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競技かるた観戦記・第68期クイーン位挑戦者決定戦

ookomimiです。競技かるたの作戦について書いています。
名人戦の挑戦者決定戦の記事を書いたので、クイーン戦の挑戦者決定戦のことも書かないといけないような気がしてきました。やはり全日本かるた協会の公式youtubeチャンネルを視聴しながら別スクリーンでテキストを打ち込んで書いています。こちらも敬称は略して書いています。


1回戦

名人戦は比較的実績のある選手同士の対戦だがクイーン戦は若い選手の対戦。二人ともタイトルを争う大舞台の経験は多くないはずなので、同世代との対戦の方がベテラン選手とやるよりも互いにやりやすいだろう。

13分 試合開始。両者共にバランス型の選手の典型的な陣形。構えもオーソドックスで大きな得手不得手はなさそう。

16分 井上が「うら」でダブル。井上25-22石田か。

17分 ダブル直後の石田陣「わがい」は石田が守り、その直後の井上陣「つき」を石田が鋭く抜く。石田の動きが良く、このまま一方的な試合になってもおかしくない展開だがどうなるか。

25分 石田陣左下段の「しら」、右上段の「わすれ」と石田が守って連取で井上21-18石田か。動きや陣形からすると井上は敵陣右の払いを重視したオーソドックスなかるた。自陣左は縦に押さえ、自陣右は感じで手を出して守るイメージだろう。全体的に札際のスピードで取るかるたに見える。荒川元クイーンに似たタイプか。敵陣左の深い位置がやや甘くなりそうだがフォームの構造上仕方ないだろう。その意味では「わすれ」は取りたかった。
逆に石田は手の出しやすさを重視した左右均等に取るタイプのフォームだが敵陣深い位置には若干届きにくい形。敵陣右の深い位置は感じ遅れるとやや厳しいだろう(感じれば普通に取れるだろうが)。石田としては自陣左で稼ぎたいが左陣はあまり稼げそうな形ではない。もう少し左中下段に札があった方が井上は嫌だろうし枚数も稼ぎやすいと思うが。

30分 井上陣左下段の「ゆう」は少し揉めるが井上の取り。先述のフォームの都合上井上は自陣左では上中段より下段の方が取りやすいので自陣左下段は稼ぎたい場所。ここを今後石田が攻め取れるかは鍵になりそう。

37分 「みち」「なにわが」と井上陣右上段を石田が攻め取る。若干払い手が浅いのが気になる。終盤になったときに手が伸びなくなる可能性があるように感じる。

40分 石田陣「おも」を井上が抜いて井上17-14石田か。井上は枚数的には若干苦しいが手は良く敵陣に伸びている。石田の手が下段に伸びなくなれば逆転できるだろう。

44分 井上陣左中段外の「みよ」に石田は手が伸びず井上の取り。石田はここを取れないと終盤に追いつかれそうだが修正できるか。

46分 「やす」「いまこ」と石田陣右が読まれるが井上は抜けず井上15-11石田。反応はできているので札際を修正すれば抜けるようになるだろうが修正できるか。

48分 井上陣左下段「わび」を石田が抜いて井上15-9石田。ギリギリではあるが井上陣左下段は抜けている。このままこの位置の札を取れるなら押し切れるだろう。

51分 「うか」は井上が石田陣左を鋭く攻め取る。直前に自陣右を守っており動きが良い。こうなると石田としては札を取れそうな場所が減ってくるので苦しい。

53分 井上陣左下段「つく」を井上が守る。井上の方が明らかに手が伸びてきたので石田は苦しいところ。井上11-8石田だが当事者の主観的には互角か井上やや有利だろうか。

57分 石田が井上陣上段中央「よのなかよ」を抜いた後で自陣左下段「かく」を守る。井上も反応していたが石田の精度が上回った。これで井上11-石田6。
石田陣左下段がなくなったが札移動はせずそのまま中上段に札3枚を残す。井上のフォームからすると下段を作った方が有利だと思うが、石田としては左中上段を定位置で感じ取る自信があるということか。

