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おがさわら丸から見た、忘れられない海の青

海と言えば、やはり数年前行った小笠原旅行のことが忘れられない。そんなに「海」「島」という方ではなかったが、そのさらに前年、奄美大島に行って南の島はまた別かもしれない、と思うようになった。

それほど行こうと思っていたわけではなく、ある日、ネット上で父島の宿が出ていてなんとなく引きを感じて、とりあえず予約した。さらには直後、「島じまん」という東京都の離島イベントが行われていて、行ってみたところそこに小笠原海運さんがいた。小笠原への唯一の足とも言える「おがさわら丸」を運行している会社である。こうして、船や船便の情報も入ってきた。

7月下旬、おがさわら丸は竹芝桟橋を離れた。ゆっくりとレインボーブリッジをくぐっていく。見慣れた、住み慣れた東京であるが、海上から見るのははじめてで新鮮である。同じく行き慣れた三浦半島のあたりも、違う趣きを見せる。

そして外洋へ出ていく。黒潮らしきものをよぎり、あたりにはなにもない。小笠原は東京から約1000キロ離れている。一応、東京都の村でありその証拠に都知事選のポスターが貼ってあった。新造された3代目おがさわら丸では、片道24時間で結ぶ。1時間半くらい早くなったらしいが、やはり丸一日かかることには変わりない。

船には横揺れと縦揺れがある。通路を歩いているとヨロヨロしてしまうような横揺れに慣れないわけではないが、やはりなんとなく気持ち悪いといった船酔いも手伝って、半分眠たいような感じでベッドでうとうとしているか、あるいは本を読んでいるかになる。とはいえ11000トンのおがさわら丸は、もっと小ぶりな船よりは揺れないはずである。

大海原はひたすらつづき、そこにはなにも目標物はない。ではなにもないかと言うと、青、青、青! 群青色というのだろうか、深海の上を走っており、そこにはまさしく底知れない水がある。

水と言っても、かわいい水ではない。井戸水とか雨水、池や湖の水といった感じとも違う。海の水はねっとり、まったりとしていて、得体が知れない。その得体の知れなさが何層にも重ねると、あの青になるのだろうか。

島に着いてからいくつもアクティビティをしたが、その一つはホエールウォッチングだった。今度は20人のりくらいの小さな船で出て、まず湾内でイルカと遊ぶ。そののち大胆に島を背にして、外洋へとひた走る。マッコウクジラを探しにいくのだ。夏はマッコウのシーズンで、マッコウは深海の上にしかいない。よって、水深1000メートルくらいの海へと出て行く。

船長さん考案のソナーなるものを使って、果てしない海のなかにマッコウの鳴き声を探す。それらしきものを捉えると、今度はその方角へまっしぐらに向かう。その繰り返し。乗船客はやはり酔ってぐったりしていることが多く、こんな徒手空拳で見つかるのかという疑念がふと湧く。が、ついにいた! マッコウの親子であった。

小笠原ホエールウォッチング協会のルールにより、50メートル以内には近づかない。遠くから前方へ潮を噴き上げる親子をしばし見ていると、やがて尾びれを翻して深海へと潜っていった。束の間のショータイムの終わり。

そこでシュノーケリングをするというオプションもあったのだが、いくら浮くと分かっていてもやはり果てしない深海の上は怖いもののように思われる。ここで仮に置いていかれたら、まさしく助けてくれる人はいない。そんな空恐ろしさを感じつつも、海という別世界の魅力の洗礼を受けた旅であった。

#海での時間 #小笠原 #おがさわら丸 #ホエールウォッチング #マッコウクジラ

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