ボールを持っているチームは,ドリブルもなく持って走って相手陣地へ移動できます。ただし,攻撃チームは円の中には入ることができず,その外からボールを投げて(シュートして),コーンを落とさなければなりません。

 守るチームだけは,円の中に入ることができ,手をあげてコーンを守ります。ただし,コーンに触れてしまうと,相手に得点が入ってしまうというルールがあるので,近付きすぎて守ることはできません。つまり,守備の子たちは「円とポートボール台の真ん中で守る」という感じになります。

 また,相手の持っているボールを無理矢理とったり,相手に触ったりしてはいけないというルールもあります。「手をあげて守るだけ」を合い言葉にやっています。つまり,攻撃に転じるためには,相手のパスをカットしたり,シュートが外れたりしたボールを先にとったりすることだけが,ボールをうばうチャンスになります。

 攻守が入れ替わったら,どちらのチームも一気に走ります。攻めのために駆け上がったり,守りのために戻ったりするからです。だから,ゲームの攻防は,ゴール陣地の周りで行われます。
 360度攻撃可能なので,裏側へのパスで,守りの隙をつくることができ,得点を決めるチャンスを広げることができます。これが,このゲーム最大のポイントだと思っています。なぜなら,自然とパスが生まれるゲーム構造になっているからです。

上手な子がシュートしても,外れるとチームの別の子にチャンスが来るので,どうしてもみんなが活躍できます!

●コート,ボールについて

 コートは体育館が広ければ,3コート作ることができます。円がないところでは,マカーコーンを置いて円をつくります。

マーカーコーンで円をつくっておく

 コートに場外はありません。隣のコートに転がろうが,かべにぶつかってはねかえろうが,先に拾った方が攻撃になります。
 ボールは,小さくてやわらかいドッジボールくらいのボールがいいと思います。
 オススメは,ミカサのキッズドッジボール(スマイルシリーズ)です。当たっても痛くないし,ケガもしません。それでいて,ちゃんと速いボールが投げられますし,跳ねすぎて捕りづらいということもありません。すごいボールを発明したものです。

 休み時間,あまりにも突き指が多かった学校で,このボールを全てのクラスボールに導入することができたのですが,ボールによるケガがほとんどなくなりました(あまりによくて,個人的に3つ持ってます・笑)。

 余談ですが,スマイルシリーズには様々なボールゲームのボールが開発されているのですが,「バスケットボール」もこのスマイルシリーズのボールがオススメです。ちゃんとダムダム音がするのに,やわらかいので,女子も怖がらずにキャッチすることができ,突き指もしません。

★授業の仕方★ 6~8時間くらいの単元だとして

1時間目
 仮のチームをつくって,ルールを説明し,ゲームを体験してみる。
2時間目
 仮のチームで何試合かしてみる。
3時間目
 正式なチームを作って,チーム練習したり,練習試合をしたりする。
4~6時間目
 公式戦をして,勝敗を決める。(8時間単元だとしたら,正式チームになってからの練習試合を2時間増やします)

●1時間目 仮のチームをつくって,ルールを説明し,ゲームを体験してみる。

★チーム分け(仮チーム)
 3コート取れるなら,6チームつくります。人数は少ない方がたくさん運動できますし,コートが多ければ,出番が多くなりたのしいです。
 背の順6列を作って,縦列を「仮のチーム」にします。すぐに色ゼッケンを配って,それを着るだけで,なんとなくチーム感が出ます。色ゼッケン,超大事です!(学校になかったら,体育主任に相談して,絶対に買ってもらいましょう)

ゼッケンを着るだけで,チーム意識がめばえます

★準備運動
 準備運動は,チームごとに丸くなって行います。突き指系のケガがあるので,準備運動の後,グーパーを必ず入れるように声かけします。一度力を入れて動かしておくと,ケガしにくくなります。「指の準備運動」というわけです。

★チーム練習
 まずは,チーム内で1対多数を作って,攻撃と守備の練習をします。5人チームだったら,守備がの人数が1,攻撃4です。これは主にシュート練習になります。

