セレブストーカーKの記録❶

『 信じるか信じないかはあなた次第 』


~春の始まり編~

最初にKの存在に気付いたのは、春の始めの頃だった。

最近近所に、あまり見慣れない体格の人がいるな~と思っていた。

良く言えば、スマートで都会的で、うちの地元の田舎にはあまりいないタイプ。

この頃のKは割と目立っていたかもしれない。

近所のバイトの人としてよく見かけるようになった。

だからといって、「あ、またあの人だ」と識別できたわけではない。

なんか似たような男の子が色んな所にいるな~という程度。

この状態が2,3か月続いていたかもしれない。

徐々にKが私に話しかけてくるようになった。

この時はまだ、Kだという認識はなく、ただバイトの子が話しかけてきてるんだと思っていた。

Kは仕事の話以外に、たまに変なことを聞いてきた。

「震災でできたひび割れってどれですか?」と聞かれた。

私は、建築系のセールスの人が探りを入れてきたのかと思って、適当に話して帰した。

他にも色々探りを入れてきたが、あまり詳しくは覚えていない。

そのうち一度、玄関に入ろうとしてきたことがあった。

別に玄関に入れるほどの用事はなかったので、「え?なんで?」と不思議がったら、すぐに諦めて帰っていった。

たぶんこの時Kは、正体を明かして告白しようとしていたのだろう。

はっきりとは覚えていないが、この時のKは顔をさらけ出していて、有名人に似ていたのだ。

この時にもっと色々話をして、告白させていればよかったと、のちにさんざん後悔することになる。

この頃の私は、Kの素性が全く分からなかったので、徐々に疑いを持ち始めていた。

なんだか不可解なことが続くし、まさか私なんかを狙っている男がいるのか?と。

私は無職でお金があまりなかったので、女性らしいオシャレは全くしていなかった。

すっぴんで美容室も行かず、服は着古してボロボロ。太って体形は崩れ、肌もボロボロ。行動範囲は実家周辺のみ。

さすがにこんな女にストーカーがつくなんて、考えられなかった。


そんな中、パンツ行方不明事件が起きた。

私の新しいデカパンだけ、見当たらなくなったのだ。

確かゴールデンウィークの間だった。

さすがにおばさんのデカパンなんて盗むやつはいないと思ったが、一応用心して、下着は2階や家の中に干すようにしていた。

もしかしたら、連休中を狙った泥棒がうちにも来たのかと思い、ネットでそういう事例がないか調べてみた。

連休中を狙う下着泥棒の話は出てこなかったが、衣服を盗むのが性的な目的だけではないことが分かった。

近年は外国人が増加しているので、利益がわずかでも、転売のために盗んでいくことがあるらしい。

真相は分からないが、とにかく服もタダではないので、盗まれないよう気を付けるようになった。

そんな様子を見た母が、

「まさかあんた下着だけ隠して干してるの?

あんたの下着なんか盗まれるわけないでしょ。」

と笑ってきた。

元々母親には不信感があったが、やはり悩みを相談することはできない人間だと感じた。

これがまた後の展開にも影響することになる。

このパンツ行方不明事件にKが関わっているかどうかは分からない。

ただ、この頃から私は神経質になり、あらゆることでKを疑うようになる。


この後も様々な出来事が起きるのだが、ほとんどは私の推察でしかなく、Kの真意はいつもハッキリしない。

Kは物的証拠を残さない。

例えば探偵ものの物語なんかは、探偵が自分の推理だけで真実っぽいことを特定していくが、犯人が「正解です。私がやりました。」と認めなければ、『事実』にはならないのだ。

つまり私の推察が正解だろうと間違いだろうと、物的証拠がなく、Kも自分の口からやったことを認めるに至ってないので、客観的に見れば、あくまで私の頭の中の出来事なのである。

誰も信じてくれなくて、おばさんの妄想と言われても仕方ないのが現状だ。

興味を持って読んでくれた人も、まだ『真相』はハッキリしてないということを理解しておいてほしい。


こうして今日まで続くセレブストーカーチキン男との闘いが始まった。

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