初めての「宮内庁御中」 その①
「歌会始」の存在を始めて知ったのは、中学の古典の授業中だった。
先生が余談として話したその儀式は、なんか面白そうだった。
毎年、全国からお題に沿った2万通の短歌が宮内庁に詠進され、そこから選ばれたたった10人が、皇族や歌人が参列する歌会始に出られるらしい。
平安時代みたいなことが今も行われているなんて、
ちょっとわくわくした。
普段は学童保育で働きながらも、なぜかわざわざ県をまたいで私の中学で古典を教えていたその先生は、ぼそぼそとしゃべる人だったけど、その言葉の端々から古典が好きだというのが伝わってきて、ひそかに好きだった。
先生は毎年応募しているけど、全然だめだと言っていた。
すごい倍率だけど、わたしもいつかやってみたいな、と何となく思った。
それから10年、今年ようやく
毎年お題はチェックしていたけど、いい歌が詠めなかったり、詠めたと思ったら新年の席にふさわしくない暗さをはらんでいたりして、
要は自信がなくて、送ってなかった。
だけど今年、ようやく詠進してみることにした。
理由は二つ。
一つは、前回の歌会始で選ばれた一つの歌にすごくひかれたからだ。それは高校生が詠んだ歌で、静かな優しさが温かかった。
圧倒された。こんな風に詠んでみたいと思った。
二つ目は、これは自画自賛なんだけど、今回のお題「実」にピッタリの歌が詠めたからだ。とってもいい歌だと思う。
多分、落選した2万人みんなそう思ってただろうけど。
初心者なりに考えた歌の詠み方
どんな歌にするか決めるときに、気を付けたことは一つ。
身の丈にあったものにする、ということ。
今回のお題「実」や前回の「希」などのポジティブな漢字からは、実りや希望といった、大げさな単語が連想されやすい。
これを90歳のおばあさんが詠んだらまだ説得力があるんだけど、二十代の若者が使ってしまうと空々しく響く。
若造に何がわかるんじゃ、って感じだ。
だから私みたいな世間知らずの若者は、お題の漢字を身近な単語に置き換え、内容も日常的なことにする必要がある。
実際、過去の若い世代の入選作で歌われているのは、飼っているカエルとか朝食の風景なんかだ。
特に先述した、去年入選した高校生は「希」を「希望進路」として読み込んでいる。等身大の姿が目に浮かぶし、だれもが当時の自分を思い起こすような単語。見事すぎる。
というわけで、わたしも実体験に基づいて、大学生らしさを出せるよう心がけてみた。
春先に題材が決まってから、暇なときに頭の中で読み上げてみてはマイナーチェンジを繰り返し、8月にようやくこれでいいかな、と思えるような形になった。
でも実は、ここから送るまでが、ちょっとハードルが高かった。
→その②に続く
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