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蟻とトマトの知られざる秘密とは?

 こんにちは。
今日もお越しくださり、ありがとうございます。
幼児や小学生に読み聞かせ活動をしていた頃、すすんでプログラムに入れていたのが詩集と科学絵本です。
わたしが科学絵本好きなこともありますが、リアルの持つ力強さには、誰もチャチャを入れられない。

 むかし話を聞きなれていない高学年のクラスで、「むかし、むかし、あるところに…」って始めたら、残念そうな顔をして「むかし、むかしだってさ…」と呟いた男子生徒も、科学絵本は食い入るように見つめ聞き入っていた…ってことがありました。
単発のおはなし会や読み聞かせが不慣れな子どもたちには、まず、科学絵本でツカむってことを意識してプログラムを作っていました。


 さてさて、前置きが長くなりましたが。
本日ご紹介するのは、子どもはもちろん、大人が読んでも楽しい山口進さんの科学絵本を二冊ご紹介します。

 わたしは生き物全般、なんでも好きなんですが、子どもの頃は身近にいた蟻のあとをよく追いかけていました。
蟻が巣から出て、どこまでいって何をするのか見届けたかった。
でもなかなかその生態を把握するところまでは突き止められませんでした。

そこに確たる答えをくれたのが「クロクサアリのひみつ~行列するのはなぜ?」(山口進/写真・文 久保田政雄/監修 アリス館)です。

 いやー。おもしろかった。
今、読んでもおもしろい。

 クロクサアリは二列で歩いてる。
でもよく見ると、二列は行き交っているんです。
もっとよくみると…行く蟻のお腹はぺちゃんこで、帰ってくる蟻のお腹は膨らんでる。


 作者の山口さんは、蟻のあとを追いかけてみた。
すると巣から10メートルほど離れたコナラの葉にたくさんのアブラムシがいて(最初に読んだ時はアブラムシを蟻が食べるのか?と思ったんですが)。
蟻は二本の触覚を使って、「きたよー」って感じでアブラムシをトントンとたたく。


 するとアブラムシが、「はい、りょうかい!」という感じでお尻からプチっと液体を出す。
それを蟻がどんどん吸い込む。

 蟻はアブラムシから樹液のおこぼれを頂戴していたんです。
しかも蟻には胃袋が二つあり、「そのう」という胃袋にためられた樹液は巣にいる仲間用。
自分用の胃袋は別にあります。


 蟻のお腹の縞模様は、薄い膜で蛇腹になっていて、エサをためると膨らむようになっている。
その上、驚くのが…蟻の歩くスピードの速さです。
山口さんはストップウォッチを用いて行きの蟻と帰りの蟻の歩く速度を計測。
エサを運ぶまえのお腹空っぽ蟻は分速2メートル以上で歩いています(蟻の体長からすればものすごい速さ!)。

 だから「あんまりいそいで ごっつんこ アリさんとアリさんが ごっつんこ♪」(おつかいアリさん)という歌もうまれたんですねー。


 蟻といっても世界中には、なんと12000種類もの蟻がいて。日本だけでも260種類以上がいる。そして、それぞれが住み分けしている。蟻の種類によって巣のある場所が違うんです。
(日向を好む蟻、日陰やじめじめした場所を好む蟻…とか色々)

 子どもの頃の愛読書「ファーブル昆虫記」
ファーブルも蟻の行列を不思議に思って調べていたようですが、蟻が特殊なフェロモンを使って匂いを仲間に知らせていることまでは突き止められなかった。
現在でもまだまだ昆虫に関してわかっていないことが多くて…山口さんもページの最後でこれからの研究課題のことを語っています。

 あと…山口さんのご著書でわたしのおすすめは「トマトのひみつ」(福音館書店)。
トマトは自己防御作用を持った植物である。
それを知らずにトマトに巣をかけた若い蜘蛛を通して暴かれる知られざるトマトの秘密とは?

蟻とトマト。
これからの季節にぴったりな科学絵本。
ご家族でもぜひ!


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