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【400字小説】風がよける

 風がよける。私が歩くと、風がよけていく。どこに向かって歩いていけど、走っていけど、転び起き上がる時も、風はよけていく。
風は、見て見ぬふりをする。オロオロしていても、突然立ち止まっても、風は見て見ぬふりのまま、横を過ぎる。

 風がよける。どこにも居場所はないのかと街をグルグル歩き疲れた足の重さも分からない風。私の周りだけ風はスッとよけていく。邪魔だと言われているみたいに、一旦真っ二つになった風は私を通り過ぎた後、まもなく一緒になった。

 風がよける。常にそこにいるはずなのに、そこにない。見えているようで、見えていない。ところ狭しと、私と同じ街に住んでいるはずなのに、多分彼らからも私はいないもの。存在しないことにしたいのだ。

 風がよける。あ、今目の前で転んだ人が。立ち上がろうとする膝には少し血が滲んでいた。その方向に歩く私は、真横を素通りした。だって誰も声をかけないから。風になれば楽だから。


これ、小説っていうには妙ですよね(汗)

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