チーム内で「シュート練習」&「守備練習」

 誰かがシュートを決めたら,決めた人が守備を変わります。チーム全員がシュートを決められることを目標に,練習するように促します。
 「守備の途中でコーンに触れてしまったら,相手に得点が入ってしまう」というルールを,練習の時から説明します。はじめのうちは,試合中も,触ってしまう場合があります。その時は,ちゃんと止めて,相手に1点を入れたりすると,だんだん気をつけるようになります。すぐにはできるようになりません。
 とにかく,コーンにはさらわらず,コーンが落ちなければ,相手の得点にはならないルールです。つまり,落ちそうになっているコーンを直してはいけない,というのもルールです。直したら相手の得点になります。

★練習試合をやってみる
 練習試合をはじめる前に確認する細かいルールは以下の3つくらいです。

①得点を決めた人が,得点板をめくる,というルール。
②シュートを決められたチームは,そのチームからのボールでリスタートしますが,コーンをなおしたところから,ゲームが再開される,というルール。
③審判なし。「もめたらジャンケン」というルール。

 これらは,極力もめないためのルールです。もめるとつまらなくなります。「めくってる間に攻撃してきた!」という子がいますが,「相手がコーンを直したら,始めていい」というルールがあれば,もたもたせず,早くめくって守備に加わります。

 

ポイント① 審判なしの考え方

 細かい部分ではもめることが必ずあります。相手がボールをうばってきた,とか,円に入ってシュートした,とか。「やった・やってない」になったら,すぐにジャンケンで決着をするルール。これがすごく大事です。

 ぼくは「体育の授業は休み時間の遊びにつながるものであることが望ましい」と考えています。体育の時間の目標は,あくまでも〈たのしい運動と出会うこと〉であり,そこから休み時間の遊びなどに広がっていかなければ,運動としての発展はあまりないだろうと思っています。そんなことを考えると,〈審判がいなければゲームができない〉ということは,マイナス要因だと思うのです。
 そういう意味で,プレーをしている自分たちで審判をするということは,〈ゲームをたのしくするために折り合いをつける練習でもある〉と思っています。
 「相手がズルをした」などといってもめることはよくあることです。けれど,そんなことでもめてしまったら,そのゲームは一気につまらなくなります。そこで,「もめることがあったらジャンケンでさっさと決着をつけて気持ちを切りかえる方が,次のプレイをたのしめる」ということを学んでほしいのです。
 自分たちで審判ができるようになると,たくさんのコートで同時にゲームをすることができるようになり,ゲーム数が増えれば必然的に対戦相手もどんどん変わるので,負けたことを引きずる暇もなくなります。
 「負けてもすぐに次のゲームが始まる」となったら,次の試合で勝つことに関心が向かいます。自然と気持ちをリセットすることができ,たのしいゲームの体験を,たくさん積み重ねることができるようになるのです。

★対戦相手の決め方
 練習試合は,「勝ち上がりコートルール」でやるとよいです。

 どちらかの端っこのコートを「決勝コート」と名付けます(図のAコート)。対戦した相手に勝つと,そちらのコートに1つずつ移動していくことができます。負けたら,そのコートに残るというルールです。
 ただし,決勝コートで負けてしまった場合のみ,一番下のCコートに移動することになってしまいます。
 その授業の時間で優勝するには,決勝コートで勝ち続けなければなりません。時間がきて,授業が終わったときに,決勝コートで勝ったチームが優勝というわけです。
 最初の対戦が決まれば,試合数を重ねても自動的に相手が決まるので便利です。同点の場合は,ジャンケンで勝ち負けを決めて移動します。
 ちなみに,最初の相手は適当です。ぼくは,「最初に練習していたところでお互い対戦する」でやっています。

★ゲーム時間
 ゲーム時間は1ゲーム5分程度。1時間の授業で3試合くらいできると満足感が得られます。初日は,説明5分,準備運動5分,チーム練習10分,ゲーム5分×2で終わってしまいました。あと1試合くらいしたかったですが,子どもたちは大汗をかいて「たのしかったぁ」と言ってました。時間は,カウントダウンが見えるタイマーでやっています。

●正式なチームを決める(ここからは,中・高学年の内容)

 2時間目くらいまで,練習試合をしてみたら,今度は正式なチームを作って「公式戦」をします。スポーツには,長いことそのチームで練習を積み重ねるからこその喜びというものがあります。「初めはできなかったアイツがシュートを決めた!」とか,「自分本位のプレーが多かったアイツが仲間を励ましてるー!」とか……。できれば授業の中でもそういう盛り上がりがほしいと思います。それがうまくいくと,体育にとどまらず,クラスづくりにもとてもプラスになるのです。そこで,ぼくは,子どもたちに自分たちでチームを決めさせて,そのチームで練習して,勝つことの喜びを味わってもらおうと思っています。

