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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問77

みなさん、こんばんは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問77です。

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問77
45歳の男性A。400人の従業員を抱える通信業の支店長で、総括安全衛生管理者を兼ねている。新興感染症の感染拡大を契機に導入したテレワークが定着してきたが、直近のストレスチェックで、高ストレス者の頻度がテレワーク導入前に比べて増加していることが判明した。そのため、Aは、従業員向けにメンタルヘルス対策の研修をする必要があると考え、健康管理室の公認心理師Bに、研修の内容を相談した。
 BがAに提案する研修内容として、適切なものを2つ選べ。
① 身体活動の勧め
② 専門医との連携
③ 相談窓口の周知
④ 労務管理の工夫
⑤ 職場復帰への支援の方法

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正解、 ①と③です。

選択肢の解説
② 専門医との連携
③ 相談窓口の周知
④ 労務管理の工夫
⑤ 職場復帰への支援の方法

近年、仕事や職業に関して強い不安やストレスなどを感じている労働者の割合が高くなっており、また心の健康障害での通院者や、自殺者数が高い数値で推移しています。

事業場におけるメンタルヘルス対策とは、心の健康に関する一次予防(「積極的な健康の保持増進=ヘルス・プロモーション」及び「仕事による健康障害の防止=ヘルス・プロテクション」という2つの概念を含む)、二次予防(健康不全の早期発見、早期対処)、三次予防(再発・再燃の防止ですが、ここでは職場復帰支援対策を含む)を含む広範な概念です。

本問で重要になってくるのは、本事例で求められているのは「一次予防~三次予防のいずれであるか?」に関する理解と、それに沿った対応を選択できることです。

メンタルヘルス対策については、労働安全衛生法第70条の2に基づき、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(指針)が厚生労働大臣によって定められています。

この指針にも「心の健康づくり計画の実施に当たっては、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある」とされています。

以下では事例の状況から、どのレベルの支援が求められているかを考えていきましょう。

事例では「直近のストレスチェックで、高ストレス者の頻度がテレワーク導入前に比べて増加していることが判明した」という状況になります。

そして「Aは、従業員向けにメンタルヘルス対策の研修をする必要があると考え、健康管理室の公認心理師Bに、研修の内容を相談した」ということになりますから、あくまでも「研修で行える範囲」を考えていく必要があります。

高ストレス者がたくさん出てきたという状況だけだと、一次予防(ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する)と二次予防(メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う)のいずれに焦点を当てるのか選べません(三次予防は、実際に休職した人が出てきた場合なので、全体に行う研修としては除外できるでしょう)。

ですが、この時点での公認心理師が「研修で行う内容」ということになれば、やはり高ストレス者が本格的なメンタル不調を訴える前に相談できるためにも、選択肢③の「相談窓口の周知」ということになるでしょう。

例えば、選択肢②の「専門医との連携」は二次予防の色彩が強めな上によりメンタルヘルスが不調になってしまった者に寄った内容ですし、選択肢⑤の「職場復帰への支援の方法」は三次予防になっていて、事例ではそこまでの不調が多数になっているわけではありません。

選択肢④の「労務管理の工夫」についても、メンタルヘルスケアを行っていく上では労務管理との連携は欠かせないことではありますが、「不調になったときの対応」に片寄った内容であり、事例で必要と思われる「不調になる前にどうケアするか」という視点にはなっていません。

「職場復帰支援の手引き」にもあるように、職場復帰支援プログラム、関連規程等及び体制については、労働者、管理監督者及び事業場内産業保健スタッフ等に対し、教育研修の実施等により十分周知することは重要ですから、選択肢②、選択肢④、選択肢⑤も労働者に対して伝えるべき内容ではあります。

しかし、事例の企業の状況は「高ストレス者が出てきた」という状況ですので、まずは「相談窓口の周知」という制度を知ってもらうことで、大きくメンタルが崩れる前に相談を受けられる状況にしておくことが望ましいでしょう。

以上より、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。

① 身体活動の勧め

こちらの対応は「新興感染症の感染拡大を契機に導入したテレワークが定着してきたが、直近のストレスチェックで、高ストレス者の頻度がテレワーク導入前に比べて増加していることが判明した」という状況を受けてのものです。

心理職として研修を行う場合には、依頼元が「何を求めているのか」というニーズをキャッチしておくことが重要になります。

本事例では「テレワーク」という状況が高ストレス者の頻度の増大につながっているという仮説を立てることができたので、選択肢①の「身体活動の勧め」は研修内容として適切なものであると言えるでしょう。

以上より、選択肢①は適切と判断できます。

引用URL:https://public-psychologist.systems/15-産業・組織に関する心理学+法律/公認心理師%E3%80%802023-77/

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