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『銀座・有賀写真館物語』パンフレットに載るはずだった言葉。

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銀座・有賀写真館物語の中止を公式HPにて発表しました。延期ではなく中止なのは、有賀写真館ビルは5月に取り壊されてしまうからです。素敵な公演が作れた思っていたので、場所を変えて必ず実現はさせます。パンフに掲載予定だった言葉を、よければ読んでください。

銀座・有賀写真館物語に起こしいただき、ありがとうございます。大正時代へのタイムトラベルはいかがでしたでしょうか?

有賀写真館ビルに出会ったのは、2019年の年末でした。「取り壊しが決まっているので、何かできないか」と声をかけられ、見に行ってみると、あまりに素敵な空間で心が踊りました。

大正時代に創業した写真館。部屋の中には、長い間大切に使われてきたであろう機材やアンティーク家具が、空気感そのままで残っていて、今にもシャッター音が聞こえてきそう。倉庫には大量のモノクロ写真やフィルムが保管されていて、写真1枚1枚に、誰かの大切な瞬間が残されていました。被写体の方の人生を妄想しているだけで1日が過ぎてしまいそうな幸せな空間でした。

ここで、一体どれだけの人生が動いたのだろうー

ふとそう思いました。写真館って、特別な時に、特別な人と、特別な装いで行くものだと思います。家族写真、創業写真、成人写真、結婚写真…この空間に刻まれてきた物語は膨大なもので、取り壊しの前に、多くの人に触れてもらいたいと考えました。

そこで思いついたのが「大正時代の有賀写真館にタイムトラベルして、人々の物語に巻き込まれながら、自分の写真撮影をされる」という企画。見学に行ったその日のうちに、大好きな銀座の喫茶店にかけこみ、企画書を書き上げました。

大正時代って、どことなく「今」に似ていると思うんです。古き良きを守りたい人と、新しい風を巻き起こしたい人が交差して、新しい事業が生まれたり、女性解放運動が起こったり、文学が育っていったり。2020年に生きる皆様が、大正時代の有賀写真館で出会った人々を通じて、何か現代に持ってかえられた感情があったら幸いです。

「どうしようもない現実があっても、諦めさえしなければ未来は変えられる」これは、大正時代に生きる人々を調べていた時に、感じたことです。本作の制作期間は、コロナウイルス の影響で多くのイベントが中止になり、無力感に苛まれた時期でした。このご挨拶を書いている今も、予定通り開催できるかわからない状態です。でも、大正時代の人々の生き様に励まされ、絶対に諦めずに、何かしらの形で最高のものを皆さんにお届けしたいと思っています。

この有賀写真館最後の瞬間に、あなたと一緒に物語を紡ぎ、あなたの笑顔が刻まれたことを嬉しく思います。

きださおり

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これは、数日前に書いたテキストです。『銀座・有賀写真館物語』は、取り壊しが決まっているビルで開催予定で、空間は広く、一度の参加人数が少ないものだったため、なんとか開催をする希望を持って、ギリギリまでチーム全員が良いものを作るために動いていました。制作はほぼ終了し、稽古がはじまるその日の緊急事態宣言。皆様に着ていただくために時間旅行社が準備したお着物やお洋服も、一旦お蔵入りになってしまいました。チケットを買ってくださった方ひとりひとりが、素敵な装いで大正時代にタイムトラベルし、楽しんでいただく姿を想像しながら制作をしていたので、今年のゴールデンウィークにその体験をしていただけなくなってしまったことを、とても申し訳なく思います。

公演は、場所を変えて必ず実現させます。大正時代の家具が残る素敵な場所探しをはじめています。ですので、どうか待っていてください。

ただし、有賀写真館ビルでの開催はもう叶いません。元々、このビルが本当に素敵だったことから思いついた企画だったので、そこはとても悔しいです。沢山の人に、この空間で物語を体験してほしかった、というのが本音です。けれど、こればっかりは仕方ない。場所というのは、いつまでもそこに在る訳ではないのです。

どうか皆さん、外の空気を思いっきり浴びれる日がきたら、好きな場所にどんどん足を運んでください。それまでに、好きな場所がなくなってしまう可能性もある時代です。なくなってしまってから後悔したんじゃ遅い。私自身もまた、好きな場所の継続のために出来ることは、ささやかながら行っていきたいと思います。

読んでいただき、ありがとうございました。必ずや新しい場所を見つけ、お待たせした分もっともっともーーーーっと面白い体験を作りますので、公式twitterをフォローして、続報をお待ちください!

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ありがとうございます。面白い体験を作ることに還元していきたいと思います。