38人目
【38人目】Sさん、20代 歳下(タップル)
友人がタップルで恋人を作った。
これまで使っていたアプリよりも少しライトな出会いというイメージを持っていたのだが、人からの勧めには弱い。
早速登録してみると、若くてカッコイイ人が多い印象。反面、ギョッとするような写真の人も結構多かった気がする。
Sさんとはおでかけ機能というものを使い、お会いすることになった。
これからお出かけしませんか、と募集をかけると、それをチェックした男性からおさそいが届く。いいなと思う人とマッチして、アポにつなげるという機能である。
マッチして数時間後には会ってるなんて、トンデモ機能だなと思ったけれど、今までになかった出会い方だったし完全に好奇心が勝利した。
・・・
彼はすぐにお店を抑えてくれた。
雑居ビルの上階にある、少し高級感のあるお店だった。
メッセージのやりとりはしていないので、当然彼の事前情報などは何もない。顔だけでマッチしたようなものである。
どんな人なのか?本当に会えるのか?
不安を抱えながら待ち合わせ場所へ向かうと、ビルの下に彼らしき姿が。
無事合流し、本当に会えちゃうんだね。と感動を分かち合った。
・・・
正直もっとチャラついた感じの人が来ると思っていたので、意外とちゃんとしてる人だなぁという印象を持ったのだけど、話してみると少し見栄っ張りなところがある人だとわかった。
アッパー層への憧れがかなり強く、いいものを食べ、いいものを身につけ、いい遊びをしている。どのくらいの稼ぎなのかは知らないが、若かったしそういうものに憧れる年頃だったのかもしれない。
さらに、大手商社で働いていると言っていたが、本当はその子会社勤務だった。別に嘘つかなくても子会社だって十分なのに。彼の中で引っかかるものがあったのだろうか。
よく行く焼肉屋があるから次回行こう、とお誘いを貰い、この日の弾丸デートは終了した。
・・・
2回目のデート。仕事を終え、彼の行きつけの焼肉屋へ行くために高級飲食店が連なる街へと向かった。
高いお肉なだけあって、とても美味しかった。
彼は「俺の奢りだから」と、金額を見ずにどんどん注文する。
ちょっと申し訳なくなったので、二軒目は私が出すね、と約束して罪悪感を拭った。
こんな高いお店によく来るなんてスゴいな…と不思議に思ったのだけど、よくよく聞いてみると実は行きつけではなく上司に一度連れてきてもらっただけということが判明したのだった。
・・・
お礼に二軒目を約束していたので、焼肉屋を後にして、雑居ビルの中にある静かな佇まいの小さなバーへ移動した。ここも彼がチョイスしてくれたお店。
大人な雰囲気でうっとりする空間だったけど、メニュー表の金額をみて一気に現実に引き戻される。
その辺の居酒屋で飲むことが多い私には見慣れない、一杯数千円という高額なお酒たち。
彼はなんの気無しに赤ワインを注文していた。何度も見返してはお安いものを探したけれど、一つもなかった。
数杯嗜んだところでさすがに金額が気になり、時間も遅かったのでなんとかお開きモードへと促す。
二軒目は奢ると約束してしまった手前、後には引けない。彼の方が多く飲んでいるし、もしかしたら少し出してくれるかな、なんていやらしい期待をしたけれど、彼は素直に奢られてくれた。万札を数枚財布から取り出すと、なぜかとてつもない虚しさに襲われた。財布ももちろん寂しくなった。
・・・
彼はあまり裕福でない家庭に生まれたらしかった。そのため、上京していい仕事について、家族を安心させたいという思いがあったそう。
また、過去とても太っていたことがコンプレックスで、別人かと見間違えるくらいのダイエットに成功して容姿の自信も付けた。
上京して数年、自分の思い描く人生のワンステップを踏み始めている。お金持ちに憧れる気持ち、見栄を張りたくなってしまう気持ちも少し理解できる気がした。
でもこのような消費生活を続けたら、私のような凡人の収入ではついていけない…見栄を張ってまで身の丈に合わない支出をする必要性を感じなかった。
「次は早朝からゴルフをしよう」
早朝ゴルフは正直キツい。会うことが億劫になり、連絡を絶ってしまったのだった。
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