セレブストーカーKの記録❷

『 信じるか信じないかはあなた次第 』


~疑心暗鬼編~

この頃の私は、K以外にも不審に感じている者がいた。

一人は、ネットを見るたびにあらゆるサイトで同じようなコメントを残す奴。

コメントを残せるサイトだと、「五十路、童貞キラー、スキモノ」など、誰かと勘違いして悪口を書き込んでいるようだった。

どういう関わりの人物かは見当がつくが、私は五十路ではないので人違いである。

おそらくIPアドレスかなにかで大雑把に特定して、恨みのある人物と勘違いしたのだろう。

もう一人は、スーパーなどに行くと執拗に周りをうろついてくる奴。

この頃はまだKの人物像がはっきりしていなかったので、この3者がごちゃ混ぜになっていた。


ある日、いつものスーパーに行く途中で、雨が降っていないのに傘をさして笑っている人を見かけた。

当時の私は、この人物をスーパーで周りをうろついてくる人だと思っていた。

後に、これはKだったことが判明する。

スーパーで周りをうろついてくる人と、Kっぽい人を、スーパーや家の周りで度々見かけるようになった。

ネットストーカーの件やパンツ泥棒の件も重なって、真相が分からず怖くなった。

過去に私は、治安の悪いサイトにコメントを書き込んで遊んでいたことがあった。

匿名で書き込んでいるうちは何事もなかったが、女性だという事を公表したら、なんだか変に付きまとわれているような感じがした。

もう治安の悪いサイトには近づかないと心に決め、しばらくネットから離れた。

そしてプロバイダも変えたら、ネットストーカーの件は解決した。

こうして、ネットストーカーはリアルの私とは関りがないことが分かった。

スーパーで周りをうろついてくる奴は、行きつけの店を変えたらほとんど見かけなくなった。


Kは、一番目立たず、害がないように見えた。

積極的に話しかけてきた頃とは裏腹に、ただ周りでよく見かけるだけになった。

他の田舎民と比べるとスタイルは良いが、特別目立つとかオーラがある訳でもなかった。

なので地元の若い男の子かな?と思っていた。

もしくは田舎に研修に来た、都会のひ弱そうな男の子。

たぶん田舎にいたらスマートなイケメンと思われるだろう。

ただ、私はそういうことにあまり興味がなかったので、どれだけKが私の周りをうろついていても、スルーしていた。

たぶんKは、私が買い物している時に隣に来たりしていたのだ。

先に気付いたのは母親だった。

有名人に似てる的なことを言っていた。

私は興味がなかったから、ふ~んとか返事したと思う。

これはK的にはショックだったかもしれない。

Kは、隣までは来たものの、結局話しかけることはなかった。


その日以降、それまでのKはあまり見かけなくなった。

その代わりに、Kっぽい人や、田舎なのにやたらオシャレな女の人や、怪しい車なんかを見かけるようになった。

何かが起きて、今までみたいに近くにいることができなくなったのだ。

これは私の推察だが、悪い人に晒されてしまったのかもしれない。

今時は一般人でさえも、ネタにして晒されてしまうことがある。

私には調べて直視する勇気がないので、未だに真相を調べてさえいない。

後に分かることだが、Kはかなりモテるセレブなのだ。

私みたいな田舎のおばさんにちょっかいを出しているから、止めさせたい人たちがいるのかもしれない。

次にKらしき人物を見かけたときは、髪型も格好も変わっていた。

この頃の私は、Kが何をしたいのかよく分かっていなかったので、特に話しかけることもなかった。

こうしてKとの距離はちょっと遠くなり、話はさらにややこしくなっていく。


私の周りは、怪しい車や、田舎っぽくない人や、Kっぽい見た目の男性が増えた。

散歩中に車が追跡してきたり、買い物中にやたら近くをうろつく人たちがいた。

この時の人々が、Kにとっての敵だったのか、それともKの手先だったのかは分からない。

特に覚えているのは、子供が突然「こんにちは」と言ってきたことがあった。また、素顔を隠している見慣れない女性が、散歩中や買い物中に私の周りをうろついていた。わざとらしく前を横切ることもあった。

わざと人をけしかける理由として考えられるのは2つ。

私がどういう素行の人物か観察するため、もしくは不都合な写真を撮るためだ。例えば子持ちの主婦に見えるように写真を撮れば、Kの気持ちを私から遠ざけられる。

前者ならKが探偵みたいな人を使って私を調べているのだろうし、後者ならKに恋人を作らせたくない敵がいることになる。

結局どっちなのかは未だに分からないが、この頃の私は疑心暗鬼に陥っていた。

そして、Kがただのストーカーではないことに勘づいていた。


いずれにしてもK関連のことで、私が誰かから見られているのだと感じた。

少し自意識過剰になり、外に出るのが怖くなった。

しかし、大人しくしているのは少しの期間だけだった。

色々考えた結果、どうせ最初からデブス底辺おばさんなんだから、小さいプライドを守るために隠れる必要などないと気付いたのだ。

そうして結局私は、汚いすっぴんでダサい服のまま、買い物だろうと散歩だろうと好きなように出かけた。

ちなみにこの頃、一日一万歩歩くこととレコーディングダイエットをしていたので、10キロくらい痩せた。

今でも人目を気にせずガンガン出かけているが、この決断ができなかったら、ストーカーを怖がって隠れているだけの、引きこもりおばさんになっていたかもしれない。

こうして疑心暗鬼の第一段階は振り払い、Kとの関係はさらにこじれたまま続いていくことになった。

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