息子とママの転換期

「ママ、ぬれてるよ」

幼稚園へ息子を送って行こうと玄関の扉を開けたら、息子から言葉をかけられた。

右肩にかけていた息子の幼稚園リュックをおろすと、ポタポタと水滴が落ちてくる。

途端に、右腰が冷たく感じる。洋服も濡れているようだ。

何かが溢れている？

バッグを目線まで引き上げて外側から眺めると、雨が降るように地面に向かって水滴が垂れている。

急いで、リュックのチャックを開けるとお弁当が水没してびしょ濡れ。お弁当袋を取り出すと、リュック下3cmに、水分が溜まっている。

とすると、原因はアレしかない。

それを取り出す。

息子は、幼稚園で水も麦茶も飲まない。

脱水を防ぐため、水筒の他にもう一本、プラスチック製のボトルにスポーツドリンクを入れて持たせている。

500mlのボトルを引き寄せると、パックリと割れていた。

大きく亀裂が入っている

こんなこと、ある？

よくよく思い出すと、玄関から出る直前に肩にかけようとしたリュックを落としてしまったのだ。それでも高さ30cmくらい。

だから、こんな大惨事になると思っていなかった。

玄関も、扉を隔てた玄関前もスポーツドリンクで水たまりになっている。

とはいえ、やっと息子を外に出せたばかり。
また家の中に入ったら、幼稚園に連れ出すのが困難になる。

リュックの中身を手早く取り出して、手に持っていて無事だった別の水筒や荷物を玄関の端に置く。

ママ、リュックをもってくるね！

と声をかけ、息子を残して中に入った。

3月まで娘が使っていたリュックを押し入れから取り出す。濡れたお弁当袋を変えて、新しい手拭きタオルを入れる。急いで、スポーツドリンクを別のプラスチックの容器に作り替える。

3分の1ほど開けていた玄関外に息子がいることを確認し、外に出ようとすると、息子が入ってきた。

マズイ！家の中に入ってしまう！

と思ったら、黒く汚れたびしょ濡れのタオルを玄関に投げ入れた。よく見ると、幼稚園用の手拭きタオルだ。

息子が大好きな絵本のキャラクターのタオル。

黄色のはずが、だいぶ黒ずんでいる。

玄関を開けると、水たまりになっていた場所がなくなっていた。代わりに、何かで拭き取られたように湿った色が残っている。

そこで気づく。

自分のタオルで拭き取ったんだ！

いつもの息子だったら、水たまりの上で飛び跳ねて靴をびしょ濡れにするのに。

濡れているから拭いてあげようと自主的に行動してくれたようだ。

感動して、呆然とする。

自分の限界値の出来事があると、人って頭がフリーズするんですね。頭が真っ白になりながらも、

◯◯くんがふいてくれたの？ありがとう！ママ、助かったよ！

と盛大に褒めて、頭を撫でる。

息子はキョトンとしていた。

またもや家の中に戻り、汚れたタオルは洗面台に張った水の中にひとまず浸けた。そして、幼稚園へ向かうため車に乗り込む。

幼稚園の正門前には、たまたま息子の担当の先生がいて、先ほどの経過をシェアした。

2人で感動しあって、先生が息子に盛大な褒め言葉をかけてくれた。

息子はハニかんで、満更でもなさそう。それだけで、今日は満たされた気分。

息子は元来、よく観察している優しい子だ。

ママが悲しい顔をすると、

ママ、ないちゃう？

と悲しそうな顔で聞く、変化に敏感な子。
その良さが発揮された。それが、ただただ嬉しい。

物は考えようだ。

一見、面倒な出来事のようでも宝物を得るときがある。マイナスなことの中に、必ずプラスなことがある。だから、私はよく観察して分析するようにしている。

そして、もう一面にも気づく。
このように物が大がかりに壊れるときは、変化の前触れなのだ。

私はこれまで、何度も突然、物や電化製品が壊れる事態に遭遇してきた。突然、バッグの肩ひもが取れるとか、MDプレイヤーが壊れるとか。サンダルのヒモが切れたこともある。

何かが壊れるときは転換期だったりする。もしくは、エネルギーがあり余ってるか。。

そういえば…と思い出す。
夕食後のお茶碗洗いでのこと。

1.5ℓが入るガラス製の入れ物を洗っていたとき、ガラスのコップにコツンと当たってしまった。

すると、ガラスに亀裂が入って割れてしまった。。。

朝に引き続いて、２回目だよ⁈

これは何やら前触れか？

もしかしたら息子の転換期と、私の転換期が交錯しているのかもしれない。

そんなことを思った1日だった。