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「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.5

ニワトリ ―発生を学習したあとで―


ーーはじめにーー
・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。
・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。
・画像はいらすとやさんから拝借します。
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近所のスーパーなどでは,精肉されたニワトリのお肉がパック詰めにされて販売されていますね。私は手羽元が好きです。軟骨が歯で簡単にはがせるくらいにまで煮込むのが好きです。

ニワトリは,我々ヒトと同じ脊椎動物に属していて,我々ヒトとは異なる鳥類に属します。ヒトとニワトリはともに硬い背骨のある生き物ですが,我々ヒトの手に羽毛は無いし,足にはウロコもありません。そしてヒトの生物学的メスは,硬い殻をもつタマゴを肛門から生みません。

…いやね,生き物の話をするとどうしても肛門の話が出てくるんですよ。不可避,そう肛門不可避です。私,職場でも声が通る方なので,よく通る声で授業中も肛門肛門言うんですけど,仕方ないんですよね。堪忍してください。

両生類とか鳥類とか爬虫類,あとカモノハシのような一部の哺乳類の肛門は,「総排出口」と言われます。その名の通り,全部そこから出す。便も,尿も,子(卵)もそこから出す。スーパーで売られている卵は基本的にきちんと洗浄されているので,そこはご安心ください。

もしも貴方が,これまでニワトリを捌いたことがなく,現時点でそれを仕事にする予定もなく,それでいて今後ニワトリを捌く機会に恵まれそうなら,ぜひ一度やってみることをおすすめします。(ニワトリに限りませんが,)生きた脊椎動物をしめて食べられるようにするのは,すごく面倒くさいです。でも,自分で捌くことで,「肉を食べるとは,これを誰かがやってくれているからだ」ということがよく分かりますし,育ててくれた方,精肉してくれた方,運んでくれた方,売ってくれた方…そう,“かつて生き物だった食べ物たち”に関わったすべての方々への感謝の気持ちが,自然と湧き上がってくるというものだと思います,強要はしませんけど。

ほら,ちょっとご自身の後頭部の真ん中に,人差し指の先を置いてみてください。そこから頭蓋骨をなぞるように真下に指をおろすと,くぼんで柔らかいところがありますね。その奥が頭蓋骨と背骨の境目になるので,ニワトリのそこに刃を当ててぐっと力を入れるんです。ヒトもニワトリも脊椎動物であり,その骨格には共通点があります。ニワトリの頭蓋骨を指でなぞると,貴方の後頭部と同じようにストンとくぼむところがあるんです。

 さて,発生の単元の小ネタとしてニワトリを挙げたのは,そのタマゴの話をしたいからです。タマゴって,親鳥が温めていればヒナが孵りますよね。生まれたばかりのタマゴの中は,我々が普段食しているような,一見どろっとした卵黄があるわけです。それが,温めているだけで,骨ができ,肉がつき,神経が走り,血が通い,羽毛やウロコが生え,秩序だった1つの個体ができあがります。繰り返しますが,親鳥は温めているだけですよ?例えば,公園の砂場の砂を温めていたら,勝手に砂のお城が建つなんてことはありえないんですよ。でも,一見どろどろで混沌としたタマゴの中には,外部から適切に熱エネルギーを与えられれば,そこに個体という秩序を作ることができる仕組みが備わっているんです。それが何なのかを学び,そして明らかにするのが,高校課程の生物における発生という単元と,それを入り口とする発生生物学です。高校生の皆さんは,発生の単元は覚えることが多いなぁ…という印象を持っているかもしれませんが,タマゴを思うと急に面白そうになってきませんかね,どうですかね。

我々が普段口にしている食べ物は,みんな生き物でした。ヒトは従属栄養生物であり,生きるための物質とエネルギーを,他の生き物を食らうことで賄わなければなりません。自分がいったい何を食べているのか―つまり,それは生き物であったときにどのような姿かたちで,どのように生きていたのか―を知ることは,私が農学出身だからというのを差し引いても,とても大事なことのように思うのですよ。

それでは,また次回。

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