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【モンゴル紀行】〜①実際に見たウランバートル〜

筆者:株式会社 Open Sesame 技術顧問 吉田史郎

業務で初めてウランバートルを訪問したのは、2015年10月のことである。筆者は同年9月より気候変動・環境関連のコンサルタント職に従事し、1か月後のことである。その後、20回以上同国を訪問し、各種プロジェクトに携わってきた。

本稿は訪問の度に、同国の文化に触れ、感化された内容を「扣の帳(ひかえのちょう)52号、2016年6月発行」に寄稿した文章を基に加筆修正したものである。

はじめに

このnoteを読まれているほとんどの方が抱くモンゴルのイメージは、広大な大草原の中でゲル(遊牧民の移動式住居、パオ(包)は中国語表現)に住むチンギス=ハンの子孫である勇敢な遊牧民だろうと思います。あとはモンゴル相撲でしょうか。私も初めて現地を訪れるまでは同様のイメージをもっていました。

然しながら、仕事柄出張する季節は冬季になることが多く、1-2月になる厳冬期はマイナス40℃になることもあり、15分ほど外を歩くだけで、睫毛が凍てしまいます。日本では曇る眼鏡が、シャーベット状に凍ってしまうこともしばしばです。

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↑ 凍てつくウランバートルの風景(2016年1月 筆者撮影)

↑ ウランバートル市郊外で地吹雪にあった

モンゴルという国

読者の中には、モンゴルはどのような国かを知らない方が居られることと思いますので、少し紹介します。

人口と面積

・モンゴルの人口は約300万人です。日本の人口が1億3千万人弱であることより、日本の人口を100とすると、モンゴルの人口は2.3となります。
・モンゴルの国土面積は、日本の約4倍です。
・人口と国土面積より人口密度を試算すると、モンゴルの人口密度は、日本の人口密度の172分の1となります。この数値は、東京都の人口密度6,168人/㎢と較べると、わずか36人/㎢に過ぎません。日本で人口密度が一番低い北海道でも68/㎢ですので、その半分ほどです。

モンゴルの人口密度を日本と比較すると、大草原での遊牧民を想起させるかもしれません。然しながら、モンゴル人は全土に分散して居住しているのではなく、首都ウランバートルに、総人口の約半分の140万人が一極集中しています。日本に例えると、人口の約半分弱の6千万人が東京23区に集中しているイメージでしょうか。詳細は後述しますが、一極集中による弊害が大きな社会問題となっています。

産業と経済

モンゴルは資源大国です。石炭のみならず金、銅やモリブデン等の豊富な資源を保有しています(産業別売上高の6割が鉱業)。そのため資源輸出による経済成長は、2011年時でGDP成長率が前年比17%近くありました。国民誰しもが資源による経済成長を信じてきましたが、資源バブルがはじけて適正化したのか、モンゴルの経済状況は浮き沈みが激しく、たびたびIMFの管理下におかれています。

モンゴルを訪問した当初は、市中銀行の借入金利は17-20%程度でした。訪問したいくつかの企業で、納品代金がマンションの部屋の権利で支払われた等の話を聞きました。不況下にあってもモンゴルで会った多くの人々(政治家官僚・企業幹部・大学の先生・運転手/通訳など)は意外にさばさばしている印象を受けました(慣れっこになっている)。日本で例えると、古い話ですがリーマンショックに見舞われる以上のインパクトだと思いますが、悲壮感が無いように思えました(少なくとも筆者にはそう感じました)。

ある官僚と話をしたことあります。その方の話を筆者なりに咀嚼して要約すると、農耕民族である日本人に対し、モンゴル人は遊牧民族です。チンギス=ハンの子孫である遊牧民として、国が破綻しても裸一貫で大草原に戻ればよいと遺伝子に刻まれているのではないかという推論です。

地政学

モンゴルの国境は中国とロシアに接しており、歴史的にも現実も両国の影響を強く受けています。過去モンゴルはソ連に支配された時期がありました。古い技術者はロシアで技術を学び、ロシア語を解する人が多くいます。発電所などのタービンなどもソ連時代のものが現役で活用されています。

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     ↑ (上)訪問した第4火力発電所(下)装置銘板にCCCPの文字

モンゴル語の文字は、キリル文字(ほぼロシア文字)が一般的に用いられています。モンゴルには伝統的なモンゴル文字(日本語の縦書の楷書体に近い)がありますが、年配の知識人は読める方が多いのですが、若者はほとんど読めません。学校で教養程度に習うとは聞いていますが。文化的な伝統遺産が失われていくことは残念なことです。

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    ↑ モンゴルで作った筆者名のモンゴル文字のスタンプ

物質面では中国の影響を受けており、中国より輸入した多くのモノが売られています。モンゴルの輸出入総額は中国が一番です(鉱物資源の輸出先の9割は中国向け)。また、モンゴル企業には中国資本が入っていることが多いようです。

to be continued...


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