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これからの日本が抱えている真の問題とは 【エマソンの言葉】

社会でもっとも要求される美徳は付和雷同だ。社会は自己信頼を嫌う。
社会が愛するのは、真実や創造者ではなくて、名目や習慣なのだ。

(渡部昇一訳「エマソン 運命を味方にする人生論」致知出版社)

170年もの長きにわたり、世界の偉人たちに読み継がれたと言われる、19世紀の米国思想家エマソンの言葉です。
哲人ニーチェやオバマ元大統領も愛読し、「アメリカで成功した人で、エマソンに感化されなかった人は1人もいない」といわれるほど影響力がありました。
明治期の日本でも、北村透谷や内村鑑三などが深く影響を受けており、『文学界』のメンバーだった戸川秋骨による翻訳全集も、戦前には出版されていました。
渡部昇一さんも、「日本人の独立精神を鼓舞したエマソン」として高く評価しています。(渡部昇一訳「エマソン 運命を味方にする人生論」P.8)

社会というものは、意味も無く付和雷同する同調者をよろこび、少しでも異を唱える異端者を集中攻撃するものです。それは今に始まったものではなく、19世紀のアメリカやイギリスでも同じだったのでしょう。
19世紀のイギリスで『自由論』を著したジョン・スチュワート・ミルも、

習慣の専制は、あらゆるところで、人間の発展をつねに妨害していて、習慣的なもの以上のすぐれた何かをめざす志向に絶えず敵対している。

J・S・ミル著『自由論』関口正司訳(岩波文庫)

と述べています。
ミルは「多数者の専制」ということを常に問題にしていました。
「多数者の専制」とは、「少数者の弾圧」「個性の無視」ということを意味します。
「多数者の専制」の中で、特に手強いのは「習慣の専制」でしょう。
真実を追求する著者や文化の創造者の前に立ちはだかってくるのが、「習慣」という名の大きな壁だからです。
そのことが善い悪いという問題ではなく、「今までやってきたことだから変えたくない」「面倒くさいからやりたくない」ということが、世の中には沢山あります。
特に、利益が絡んでくると厄介です。人は、既得権益を手放したがらないからです。
地球環境問題などは、その最たるものと言えるかもしれません。
子供でもわかるような簡単な理屈で改善できることであっても、それを変えようとしないのは、既得権益にしがみつき、利益を得ている集団が、余りにも多いからに他なりません。
これこそが、エマソンやミルが言っている「社会が愛する『習慣』」なのです。

人は、歳をとるにつれて、今までやってきたことを変えたくないと思う傾向が強くなります。
特に日本人は、そうかもしれません。
長い年月にわたって、1日も変わること無く、同じ職場に、同じ電車やバスで通勤し、同じようにお昼を食べ、同じ人たちと談笑したり、酒を酌み交わしたりすることを幸せと感じる人が大半なのではないでしょうか。
このように、変化や改革を嫌うのが日本人の性質と言えるのかもしれません。

しかし、世界はそれを許してくれません。
平和にのんびりと過ごす日本人に対して、変化することを求めてきます。
鎌倉時代の元寇や、江戸末期の黒船来航がそうであったように、海の向こうから変化の波が、次々と押し寄せてくるのです。
そこでは、自分たちの習慣を大切にする「内向き」民族である日本人の「変わることを恐れる保守性」が、あらゆる進歩や発展の阻害要因となるでしょう。
それこそが、これからの日本の「本当の課題」であるということを、もっと自覚していく必要があるのかもしれません。

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