ポイント② チームの決め方

 「チーム決め」は大事ですが,目的によって,いろいろな決め方があっていいと思っています。ひとつは,くじ引きのよって運で決めること。「運をたのしむ・あきらめる」よさが学べます。1試合ごとに変えるっていうのも,お試しの時期にはよいかもしれません。
 強いチームがたまたまできても,そこと当たるのはおもしろいです。負けて当たり前,勝ったらすごい,という前評判で対戦するのは,ちょっと違ったたのしさがあります。
 また,教師がわざと強いチームを作って,他のチームにハンデをつけて対戦するのもおもしろいです。「君たちは10点差つけられなかったら負けのチームね」とか。なんでも平等になっていればいいかというと,実はそうでもありません。そんなときは,ルールでひいきして,おもしろくすればいいのです。ようは,たくさん運動できて「あーたのしかった」となればいいんだけど,その中に誰かの活躍があって,それをお互いに評価し合える瞬間が生まれたら最高なわけです。それを,その場のルールによって作り出すことは可能です。
  もうひとつは,教師が決めるのではなくて,子どもたちに決めてもらう,という方法。これも,すごくいいです。やり方は,以下の記事をごらんください。


★1チームの人数

 チームの人数は,コートの広さによります。人数が少なければいい,ということもありません。子どもが小さければ,コートは広くなりますから,人数が多少多くてもたくさん動けますし,活躍できます。
 体育館の半面だと,高学年で3~4人,低学年だと4~6人でも大丈夫です。だけど,同じシュートボールでも,校庭で大きな円とコートでゲームできるとなったら,高学年でも6人チームで十分たのしめるでしょう。

★人数が多い場合の工夫
 クラスや学年の人数が多い場合には,同じチームから半分ずつのメンバーを選出して,点数をひきついで前半戦・後半戦のようにするとよいです。例えば,高学年での5人チームなのに,3対3でゲームするときには,前半の3人と,後半の3人を決めて出るわけです。キャプテンだけ前後半両方出るとか,工夫しながら。
 また,学年で対戦する場合には,半分が審判で,半分がゲーム,のようにすれば,一緒にゲームをたのしむこともできます。

●元ルール解説
 シュートボールの元ルールは,台なしで,コーンが3つになっています。

山本 繁「低学年授業実践事例(シュートボール)」より

 倒したら2点,当てたら1点というルールです。でも,「当たったかどうか」を得点にすると,わかりにくいし,もめる原因にもなるので,「台に乗せて落とす」というルールを考えました。これが一番わかりやすいし,シュートする方もねらいやすく,守る方も「手をあげて守る」が自然になりました。また,攻撃も守りも「円の外で守る」というルールもあるようです。コーンを床に置くルールなら,それもアリだなと思います。
 ※1年生の授業の解説動画が,ネット上で紹介されていました。とてもわかりやすいです

 でもぼくは,それでも落とす方がわかりやすいのではないかと思っています。長イスなどがあれば,コーン3つのルールでもできるような気がしています。

●公式戦・対戦表
 公式戦では,対戦表をつくってやっています。チーム総当たりの勝ち点制です。勝つと「勝ち点3」,引き分けは「勝ち点2」,得点を決めての負けは「勝ち点1」,0点で負けると「勝ち点0」…みたいにしてやると,盛り上がります。表は大きくして壁にはっておくなどするとよいでしょう。

●評価は?
 ボールゲームのチーム戦では,「ふりかえりレーダーチャート」がオススメです。伸ばしてほしいポイントを教師が書いておいて,「やっていたかどうか」は,チームで手をあげるだけで,チーム力が評価できます。
 負けがこんでしまうチームでも,はげましあっているチームは満足度が高いです。そういうチームは,初めて勝ったときなどに,すごく喜ぶことができます。

キャプテンが「シュートできた人~」などとチームに聞いて,手をあげた人数でレーダーチャートをつくっていきます。一目でチームのよさと弱点がわかります。


ポイント③ 勝ち負けとのつきあい方

 ぼくは,試合の結果をきちんと宣言して,勝ち負けをはっきりさせています。「3対2で,黄色チームの勝ち!(イエーイ!)礼!(ありがとうございました!)」という感じです。

