「トッケビ 」と税金と映像ファイナンスの話

2016年にヒットした韓国ドラマ「トッケビ 〜君がくれた愛しい日々〜」は最近の時流に乗って、「愛の不時着」⇨ロス⇨他の韓流で泣けるやつ⇨「トッケビ 」という流れで再ブーム燃焼中だ。かくいう私もその一人で、トッケビ に関する感想はもう書かないけど、ふと思ったことを書いてみた。

トッケビ の主人公キムシンさんとお相手女子高生ウンタクちゃんの思い出の場所はケベックシティと言うカナダの街なわけだが、私はまず二人がケベックに行った時「ん？なんでケベック？」と思った。美しいカエデ並木やヨーロッパ調の街並み、ゆったりした郊外の雰囲気、どれをとっても美しいケベックシティは作品世界にぴったりだが、それにしてもなんで、と思わずおえない。だって韓国からケベックってちょっと遠いし。キムシンさん最初は船乗って行ったわけで、考えられる航路って太平洋を通って、アラスカに入るかバンクーバーあたりに入るか。アラスカの上を通ってケベックにはいるのは寒すぎてあの船じゃ無理だし。おそらく一番近いバンクーバーあたりから入って落ち着くにしても東海岸の北の果ての街ケベックに陸路でいくだけでも馬で何ヶ月もかかりそう。当時の感じだと。トッケビ はいいにしてもお付きの子供にはむりでしょう。あ、でも最初に中国行ったような気がするから、アフリカ周りってことか？でも陸路でヨーロッパ抜けるかアフリカを南に回って行ったの？それにしてもケベックってフランス語圏だから、英語通じないかもよ。あ、でもキムシンさん最初にカナダ入りしたのって入植前かな。。入植１５世紀くらいだからキムシンさんと同じくらいかな。。どちらにしても、話の流れと地理的要素から行くと、絶対選ばないないロケーション。。

考えられる理由は、カナダの税制度を使って予算を節約して撮影したのではないかと言うことだ。カナダ各地には映像制作へのタックスクレジット支援がでている。世界の映像制作のロケーション誘致のために結構宣伝しているのだ。この税金制度を使って撮影したかったからこのロケーションなのではないかと私は思っている。

映像ファイナンスをやる人の間では有名だが、カナダは映画やテレビなどの共同制作に積極的だ。例えば、今カナダには数多くのアニメーション制作会社があって、ハリウッドにかつてあった大手スタジオのアニメ制作部もこぞってカナダに引越しした。それはなぜかと言うとアニメーションの制作予算はほとんど人件費ということもあり、基本的に雇用促進政策でもあるこの税制では、労働に対する還付率が非常に高く、うまくすれば６０％の予算が返ってくることだってある。実写テレビ番組の場合スタッフの労働賃金以外どんなお金が返ってくるのかはわからないけど、ホームページみると全体予算２５０K（2500万円くらい）以上であれば、対象って書いてあるので、観光案内要素も含んでるし、（セリフの中で場所がどこか限定しているし）そうなんじゃないかなと思った。興味がある人は、ここにケベックのタックスクレジットについて書いてあるんでどうぞ。http://www.qftc.ca/tax-incentives/information/

色々制限があるのでそうでないかもしれないし、共同プロダクションにしてケベッククルーは現地の人を使うなど色々出てくるので使ってない可能性も大いにある。意外と観光局やどこかの旅行会社とのクロスプロモーションかもしれないし。そうじゃない可能性も大きいけど。

製作費の話をしてのでついでに、日本のドラマでもそうだと思うが、車や飲み物や食べ物などで最近の韓ドラはプロダクツプレイスメントが著しい。欧米の地上波ドラマ最近あんまりみないけど、こんなにあからさまなプロダクツプレイスメントが入っているのは韓ドラ以外ないんじゃないのって気がする。トッケビ にも飲料水と車が目立っていた。キムシンさんの運転する車はマセラッティのSUVなのだが、マセラッティ自体、そんなに走ってますか？韓国で。不自然でしょ。マセラッティってイタリアの老舗高級車ブランドでめちゃくちゃ高い。最近はポルシェでもSUVだしてるので、高級車ブランドのSUV車は比較的安価で結構一般的だ。それでも一千万円以上はすると思うけど。マセラティ初のこのSUVは2016年に初めて売り出したそうで、トッケビ 放送年も2016年、プロモーションにぴったり。昔のドラマにはこんなにあからさまなプロダクツプレイスメントはあまりなかったように思う。主演のコンユさんの出世作「コーヒープリンス一号店」（2007年）だって、最終話の面接を受ける珈琲店がコーヒービーンズだったりと若干それらしいものはあったけど、あんまりなかったと思う。ここ10年ちょっとで地上波テレビは長い長いコマーシャルになったということなんだよね。そういう意味では配信への移行はテレビ番組の自由度を広げたのかな。

*すみませんがケベックでの撮影が予算削減のためかどうかの裏は取れてませんので、私の憶測のみであることをご了承ください。