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「今日の生き物」の下書き的ブレスト vol.1

大腸菌 ―動物細胞,植物細胞,原核細胞を学習したあとで―

 
ーーはじめにーー
・2021年度以降の授業の小ネタを整理するのが目的ですが,2021年度内に終わるとは思ってません。
・どのみち「分類」の単元でいろんな生き物を学習するなら,普段の授業の中で少しずつ,身の回りの生き物を取り上げておくのがいいんじゃないのという仮説のもとでやります。
・画像はいらすとやさんから拝借します。
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高校課程の生物では,これから「大腸菌」と呼ばれる生物が幾度となく登場します。細胞の単元だけでなく,続く代謝の単元や,遺伝子の発現調節の単元で,様々な生命現象のモデルとして扱われることでしょう。

細胞の単元で学習したとおり,大腸菌は原核細胞からなる原核生物です。我々ヒトではその名の通り大腸にいて,大きさは長さにして2〜4μm。ちょっと大きさのイメージが沸かないかもしれないので,比較対象を1つ。学校の理科の実験で,ろ紙で何かを濾した記憶はありませんか。一般的なろ紙の目のサイズが5〜6μmなので,ろ紙1枚だと大腸菌を通すくらい。ろ紙でこれなら,トイレットペーパーなんて簡単に通り抜けるでしょうから,ンコ拭いた後は手をちゃんと洗いましょうね。

 

大腸菌は,原核生物の「モデル生物」と言われます。極めてざっくり言えば,「大腸菌が○○なら,他の原核生物も○○なんじゃないか」といった風に考えることのできる,非常に研究しがいのある生物です(実際は,他の原核生物では■■だったりして,それはそれで誰かの飯の種になるのです)。

高校課程の生物の学習を始めたばかりの頃は,きっと指導者の人が生物の「多様性」と「共通性」という言葉をやたらと口にしていると思います。モデル生物は,生物には共通性があるという前提のもと,哺乳類ならマウス,被子植物ならシロイヌナズナ…といったように,様々な生物の分類群ごとの代表(モデル)として精力的に研究されている生物のことです。モデル生物で明らかになったことは,同じ分類群の他の生物でも同じことが言えるかもしれませんし,言えないかもしれません。動物実験をクリアした治療薬が,すぐにヒトに使えるようになるわけではないのと同じですね。

 

さて,高校課程の生物の序盤では,動物細胞,植物細胞,原核細胞を学習します。ここで学習した動物細胞や植物細胞も,模式図―つまりモデルです。高校課程の生物は,そうやってモデルをたくさん学んでいきます。モデルを学ぶことで,モデル通りでないものが見えてきます。例えば,皆さんがこの単元を学ぶ中で恐らく描いたであろう植物細胞の図には,動物細胞との違いとして,細胞膜を覆う細胞壁や,緑色をした葉緑体がありましたね。それ,根の細胞も同じですか?細胞壁はあると思いますけど,根は緑色をしていませんよね。モデルとして「植物細胞」を学べば,同じ植物体内でもモデルと異なる細胞があって,細胞の多様性があることが分かります。

ちょっと概念的な話になって申し訳ないんですが,地球上には海や森や砂漠といった生態系の多様性があり,それぞれの生態系には生物の多様性があり,それぞれの生物には細胞の多様性があり―そして,様々な生物には生物であれば満たしている共通性があり,様々な細胞には細胞であれば満たしている共通性があります。生物の多様性と共通性は,高校課程で学ぶ生物を貫く大事な大事なテーマです。共通性の話が多様性の話になったり,多様性の話が共通性の話になったりする―これからはそんな慌ただしさに,ちょっとした面白さを見出してもらえれば,とても嬉しいです。

 

それでは,また次回。

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