 勝ち負けにすごくこだわる子,いますよね。勝たないと気がすまない…みたいな。一見困ってしまうことだけど,それってとても大事なことです。やっぱり,ゲームは勝ち負けがあるから盛り上がる,ということがあります。それも,たのしさのひとつです。

 だけど,勝ったチームがあれば,もちろん,負けたチームもあります。単純に考えたら,必ず半分は「負けチーム」です。そして,優勝できるのは1チームだけ。それを考えると,「優勝チーム以外はすべて負け」ということでもあるのです。実は,勝ち負けを競うと,ほとんどが「負け」と向き合うことにならざるを得なくなります。

 だから,「勝つ」ということは,無条件にうれしいのです。問題は,「負けたときの心の持ちよう」ということになります。どうするか。

 ぼくは,そのまま「負けたら,悔しさを味わおう」って,子どもに伝えています。「ゲームは,勝つからたのしいんだ。負けたら,ただひたすら悔しいんだ」と。

 「勝つからたのしい。だから,負けたらつまらない」という子がいます。「でも,それはもったいないよ」と伝えています。
 「つまらないって思ったら,もうやりたくなくなっちゃうでしょ(笑)。それって本当は,つまらない,じゃなくて,悔しいっていう気持ちなんじゃないかな? 悔しい気持ちがあるって,すばらしいことなんだよ。だって,悔しかったら,次にまた練習するじゃない。次は負けないようにって練習すると,必ず上達するんだよ。うまくなったら,自分がうれしくなるし,次は勝てそうな気がしてくるんだよ。そうすると,次の対戦がたのしみになるでしょ。だから,実は,負けても「たのしい」んだよ。ゲームにつまらないなんてことはないんだ。それはただ,悔しいっていう気持ちに,自分が向き合えてないだけなんだよ」と。

 スポーツをやっていたっていう大人をみていると,なんだか落ち着いているっていうか,自分は自分,人は人,みたいに,心動かされすぎないっていう感じがします。
 きっとそれって,「負け」に対しての耐性というか,そこから,どう考えていくと次につながるかを,すぐに考えられる人なんじゃないかなぁと思うのですが,どうでしょう。
 たたかえば,いつも味わってしまう「負け」とのつきあい方。その悔しさをもたのしめるようになったとしたら,人生は明るく開けます。そういうトレーニングなんだと思って,ぼくはゲームの最後に高らかに,勝ち負けを宣言しています。

ポイント④ みんなでルールをつくろう!

 ゲームにも慣れてくると,試合後に「相手がズルした!」「そっちだってやってる!」などと言い合いになっている場面を見かけたり,教師に訴えてきたりすることがあります。ありますというか,日常ですね(笑)。
 だから,めんどくさいようにも感じますが,それだけ「勝ちたい」という意欲の表れでもあるし,どう解決していくかの方法を教えるチャンスでもありますから,「トラブルになったらシメタ」と考えておくと,心おだやかでいられます。

 そういうときには,授業の終わりや,次の授業の始まりに,「ゲームでどんなトラブルがあったの?」と,全体の前で聞くのです。

 すると,「相手がずーっとボールを持っていてズルい」とか「わざと相手にボールをぶつけて,弱らせてコーンをねらってきた!」とか,「全員で囲むようにコーンを守って,あれじゃあ絶対点をとれない」とか,ジャンケンでは解決できない問題などが出てきます。
 「ルール上はなんの問題もないけど,確かに,それがあるとたのしさが半減してしまうなぁ」と思う問題であったとき,みんなに「どういうルールがあると,もっとたのしくなると思う?」と聞くのです。
 すると,「ああしよう」「こうしよう」と,いろいろな案が出てくるので,「いいね~」と聞きながら,教師が最善のルールを選んで「じゃあ,今回はこのルールでやってみよう!」と宣言して,試してみるのです。

「相手がずーっとボールを持っていてズルい」
→「テンカウントを始めていい」というルール。「こいつ,ずっとボールを持ったままぐるぐる回って やがる」と思ったら,そのチームは「10・9・8・7…」とカウントダウンを始めてよい。その間に,ボ ールを持っている子は,必ず,パスかシュートをしなければならない。

「わざと相手にボールをぶつけて,弱らせてコーンをねらってきた!」
→危険なので,やってはいけないルール。もしも,わざとと認められた場合には,「相手に得点が 入る」というルール。わざとではない場合もあるのでむずかしいが,基本的に「ダメ」というルー ルさえあれば大事にはならない。

