南アフリカの2都市を訪ねる(1) "世界最恐都市"ヨハネスブルグ (Johannesburg, 2015.8)
2015年夏、新しい仕事を始めてすぐの私に持ちかけられた南アフリカ出張。行き先は、当時プロジェクト上で密な付き合いのあった会社のオフィスがあるヨハネスブルグとケープタウン。
ヨハネスブルグは犯罪発生件数が多く"世界で最も治安の悪い都市"などと揶揄されている・・という印象であることもあり、正直なところなるべく訪問は避けたかったのだが、現地移動は全て現地のパートナーがケアしてくれているということになったので渡航することに決めた。
ヨハネスブルグでの自由な時間はなかったものの、ケープタウンでは3時間程度観光にあてられる時間があったので、同僚と3人でタクシーをチャーターしてテーブルマウンテンやペンギンパークを観に行ったのだった。
旅行時期:2015.8
同行者:無し(同僚との出張)
テーマ:安全に帰る
■Day1(Mon.) HND発→Changi(シンガポール)経由→(本記事)
■Day2(Tue.) O.R. Tambo International Airport着→Johannesburg(本記事)
■Day3(Wed.) Johannesburg→Cape Town(本記事)
□Day4(Thu.) Cape Town
□Day4(Fri) Cape Town発→Changi(シンガポール)経由→
□Day5(Sat.) Changi(シンガポール)発→HND着
この旅の動画はこちらからご覧ください。
ヨハネスブルグとはどのような都市か
ヨハネスブルグはアフリカを代表する世界都市の一つ。南アフリカの経済の中心地であるとともに、アフリカ最高の金融センターでもある。人口構成は、黒人が7割強、白人が1-2割、その他がカラードやアジア系だ。
一方、世界で最も治安の悪い犯罪都市の一つとされ、昼間であっても犯罪多発地区への立ち入りは非常に危険である。
このような状況をもたらしたのはアパルトヘイト(の遺産)だと言える。白人政権崩壊後の94年に同政策が廃止された後、アフリカ系を中心とした様々な人々が職を求めて都市部=ヨハネスブルグ中心部(中央駅近辺)に流れ込んだ。しかし彼らの多くは教育環境が良くなかったためまともな職につくことができず、結果として数多くの犯罪組織が作られて中心部の治安は急激に悪化。白人富裕層は近郊の地区(サントン)へオフィスと住居を移したため中心部は"高層ビルが立ち並ぶが人がいない"ゴーストタウンとなり、職のない黒人たちが不法入居者として住み着いて犯罪の温床と化した。今日に到るまで中心部(ダウンタウン)の治安は改善されず、ショーウィンドーには鉄格子や有刺鉄線が張られている。
鉄格子や有刺鉄線が見られるのは、治安が極端に悪い中心部に限ったことではない。アパルトヘイト統治期に白人居住区と黒人居住区に分断されていたことは多くの人が"史実"として知っていることだと思うが、現在でも白人居住区は真っ白な壁で囲われ有刺鉄線が張り巡らされている。
ヨハネスブルグで生まれ、現在もサントン地区に住んでいる白人女性に話を聞くと、スーパーや美容院含めて生活に必要なものは白人居住区内で済ませられるようになっているそうだ。
私が着任する直前、彼女の家に強盗が入ったという。家族が不在にしているタイミングだったことが救いだった。強盗による侵入が検知され、通知を受けた彼女が部屋に戻ると、警察が犯人の足を撃ったところだったそうだ。滞在中にこの時のことを恐る恐る聞いてみると、曰く"流石に家の中に入ってきたことはなかったからびっくりしたわ。でも犯人はきちんと捕まったからもう大丈夫よ"とのことだった・・・。
滞在中に彼女が漏らした、「ここ、南アフリカは安全な場所はあっても自由な場所はないの」という言葉が忘れられない。
出国〜ヨハネスブルグ到着まで
日本から南アフリカへの直行便は存在しない。シンガポールか香港で乗り継ぐ必要があり、どちらも20時間以上かかる。香港経由の場合ANA→南ア航空となり、シンガポール経由の場合はSQ→SQとなる。
南ア航空よりシンガポール航空がいいね・・という正直な気持ちで、シンガポール乗継を選択。
月曜日の夕方、羽田を出発。
7時間のフライトで、23時過ぎにチャンギ着。深夜1時30分にチャンギ発。先ほどの羽田→シンガポール間に加え、さらにエコノミークラスで11時間のフライトはかなり堪えるものがあった。本を読んだり映画も何本か見たりしたけれど、とにかく暇だった。
火曜日の朝6時30分頃にヨハネスブルグ国際空港着。
事前に手配しておいたタクシーでホテルへ向かう。すでにクタクタである。
8月下旬は南アフリカの冬にあたる。気温はそこまで低くはないものの、周りの景色が寒々しい。
タクシーが信号待ちをしていると、花売りをはじめとした売り子が近づいてくる。スルーするのだが、かなりの数の売り子が入れ替わり立ち替わりやってくるのでちょっと怖い。なお、別の機会に出張にいった人いわく、ト●タや●産などのマークを売っている売り子がいたとのこと。何に使うんだろう・・。
サントン地区に到着。ホテルにチェックイン。
シャワーを浴びて、送迎車に乗ってオフィスへ向かう。
ランチの様子。ケータリング手配してくれてありがとう。
南アフリカの肉を味わうディナー
