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カスタマーサクセスの青本を要約する~原則④絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する

カスタマーサクセスを勉強しようと思ったときに、最も有名でおすすめされる本は「カスタマーサクセスの青本」だと思います。

しかし、このカスタマーサクセスの青本、翻訳のせいなのか少し内容がわかりにくいです。
実際のカスタマーサクセス業務を行っている方に向けて、本の内容を要約・解釈しわかりやすく表現する必要があります。
そこで、「カスタマーサクセス10の原則」の主要なものを取り上げ、カスタマーサクセスの現場で役に立つノウハウをお届けします。

▼カスタマーサクセス10の原則:解説記事をリンクでまとめております

絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する

カスタマーサクセスにおいて「ヘルススコア」の話は国内でもよく話がでます。このヘルススコアはなぜ話題にあがるのでしょうか?

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それは、チャーンレートの計測にかかるリードタイムの長さが要因です。
製品にもよりますが、SaaSのサービスは1~2年は継続して使い続けていただくことを前提に提供しています。そのため、解約するかどうかがわかるのも遅く、解約がわかるまで10数カ月かかってしまうことが想定されます。

ですが、カスタマーサクセス原則②でお伝えしたように、契約継続期間の長さはビジネス全体を左右するものです。

そのため、出来るだけ契約継続期間を長く保つために、継続契約(または解約)に相関する先行指標が求められます。先行指標があれば、10数ヶ月を待つことなく顧客に対してアクションと取ることができます。

ヘルススコアの発見

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ヘルススコアが高ければ解約率も低い、という状態を作ることができれば、解約を防ぐために先行して顧客に働きかけることができます。

書籍では、ヘルススコアを作るうえのデータの例があげられています。

■ヘルススコアで活用できるデータ例
①製品定着率
②カスタマーサポート
③調査結果
④マーケティングへの関与度
⑤コミュニティへの参加度
⑥マーケティングへの参加度
⑦契約金額の増減
⑧自立度
⑨支払履歴
⑩幹部との関係性

ヘルススコアの罠

Gainsightはヘルススコア計測ツールの会社ですので書籍には記載されておりませんが、私の考えとしては、ヘルススコアには決定的な罠があると思っています。それは、スコアとして計測出来ない第3因子(解約の原因となる第3の要因となるもの)を見逃すというものです。

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例えば、「ヘルススコアが良いから解約されない」ではなく、「担当者の職務経験がベテランでSaaS製品を使いこなせるからこそ、ヘルススコアがよく解約もされていない」が事実だとしたら。
この場合はヘルススコアではなくスタープレイヤーの有無が重要なポイントになるため、担当者が転職や部署異動をせず製品を利用し続けてもらうことが重要な指標となります。

こちらの動画がわかりやすいのですが、相関関係の発見はかんたんでも、第三の因子の存在や、実は因果関係になっていなかったといったデータのミスはあり得ることです。

顧客の事業成果を定量化する

こちらはカスタマーサクセス青本の話を否定する内容ですが、私が共感している顧客のスコアに関する話です。
hubspotの投資家 兼 経営メンバーのDavid Skok氏が語るカスタマーサクセスのヘルススコアについて語る内容です。

HubSpot社は、チャーンを予測するために CHIスコア(カスタマー ヘルス インデックス)を設定し測定するという考え方を導入した最初の企業でした。CHIスコアは、各カスタマーがプロダクトのどの部分を利用しているか測定し、よりクセになる機能を使っていればより高いスコアをつけました。

しかしHubSpotは、CHIは役に立つとはいえ、チャーンを完全に予測はできないことも直ぐ発見しました。プロダクトをたくさん使ったからといって必ずしも満足しているとは限らないのです。
まだ完全に証明されていませんが、私が自信を持っていることは、カスタマーの幸福度の測定は、プロダクト機能の利用状況を測定することではなく、事業成果を測定することだということです。たとえば、SEOモジュールを誰がどれくらい長い時間使ったかはあまり重要でなく、結果としてウェブサイトのトラフィックとリード案件が増えたかどうかを確認することの方がずっと重要なのです。

hubspotは創業メンバーの1人であるマークロベルジュ氏がCROとして携わっていたのですが、彼はMIT出身・統計学部あがりのエンジニア。そのためhubspotは2000年代後半からすでにデータに強い経営スタイルだったと聞いています。
ヘルススコアの限界に気づいており、プロダクトの利用ではなく事業成果が重要だ、と考えたのは日本のSaaS企業がまだ気づいていない観点です。いずれ日本においても同様の流れが来るのではないかと予想しています。

国内の先行事例として、Reproがヘルススコアの失敗談を記事にしています。

もちろん、ヘルススコアはカスタマーサクセス業務の舵取りの一つにはなりますが、いたずらにブームに乗らず、ベンダーのポジショントークではないかと勘ぐるくらいの姿勢も重要だと思います。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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