「全員で囲むようにコーンを守って,あれじゃあ絶対点をとれない」
→円に入れる人数を決める。「円の中で守れるのは3人まで」とか。それ以外の子は,円の外で, ボールを持っている人の前で手をあげて守ればよい。夢中になって4人入っているときには, 相手チームから「4人入っているよ!」と指摘して,どかすことができるので,トラブルは減る。

 そのほか,全員が活躍できたり,逆転を狙ったりできるルールとして,「全員にパスが回ってからのシュートが決まったら2点」というのが,できたときもあります。
 これらは,子どもたちの中から問題が出てきたときに付け足すルールで,問題が起こらなければなくてもいいルールです。最初からあってもよいのですが,ぼくはあえて作っておかないで,問題になったときに,自分たちで作っていく方が,休み時間などへの応用がきくと思っています。
 ルールというのは,みんながたのしめるように,「じゃあさ,こうしようよ!」「いいねー!」などといって,みんなで考えていくものだと思っているので。

●たのしいゲームの作り方
 ある講座で,「特別支援学級で人数が少なくて,私と子ども3人だけなのですが,それでもシュートボールって,できるのでしょうか?」という質問がありました。みなさんは,どう思いますか。

 ぼくは,「もちろん,できますよー」とおこたえしました。それ通りはできなくても,ポイントに注目すると,たのしいゲームは,自ずとできあがってくるものなのです。その話を最後に書いて終わります。

 ゲームをつくるときに大切にしているのは,「本質的になにがたのしいと感じるのか」を発見することです。これは,やっているうちにわかってくるものなので,最初からは無理なのですが,シュートボールの場合は,なんといっても「シュートしてコーンを倒すこと」です。
 やっているうちに,これが「たのしい」と感じるものなのだとわかってきました。もちろん,それひとつではないのですが,1つでも「たのしさの重点」がわかったら,それが味わえるようなゲームを考えればいい,ということになります。

 ぼくが,本来のルールにはなかった「台の上にコーンをのせる」というふうにしているのも,〈より簡単にコーンを倒せるから〉です。
 コーンの中で,一番面積があるところは,下の方の部分です。ところが,そこに当たったとしても,床に置いてあったらコーンがずれるだけで倒れてはくれません。
 でも,台にのっていれば,落っこちて確実に倒れるし,台にのっていることで面積が大きい部分が上の方にくるので,ねらいやすくなります。
 それはすべて,「当てて倒せた」という喜びを味わえるチャンスを広げたいからそうしています。その「たのしさ」を感じてもらえたら,みんながシュートを狙いに行くようになって,ゲームは大いに盛り上がります。

 さて,話を最初に戻して,「少人数でもたのしめるか」という問題ですが,基本的には「コーンを当てて倒す」ことは1人でもできますので,「1人からたのしめる」ということになります。
 でも,簡単すぎてもおもしろくありませんので,そこに難度をあげていくことができれば,さらにおもしろくすることができます。
 じゃまする人が1人入ったり,コーンをねらう仲間が円の周りに増えていくだけで,たのしさは何倍にもなります。
 教師もまざって3対1になって,誰が一番長くコーンを守れるか,タイムを計って競ったり(ディフェンスで活躍することも,たのしさのひとつ),2対2でゲームをしても,すごく盛り上がれると思います。
 ペアを変えて同じゲームをしてみてもいいですし,なにか特別なルールを考えながら(先生1人対子ども3人とか・笑),うまくルールでひいきして,みんなが全力でたのしめるようなゲームを考えることは可能です。
 それこそ,大人数のクラスより,活躍できる時間が増えるので,きっと,たのしさもたくさん味わえると思います。

 シュートボールに限らず,全てのボールゲームも同様で,「なにがたのしさの本質か」を見極めることができたら,それを味わえるゲームを考えることは,とってもたのしい作業になります。

 バスケットだったら「シュートを決めること」

 野球だったら「バットでボールを打つこと」それに,「キャッチボールができること」

 バレーボールだったら「ラリーが続くこと」

 サッカーだったら,「シュートを決められたり,ボールが止められたりすること」

 などなど。そのたのしさを十分味わえるゲームをつくれば,子どもたちはもちろん,大人だって一緒にたのしむことができると思っています。

おわり


出典:月刊『たのしい授業』2023年11月号(仮説社)


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