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「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.3

エンドウ ―遺伝の計算問題を学習したあとで―


ーーはじめにーー
・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。
・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。
・画像はいらすとやさんから拝借します。
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遺伝学と言えば,皆さんきっとご存知のメンデルです。メンデルと言えば,メンデルの法則。メンデルがメンデルの法則を発表した際,その実験に用いた生き物がエンドウです。漢字で書くと「豌豆」。だから「えんどうまめ」と言ってしまうと「豌豆豆」になってしまいますね。えんまめまめです,えんまめまめ。
スナップエンドウとして莢ごと食べたり,未熟な種子をグリーンピースとして食べたり,発芽させたものを豆苗として食べたりしますね。前回扱った酵母と同様,エンドウも食品として我々の生活に密接に関わっています。そもそも食べ物は生き物なので,食べ物になっている生き物には普段から大変お世話になっているということです。
 
エンドウはマメ科の植物なので,代謝のところで学習した「根粒菌」が根に共生しています。エンドウの根に根粒菌が共生すると,そこには「根粒」というツブツブが見られます。根粒菌は,本シリーズvol.1で紹介した大腸菌と同じ細菌のグループに属していて,たいへん小さい生き物なので肉眼で見ることはできません。しかし,根粒は数ミリ程度あるので観察することができます。とはいえ,エンドウの根を観察することは,家庭菜園でもしていなければなかなか難しいでしょう。そういう場合は,同じマメ科のカラスノエンドウならその辺にたくさん生えていますから,それを引っこ抜いて観察するのがいいです。比較的手に入りやすいマメ科植物には,カラスノエンドウの他に,やや小ぶりなスズメノエンドウや,カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間くらいのサイズのカスマグサ,引っ付き虫として名高いアレチヌスビトハギがありますね。図鑑を参照しながらそれぞれ引き抜いて,比べてみるのも面白いかもしれません。
蛇足ですが,カスマグサの名前の由来は,「“カ”ラスノエンドウと“ス”ズメノエンドウの中“間”くらいのサイズ」で,「“カス間”グサ」です。
 
さて,エンドウは生き物であり,その中でも植物であり,我々が食べているのは…あれは,何なのでしょう。
花が咲き,受粉が起こり,実をつける―これは,まぁコケやシダなどは別にして,被子植物であれば起こることです。では,「実」とは何でしょう。
 
小中学校の理科では,「被子植物は胚珠が子房に包まれており,子房は果実に,胚珠は種子になる」と学習しましたね。とりあえずリンゴを思い浮かべてみましょうか。リンゴには果実があり,真ん中に種があります。果実は子房に由来し,種は胚珠に由来します。ちょっと考えてみましょう,「エンドウの実」は,リンゴの何に相当するでしょう。グリーンピースの薄皮は,リンゴで言うところのどこでしょうか。
さて,発問を続けます。被子植物は胚珠が子房に包まれているのですよね。つまり,種子が果実に包まれているはず。ところで,タンポポは被子植物です。我々はタンポポの綿毛の基にあるアレを何気なく「タンポポの種」と呼びますが,被子植物であるタンポポの種子が,果実に包まれることなくむき出しになっていることなどあるのでしょうか?
あとですね,イチゴのつぶつぶって,何ですか?普段食べてるお米,あれって植物学的には植物の何ですか?パイナップルって,そもそも何を食べてるんですか…?
 
食べ物は生き物であり,色んな食べ物があることは生物多様性の恩恵そのものです。色んな植物がいて,我々は色んなところを食べているのですが,我々は我々が食べているものについてあまりにも無頓着ではないでしょうか。教科書に出てきた生き物が,どんな姿をしていて,どんな生き方をしていて,どのように我々と関わっているかについて,ちょっとでも興味を持ってもらえると嬉しく思います。
 
…スーパーの青果コーナーで,「なんだコレ?」と思ったらぜひカゴに入れてください。調べると面白いですよ。
 
それでは,また次回。

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