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ヒーローはなぜマントを纏っているのか

入院の外泊明けカミさんとふたりで病院に戻る途中だったと思う。

カミさんがなぜヒーローはマントを纏っているのかとふとした疑問を私に問うた。

そんなのかっこいいから、と言ってしまえばそれまでだが私はこれについて以前考えていたことがあったので、その話をすることにした。

アンパンマンもスーパーマンも、昔の王様もマントは羽織っている。

でも、マントに空を飛ぶ能力や権威なんて昔はなかったはずだ。

では誰がマントを纏っていたか。それはたくさん移動する人だ。

時に寒さを凌ぎ、時に、先の尖った植物から身を守り、時に身を隠す道具となる。

剣を持っていれば、露骨に見せつけることもなく、逆に持っていなければ何か武器を持っているように見える便利な装備だ。

遠くに行くというのは強くなければできなかった。足腰もそうだし、襲われたら戦わなくてはいけない。その強い人たちがまとっていたものがマントだった。

遠くから馬に乗って駆けつける騎士なんて、昔の人は憧れたと思うのだ。

強い人たちがたくさん移動するのを見て、英雄はマントを纏うものというイメージができて、そして移動と強さが合わさった結果、空を飛ぶようになった。

カミさんには、マントを羽織るのは空を飛ぶからだよと私は答えた。

今もたくさんの人が空を飛んで遠いところへ行っている。

ビジネスマンや、企業の社長、外交官や、国家主席、大統領。
みんな空を飛ぶ。

カミさんも、私を連れて遠い病院まで行くし、毎週のように見舞いのために移動している。

私の目にはカミさんの肩にマントが見えた。


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