58分 井上陣右上段「あらざ」を井上が守ったところで石田が自陣左の3枚を1段ずつ下げる。それなら「かく」の直後に下げた方が井上のガードが甘くなって良かったかもしれない。

59分 井上陣右下段「ふ」が読まれる。両者反応するが石田の手が若干伸びず井上が守る。

60分 井上陣右下段「ひとも」を今度は石田が抜いて井上9-5石田。井上は札がなくなった右下段に札を1枚下げる。

70分 石田のお手つきで井上8-6石田となった後で急に空札が増え、ゆっくりしたペースで井上6-5石田となる。

73分 石田陣左下段「あまの」を井上が鋭く抜いて5枚セーム。井上の方が全体的に動きはキレている。両者共に札を散らしているので払いのキレがある井上の方が有利に思える。石田はどこかで守りに入るか、それとも取る札を絞って読み合いに持ち込むかの二択か。

75分 井上陣右下段の「あけ」に石田は反応できず井上4-5石田。ここで石田は自陣右中段の札を下げて下段に2枚固める。守りにシフトした感がある。

76分 石田陣が3枚連続で読まれて石田が全て守り井上4-2石田。石田陣右はかなり堅い。井上にとってはここをあくまで攻めるかどうか判断が難しいところ。

77分 石田陣左を井上が抜いて井上3-2石田。ここで井上は自陣右を2枚下段に固めた。守り合いになりそう。

79分 井上が自陣右「あさじ」を守って2-2。石田は自陣左右を入れ替える。

79分 井上陣右の「なにわえ」を石田が突き取って井上2-1石田。井上は自陣右に2枚を固めたので守り合いに。

81分 井上陣が2枚連続で読まれて守った井上が1枚勝ち。

互いに身体が動いてスピードも乗ってくる試合だったが、感じの早さは石田、払いのキレは井上がやや有利という印象。序盤は感じが良い石田が、終盤は四隅の払いが安定している井上が優勢に試合を進めていた。最後は出札運になったが石田としては序中盤勝負で押し切りたかったのではないか。終盤勝負に持ち込まれると四隅の払いのキレの差が出て井上有利になってしまう。逆に井上としては多少リードされても終盤勝負にすれば何とかなるというところか。

2回戦

11分 試合開始。石田陣は1回戦と同じようなバランス重視の配置。井上陣の左上段がやや長いのが気になる。左上段は1-2枚に留めて中下段で稼ぎたい。石田はバランス型なので敵陣深い位置を重点的に攻めるのは苦手だと思う。

14分 井上が3連取して「あひ」を抜いたところで井上22-24石田。井上が自陣敵陣両方に手が伸びているのに対して石田は自陣中心になっているように感じる。

20分 井上陣「よのなかよ」で石田は自陣から反応してしまい井上に守られる。かなり自陣に意識が向いているようだが上手く修正できるか。バランス型の石田は反応できない場所を作ってしまうと厳しい。

22分 井上陣「おおこ」で石田が遅いお手つき。このペースだと井上が差を付けて勝ちそう。

24分 「おおけ」「む」と井上陣の出札が続くが石田の手が伸びず守られる。バランス型の選手が自陣を意識しすぎた場合に陥る典型的なパターンだが修正できるか。今日の井上のオフェンスを見ると、一度差を付けられてしまったら守って挽回するのは難しそう。

29分 井上陣「たま」で石田が良い抜きを見せて接戦に戻す。内容は井上の方が良いように見えるが石田も大きく崩れるところまでは至らず何とか耐えている。ここで井上のミスが出たりすれば試合は動く。石田としてはペースアップの余裕がないなら現在のバランスを維持してチャンスを待つのも一案か。

33分 井上が石田陣「あさぼらけあ」でお手つき。石田はここでペースを変えたい。井上がこのお手つきでペースを乱さないようだとここまでの試合内容からして逆転は相当厳しい。

