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44人目

【44人目】Kさん、20代 歳下(pairs)

目がなくなるほどの満面の笑顔。写真の印象から人柄が滲み出ている。
こういう人と一緒になれたら穏やかに過ごせるんじゃないか、そう思って私からいいねを押した。

メッセージの返事ひとつひとつに気遣いを感じるし、安心感というか、なんだかほっこりした気持ちになる人だった。

・・・ 

「◯◯さんですか」

待ち合わせ場所の駅改札前で、恐る恐る声をかけられた。緊張がひしひしと伝わってくる。

写真では満面の笑顔の写真のみだったということもあり、「こういう顔だったんだ」と、この時初めてしっかりと彼の顔を認識したのである。

・・・

「有料会員期間、本当は終わってたんです」

彼がチョイスしてくれた温かみのある創作料理のお店へと移動し、改めてお互いに挨拶を交わすと、彼が言った。

私がいいねを押したことで、1ヶ月間だけまた有料会員になってくれたのだと言う。

嬉しさ半面、ちょっとだけ申し訳ない気持ちになった。
そんな風に思うのは、男性と女性とでは一ついいねを送ることの重みが違うからなのだろう。

彼は想像通りの穏やかな雰囲気の人だったけれど、思っていたより繊細で、でもおっとりしたマイペースなタイプ。ちょっとだけ要領の悪さというか、危なっかしさを感じる部分も拭えなかった。

・・・

一軒目を出ると、ほんの少し疲労感があった。

正直帰りたい気持ちがあったけど、二軒目に行く流れとなってしまって断ることができない。

お腹もいっぱいだし最後に軽く一杯だけ、と思っていたのだが、彼のおすすめの串焼きがあるというので流れで串焼き屋へ入ることとなった。

串焼きは案の定あまり食べることができなかった。

悪い人ならすぐ断って帰るのだが、彼は悪い人じゃない。むしろ良い人柄なので、なかなか言い出すことができない…。

ところが二軒目の中盤になると、酔いは醒め話題も尽きた。一軒目の疲労も引きずり上の空になってしまった。

・・・

駅までの帰り道、映画でも見に行こうという話題が持ち上がったが、明らかに気持ちが乗っていない自分がいた。

彼には申し訳なかったけれど、二軒目でのあの盛り下がった空気をもう味わいたくないと思ってしまった。

改札前で連絡先を交換して別れた。

お互いにお礼を送り合い、彼からの「また連絡します」というメッセージを最後に連絡を絶った。

そこから1ヶ月ちょっと経った頃、様子伺いの連絡をもらったものの、すでに遠い昔のことのように彼のことを忘れていたので、2度会うことはなかった。

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