夕方、会食が設定されていた。全くどこへいったか覚えていないのだが、"南アフリカらしい肉が食べられるところ"ということでレストランを選んでくれたそうだ。
このレストランの前には駐車できるスペースがあり、そのスペースには蛍光色のベストを着た警備員がいる。我々を乗せてくれていた車の運転手(ビジネス上のパートナーの一人)がそっとその警備員にお金を渡す。
後ほど、なぜ警備員にお金を渡したのか?ルールなのか?と無邪気に聞いてみたところ「彼らは自営で勝手にあそこに居て、勝手にお金を集めている。彼らにお金を渡しておくと、車上荒らしが来た時に追い払ってくれるんだ。渡しておかないと、高確率でガラスを割られて中のものが取られたりしちゃうからね!」とのこと。なるほど・・色々な職業があるのだな・・。
ビーフジャーキーよりもちょっと生っぽい肉。「ビルトン」というらしく、南アフリカでは非常にメジャーな食べ物なのだとか。牛肉のビルトンが多いそうだが、これは獣の味がする・・と思ったら、水牛のものだった。
ヨハネスブルグのグルメといったらステーキとワインだと聞く。肉は牛がメイン、羊も結構食べるとのことだが、通はジビエを好むという(現地の人いわく、ジビエ好きとそうでない人の割合は1:1)。ジビエ=ゲーム・ミートと呼んでおり、かつて狩猟の対象だったバッファロー、クドゥ、インパラなどの野生動物の肉が中心だ。クロコダイルもあるよと言われた・・。
クドゥやインパラがどのようなものかわからない、と伝えると、ネットで検索しながら「これこれ」と見せてくれる。インパラもクドゥも鹿みたいなヤツだった。どのお肉もなかなかに美味だった。
余談だが、南アフリカの人々の肉好きは筋金入りで、週末にはビーフ・ポークや野生動物の肉を炭火で焼いて食す"ブラーイ"と呼ばれるバーベキューをよく行うそうだ。「年越しはいつも家族でブラーイするんだよ」と教えてもらった(南アの12月は真夏)。
南アフリカ BIG 5(バッファロー、象、ライオン、ヒョウ、サイ)
南ア滞在中、会う人会う人からお土産をいただいた。南ア在住の白人は、日本人以上にお土産受け渡しをする傾向があるらしい(南ア人が日本に来るときにもしょっちゅうお土産をいただく)。さらに自分の愛読する雑誌を渡すなど「自身の大切なものをおすそ分けする」ということも好むようだ(これはヨーロッパの人々によく見られるやり方だと思う)。おかげで、バラマキ用のルイボスティーを購入する以外のお土産は全ていただきものでまかなえた。
彼らからもらうものにしばしばプリントされていた"BIG 5"という文字。これはビッグファイブといい、バッファロー、象、ライオン、ヒョウ、サイのことだ。狩猟するのに最も危険な動物と考えられていることからこの名前がついたという。興味深いのが、このBIG 5のうちヒョウ以外の4匹がお札の顔として採用されていることだ。
(ヒョウの存在よ・・・)
翌朝。インターコンチネンタルでの朝食。
朝早くに送迎車でオフィスへ向かう。渋滞回避のため、6時30分頃ホテルを出たと記憶している。
この日のランチ。オフィスのカフェテリアでサラダとキッシュを注文した。南アの食べ物はどれも美味しい。
ヨハネスブルグの交通渋滞はえげつないものらしい。この写真のような状態になるのは日常茶飯事だという。なので人々は朝5時に家を出て6時過ぎには会社に着き、16時過ぎには退社するそうだ。私たちの滞在中は16時過ぎに社を出てレストランに行って21時頃解散したのだが、彼らが何時間かけて家に帰ったのかは怖くて聞けなかった。なお、社を出るのが30分遅れたメンバーからは、渋滞に巻き込まれてしまい「あと2時間は渋滞から抜けられないから、ディナー欠席するね。ごめん!」という連絡が来た。
何故こんなにも渋滞が起きるのか不思議に思ってまわりの人に聞いてみると、皆んな口を揃えて「ヨハネスブルグ郊外からサントンなどのオフィスエリアに続く道は全て一本道だ。迂回も何もあったもんじゃないから、混んでもこの道を使うしかない。電車?!ダメだよ、絶対ダメ。公共交通機関では毎日盗難や殺人が起きている。ヨハネスブルグ中央駅近辺に近づいたり、電車を使うなんてことはゆめゆめ考えちゃダメだよ!!」と言う。ヨハネスブルグ(というか南アフリカ全土)では決して電車に乗ってはいけないというルールが頭に刻まれた。
2日目の夜は、ショッピングモール内のレストランへ。この時にも自営警備員にお金を払っていたかは見逃してしまった。
綺麗なのだが、空きテナントが目立つ。
オシャレなレストランでリゾットを食した。
隣のカフェでコーヒーを飲みながら色々な話をする。皆、南アフリカ出身というアイデンティティに誇りを感じると言っていたが、若者(一部の年長者も)の間ではヨーロッパに移住する流れが加速しているそうだ。
豚が描かれている。クオリティが高いのかそうでもないのかわからない。
ものすごく辛そうなトイレのピクトさん。
ヨハネスブルグからケープタウンへ
翌朝、ヨハネスブルグを発ってケープタウンへ。2時間強のフライトだ。
機内食はカレー。こんな丸い容器で出てくるのは初めて。収納するときに場所取りそうだな・・。
ケープタウンについたのは日没後。
この日のBGMはこちら。(ヨハネスブルグ滞在中、ずっと頭の中で流れていたから..)