お祭りのお団子頭。35年前のフラッシュバック
お祭りがあるからと、腰まで伸びている娘の髪を頭頂部に結びつける。垂れた髪を結んだ箇所に巻き付けていく。
娘はお団子頭をご所望だ。
巻きつけた髪の毛先をピンで止めると、かわいいお団子頭のできあがり。
そう言われて、結びつけようとしたらフラッシュバックした。
そういえば年長のとき、同じことをしてもらった。
七五三のために伸ばしていた髪をお団子にして、浴衣を着用した6歳の私。いつもよりお姉さんのようで、嬉しい気持ちを抱いていた。
まとめた髪には、おろしたてのスカーフが巻かれていた。憧れのお姉さんから贈られたばかりのもの。嬉しくて、何度も何度も触って感触を確かめた。
ツルツルした、ピンクとネイビーの大人っぽいスカーフ。幼稚園の私にはドキドキするようなものだった。
そのお姉さんは母の伯父の娘で、「Tねえさん」と呼んでいた。
夏休みの1週間は、母方の祖母宅に姉と私だけで泊まるのがわが家の恒例。その年も姉と2人で泊まりに行っていた。
その祖母宅に、高校生のTねえさんが下宿をしていたのだ。なので、滞在中はいろんなことを話した。
普段、両親と先生くらいしか大人と話す機会のない私にとって、高校生のお姉さんはすごく大人に見えた。
滞在の最終日、Tねえさんは愛用の原付に乗ってどこかに出かけて行った。帰ってくると手渡されたのが、そのスカーフであった。
おそらく、お祭りだと知って(私が話したのだろうかはナゾだけど)、買ってくれたのだ。
そのスカーフは、私が普段選ぶものとは比べ物にならないくらい大人びていて、とてもとても嬉しかったのを覚えている。
実家に戻り、幼稚園のお祭りの日に母にお願いして、身につけていったというわけ。
その日は、年長であるのも忘れて大人のような所作をしていた。それくらい感激したのだ。
ヨーヨーなどの戦利品を手に持ち、家族で家に帰る道すがら、ふと髪に手をあてると、行きに感じたツルツルがない。
母に確認すると、ないとの言葉が返ってくる。
私はパニックになり、暗い道中を幼稚園へ戻り始めた。記憶が不鮮明だが、確か周りを見渡しながら幼稚園まで戻った。
しかし、どこを探しても見つからなかった。
神隠しとはこのことだ。
スカーフは数時間の滞在を経て、どこかへ旅立ってしまった。
その後の記憶はないが、きっとひとしきり泣いただろう。
だって、私はオシャレが大好きな女の子だったから。けれど、家庭の事情でいつも姉のお下がりばかりだった。冬は母の手編みのセーターだったし。
本当はフリルがついたワンピースや、リボンがついたカワイイ服を着たかった。けれど、叶わなかったからこそ、そのスカーフは特別だった。
娘のピンクのシュシュを見たら、急にその情景や感情を思い出して自分が一番驚いた。
娘も35年後に、今日のことを思い出すのだろうか?それはあとのお楽しみ。
たくさん思い出せるよう、今このときを全力で楽しんでいこうと思う。
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