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ずっとシックリこなかったスポーツビジョントレーニング。その前に「THE VISION」

スポーツビジョントレーニングの効果を疑っているのではない

1999年くらいからスポーツビジョントレーニングの本を読み始め、スポーツビジョントレーニングの講座などを多く受講してきました。それこそ特別視機能研究所の内藤貴雄先生の講義も受けましたし、坪田ラボの坪田先生の講義も受けました。「レーシック術後のスポーツビジョンの向上が見られるか?」や「高校野球のチームごとスポーツビジョントレーニングして成績は向上するか?」など色々な情報をかき集めました。当時、千葉ロッテマリーンズでコンディショニングコーチをされていた、立花龍司氏のスポーツビジョントレーニングを遠巻きに見学しに行った事もあります。

2000年前後はスポーツビジョントレーニングの論文がアメリカで多く出されていて、かなり勉強したのを覚えています。アメリカのスポーツビジョントレーニングは、眼科でオプトメトリストによって行われるビジョントレーニングが礎となっています。スポーツビジョントレーニングとは、多くの方がご存知のような「動体視力」「瞬間視」のような目のトレーニングをやっていくわけです。アシックスから出されていたパソコンでトレーニング出来る「スピージョン」なるソフトもありました。

スポーツビジョントレーニングはアスリートにとって、とても有益なトレーニングだと思います。

ですが、私が疑問に思ったのは何年も継続してやっている選手ってあまりいないんですよね。そして2002年頃からスポーツビジョントレーニングの論文は減っているように思います。この点が20年来、全くシックリきていないのです。

そしてスポーツビジョンは眼球運動という別の世界へ行ってしまったような気がしています。スポーツ時における眼球運動についても興味深い話なのですが、ここでは触れません。


プロとアマチュア・ノンプロの間にある明確な眼の境界線

私はメガネ屋なので多くの方の目を見ています。スポーツサングラスの創成期から自店で取り扱っているので、プロ選手やハイアマチュア・ノンプロ、趣味でスポーツを楽しまれる方が多くご来店されます。

私にはスノーボード競技でプロ選手になった友人が多くいました。プロスノーボーダーの友人の目を見てみると、全てケースで視機能的な問題がありませんでした。その中にも近視がとても強い人も多くいましたが、コンタクトで矯正すれば視機能に問題はありませんでした。縦・横・斜めに回ってバランスを取る競技において、目のチームワークを含めた視機能は非常に重要です。

プロゴルファーで国内ツアーを優勝されるようなトッププロも次々とご紹介頂き、目を見ましたが、こちらも近視はあれど視機能な問題はありませんでした。目で見た距離感と体を連動させる視機能が求められます。

ここでいう視機能と言うのは立体視をメインとした”見る力”で、視力表で測定する1.0といった視力とは異なります。簡単に例えると大型・二種運転免許で言う「深視力」や、イチロー選手のレーザービームを実現できる「空間認知能力」と言った目の能力です。立体視の能力が自分にあるかを確かめるには、3D映画を観てちゃんと飛び出してくるかを確認してみて下さい。

私には2人の子供がいるのですが、幼少期にディズニーランドの「マジックランプシアター」という3D映画を観るアトラクションで、子供達の立体視を確認しました。3D映画が浮き上がって観えない、観ていると酔ってしまう場合は、何かしらのトラブルがあるかもしれません。

この立体視空間認知能力などの視機能は持って生まれたものだと言われており、トッププロ選手は生まれつき目が良いのだと言われています。もともと目が良いわけですから、もしかしたらスポーツビジョントレーニングの伸びしろもあまりなく、継続していないのかもしれません。


育成年代の夢を早期に摘まないように

様々なスポーツカテゴリーの方々と情報交換する機会があるのですが、THE VISIONの話をすると「ウチの選手を是非見て欲しい」というご依頼を多く頂きます。しかしTHE VISIONは一人一人に時間が掛かり、場合によっては映像解析なども組み合わせて検証しています。一度にチーム単位での検証は、現状の体制では難しいのが本音です。

東京オリンピック以降、各競技の強化費が削減され育成できる選手に限りがあるそうです。どの選手を強化育成したら良いか皆さん頭を悩まされており、何かしらの判断基準を模索しています。THE VISIONはその判断指標の一つになると思いますが、こういった効率を重視した選考に何とも言えないモヤモヤ感があります。まわり道も経験ですし、もしかしたら私達が気付いていない才能があるかもしれません。