34分 井上のお手つき直後の井上陣「かぜそ」は石田の反応が鈍く井上の取り。その直後の石田陣「はなさ」は石田が井上陣に反応している間に井上が攻める。これで恐らく井上13-17石田。石田は流れが悪い。

39分 井上陣右下段「つく」を石田が鋭く抜く。ここを狙える余裕があるなら石田はもう少し踏ん張れるか。

40分 石田が自陣左で「おおえ」を守ったところで井上は自陣左中段の札を1枚動かして右下段に。払いのキレで上回る井上としては四隅で勝負したいということだろう。

47分 石田が自陣左で「せ」「きみがためは」など堅い守りを見せて差を詰める。10枚セームか。ここで石田陣左下段がなくなったが石田はそのままの陣形を選択。井上のフォームの構造上左下段がある方が井上の攻めを緩和できそうだが、定位置での反応に自信があるのか。

51分 石田陣右下段「わたのはらや」は審判裁定で井上が取り井上6-10石田。ここまで井上は石田陣両下段までよく手が伸びているので大きなペースダウンはないだろう。石田としてはスピードを上げて自陣を守る体制に入るか、それとも何らかのチャンスを待つかの選択。

56分 「あらし」で井上がセミダブルを犯して井上7-6石田と逆転。石田にチャンスが来た。

58分 直後の「こひ」は井上が石田陣を抜いて6枚セーム。ここで井上は自陣右を中上段に各1枚のみ配置。石田のスタイルを考えると下段に札を下げた方が良いと思うが。

59分 そう思っていたら1枚空札が読まれた後に井上が自陣右の2枚をそれぞれ1段ずつ下げた。

61分 逆対角の分かれだった「わび」は井上が敵陣から戻って守る。石田は自陣に先に反応してしまう。この動きをするなら石田陣ではスピードで勝てないと割に合わないが。井上5-6石田。

63分 井上陣右の「よのなかは」も石田は敵陣への反応が鈍く井上が守る。札が四隅に散ると石田は払いの差で厳しい。

64分 井上陣「ほ」を石田が抜いて井上4-5石田。石田の自陣右は2枚中段に並べて下段は作らず。

66分 石田陣の「この」が読まれたところで石田がダブルのお手つき。井上陣左-石田陣右の縦分かれ。これで井上2-6石田。

67分 石田陣左下段の「きり」を井上が鋭く抜いてリーチ。直後に読まれた井上陣「あらざ」に石田は手が出ず井上が5枚差で勝利。

1回戦に比べて石田の手が井上陣に伸びない場面がやや目立ち井上が優勢に試合を進める場面が多かった。石田も要所で修正して崩れず付いていき終盤にはチャンスもあったが、やはり終盤では四隅の払い手のキレの差が出て最終的には井上に押し切られてしまった。1回戦同様に終盤に守り合いに入る選択肢もあったと思うが、1本取られた後に負けた試合と同じ作戦とするのは選びにくかったか。井上は終盤のお手つきで逆転される展開だったが、動揺せずペースを維持できたのが大きかった。1本先取した余裕のおかげか。

両者ともバランス良く全体を取るかるたではあるが、払いがキレて終盤に強い井上と、良く手が出て序中盤に強い石田とで取りかたは対照的だった。2試合とも終盤勝負で井上の勝ちになったわけだが、試合終盤で井上は「四隅勝負にして石田陣を深く攻めつつ石田が攻めきれない札を自陣下段中心に守る」という分かりやすい勝ちパターンがあったのに対して、石田は方針を決めきれなかったように見えた。普通に取り合うと終盤はやや相性が悪そうなので思い切った作戦(札を大きく動かす等)を用意しても良かったかもしれないが、初めての大舞台でそこまでのギャンブルは打てなかったか。


試合を見ての私の感想はこんなところです。名人戦もそうですが、画面上だけ見て札の配置も分からず書いていますので内容の正確性はかなり怪しいと思います(枚数差も間違っているところがありそうですが、これを一々確認すると非常に時間が掛かりそうなのでそのままアップしています。)。個人の感想として読んでいただければと思います。

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