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お節介と突き放し

障害者ガイドヘルパーのヨモギさん。

スーパーのセルフレジで、
「ん~~~、私、わからないなぁ~~?どうする?」と
さじを投げる(ふり?)

「え~~?」ちょっと困ったような利用者で知的障害をお持ちのAさん
(ヘルパーさんがやってくれるんじゃないの?)


ガイドヘルパー「移動介護従事者」は、視覚障害の方、身体の障害をお持ちの方、知的に障害をお持ちの方の移動を支援するための補助者のこと。

通院、学校や作業所の通所・帰宅時の利用のほか、休日や授業後・仕事終わり帰宅までの余暇活動での利用もある。
ガイドヘルパーの仕事は、利用者さま1人 対 ヘルパー1人で着くことが多いので、お互いに合意が取れていれば、比較的自由気ままにお付き添いするということになる。(もちろん、保護者の方のご希望も考慮)

お金のやり取りや、公共交通機関の乗り降りの補助、安全確保や体調の管理まで、すべきことはそこそこあるが、日常生活で健常者が無意識に行っていることだから、一つ一つは難しい仕事ではない。
簡単に言うと保護者さまの依頼に応じて、もしくは、利用者様の必要度に応じて、安全に移動することを支援する、それがガイドヘルパーの役割である。

移動の安全を確認、確保ができない視覚障害者の目の代わりになるガイドヘルパーは、その利用者の命を預かる存在である。
また、視覚障害に加え、さらに安全確保しにくい肢体障害、聴覚障害、内部障害を併せ持つ人、及び理解力・判断力・管理力等に支援が必要な精神障害、知的障害、発達障害、認知症を併せ持つ人等については、ガイドヘルパーの技術的にも倫理面も含めた資質において高いスキルが求められる。

厚生労働省「同行援護に係る報酬・基準について≪論点等≫」

さて、冒頭のAさん。
ヘルパーヨモギさんにわからないと言われ、困惑する。

これは珍しいことではなく
小さい子が「教えて教えて」と尋ねてきたときに、「自分で考えてごらん」と突き放す大人がやっているのと同じことだ。

利用者さん本人は、ヘルパーが答えをくれなかったら自分で考えようとする。

しかし、ヘルパーの殆どは人がいいので答えを先に出してしまう。
その方が安全で簡単だから。

ヨモギさんは天邪鬼なので、あえて焦らすのを選ぶ。

自分で選ぶこと。自分でやってみること、を体験することを許す。
成功も失敗も、経験。と考える。

怪我をしないように安全に配慮するのは大前提だけれど、少々の怪我はいっそ仕方がないかと思うこともある。
経験しなくては分からないことがある。そして、経験をしたいか経験したくないかは、利用者さん個々人を見ていれば、動作や表情でちゃんとわかる。

行きたくないところは誘っても行かない。食べたくないものは食べない。
利用者さんの性格によるが、やりたいことばかりアレコレやるいたずら好きもいるし、保護者の方の言われたこと以外一切しない人も居る。

なんでも、やってみないとね


Aさんは、ヨモギさんが教えてくれないので、仕方なく(?)
周りを見ながら、かご置き場にレジかごを置いてみる。
分からなくてヨモギさんを見上げる。
「ここは、こやってバーコード向けるのよ」とヨモギさん。

現金を入れて、画面をタッチして、おつりが出る。
Aさんはおつりとレシートを取り、持参の財布にしまう。

「よくできたね!何回かやったら覚えるね!」

レジが混んでいるときにはできないけれど、空いているときを見計らってまたやってみよう、と思う。


移動支援にもいろいろな考え方がある。

● 安全に何事もなく時間を過ごして帰ってくれればいい
● できるだけ体力を発散してほしい
 (夜寝るため、又はイライラせず穏やかに過ごせるようになど)
● 楽しんでくれればそれでいい
● 移動支援に行く習慣を作ることで、心身のリズムを整えてほしい。
● できることを増やしてほしい
● できることは増やさないでほしい
● 移動支援で歩くことで運動の一助にしてほしい

できることが増えると、それに伴い、やりたいことにお金がかかってくる場合もあるが、ヨモギさんは、生きるということは、何らかの欲を叶えていくことだとも思うのだ。

許された枠内で、最大限の可能性が引き出せたら。
持ってる時間とお金の範囲内で、新しい経験ができたら。
自分で決めることを一つでも経験できたら
突き放してるようでも、これは私なりのお節介なんだろう、と

そんなことを考えながら、ヨモギさんは今日も大好きな移動支援をしにいくのだった。


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