スポーツビジョントレーニングの前に必要な事

2016年頃からプロ野球選手や社会人野球の選手の目を見ることが増えました。社会人野球にはプロ野球の経験者も多く在籍しているのですが、元プロ野球選手は例外なく目が良いのです。

逆にプロに一歩届かない選手の多くに、必ずある傾向が見つかります。そういった場合、高校生くらいになってスポーツビジョントレーニングを始めても恐らく間に合わない。10~14歳くらいの成長期に、THE VISIONとスポーツビジョントレーニングを取り入れる必要があるのかなと考えています。

このある傾向「立体視」に問題がある場合と「感度」に問題がある場合、あるいはその両方に問題がある場合がほとんどです。通常のビジョントレーニングの分野で「立体視」の入門部分はトレーニングによって改善する事は可能ですが、日本でこのトレーニングをどこでやるのかが非常に難しい。なので私はメガネやサングラスで改善したいと考えています。

「感度」"夜になると見えづらい"と言ったような症状を含めて、いくつかのチェック項目があります。私のメガネ店では医療機器メーカーであるニデック社「角膜形状/屈折力解析装置 OPD-Scan III」という測定装置により解析しています。廉価版の「OPD-Scan III VS」という測定機だと解析できる項目が少なすぎるので、価格が高いフルスペックの測定機でないと片手落ちちになってしまいます。

裸眼視力でもメガネを掛けた視力でも、両眼で0.7以上の視力がないと立体視が出来ないと言われており、遠くが見えている前提も大事です。そして見える精度がとても重要なのです。見える精度とは目に見えるものが、ロス無く脳に伝わるという意味です。

プロ選手になるためには目だけではなく、当然ながらフィジカルが大きな要素になります。目だけの改善でプロアスリートになれるわけではない事はあしからず。

THE VISIONでは立体視に問題があるようであれば、その問題を改善させるメガネを作ること。そしてスポーツ毎に適正なカラーレンズを選ぶこと。そして目をどこに置いてスタートさせるかを考えます。

THE VISIONはトレーニングではありません。THE VISIONの基礎の上にスポーツビジョントレーニングを実施する事により、大きな効果を生むと考えています。


気をつけなくてはならない点

目は25歳くらいをピークに衰え始めると言われています。皆さんが考えているよりも早く衰えが始まるのです。プロEスポーツ界では25歳くらいになると引退するプレーヤーも少なくありません。

動体視力瞬間視はどちらかというと運動能力と密接に関係がある為、トレーニングによって高めることが出来ます。しかし立体視は前述のとおり、生まれ持った能力と言われており、ビジョントレーニングによって改善できる場合もあるし、改善する事が出来ない場合もあります。

慣れ親しんだ自分の立体視の上に成り立った技術や技能を、熟練させてから変化させると非常に苦労します。スポーツアスリートの立体視を改善させる場合、ある程度のダウンタイムを考慮する必要があります。
感覚的なズレは選手生命を縮めてしまう可能性もあり、最大限に配慮すべき点です。

スポーツビジョントレーニングは、そういった感覚的なズレを起こさずに目力をアップさせることが出来るトレーニングだと思います。

こう考えると、やはりTHE VISIONは育成年代10歳~14歳くらいの年齢で一度見ておきたい視機能チェックなのであります。THE VISIONで視機能をチェックしてからスポーツビジョントレーニングを開始したほうが、高い効果を得られると考えています。


THE VISIONはスポーツビジョントレーニングよりも手前でやっておきたい眼のチェックである


最後にTHE VISIONで行っていることを簡潔にまとめてみました。

1.両眼のチームワークを円滑にし立体視を実現
2.見る精度をロスなく実現させる
3.空間における感度を充実させる
4.プレーポジションでどこに目を置くかを考える

まずは視機能のチェックや感度チェック、プレーポジションをどう作っていくか。その後、メガネやサングラスなどで最適なところを探していきます。経過も見ていく必要もあるので、コミュニケーションも重要視しています。

私が運営するザストランというスポーツサングラスブランドでは、スポーツパフォーマンスに最適なカラー群を開発しています。THE VISION用のレンズカラーも開発しています。レンズカラーは個人個人で適正なカラーは異なりますが、色んなケースに対応するレンズを順次追加しています。複雑なコントラストを実現するカラーレンズをリリースしているブランドもありますが、個人最適化させる為にはもっと単純化させたコントラストレンズが良いと考えています。

XAZTLANはこのTHE VISIONを実現するために立ち上げられた経緯もあり、XAZTLAN販売店を通してお伝えしていけたらと考えております。



アイウェアに関する独自の取材や、撮影などの個人活動費に使用させて頂きます。